承前:昭和の鉄道模型をつくる(33)木造平屋住宅
34:部品と工作(洋館付き和風住宅)
| | この家も郷愁を誘う家です。小学生のころ、医師の息子と知り合いだったのですが(高校の頃も3人ほどいました)、その家に招かれた時、洋風の応接室だったのをはっきり覚えております。電蓄という、電気式音楽再生装置に直径30センチほどの黒いレコード盤を置いて、友人がかけてくれました。何かの行進曲だったはずです。母上が、紅茶かココアを持ってきてくれました。昭和の30年代のことでした。
その頃の、医師というか、自宅開業じゃなかったので、研究者か病院つとめだったのでしょう。ともかく医学系のお父さんを持つ息子は、飛び抜けて豊かで上品でしたなぁ(笑)。
この模型を作るときは、全体はすぐに組み立てられたのですが、縁先の干し物竿が傾いたり、軒に立てかけたスダレが斜めになったりで、少し難しかったです。
34:鉄道模型の達人/岩橋利和
| 岩崎利和(48歳:写真は若い従兄弟の紀幸さん34歳)さんのレイアウトは、577x180センチの巨大さで、16畳の座敷一杯に広がります。ですから、しまうときは12分割されるとのこと。
気がついたのは直線が長いことでした。さらに真ん中の操車場は見えるポイントだけでも6つありますから、全体ではどれだけ分岐点があるのでしょうか。これだけ長い線路ですと、一ダースほどポイントを付けても違和感がないですね。
私は小さな、急坂急カーブのミニミニ・ジオラマを使って図書館列車を走らせるので、岩橋さんとは別世界ですが、ただカシオペアやブルートレイン、あるいは新幹線タイプの長編成・図書館列車を想像するときは、直線が5m以上もあるこの巨大なレイアウトがうらやましいです。そして紅葉の山峡シーンと、紀ノ川橋梁シーンの写真が添えてあったのですが、ものすごく情感が漂っておりました。
34:ジオラマ/レイアウトの制作(22)築堤(土手)を作る
| ところで(笑)。私がとぎれとぎれながらも、この昭和の鉄道シリーズを、連載でまとめているのは、実はこの「ジオラマ/レイアウトの制作」がとても気に入っているからです。なにかしら、表現し難いのですが、このシリーズの工作手順説明は出色のものがあります。工作の工夫も含めて、文体がすばらしいのです。乾いた無機的な文章でもないし、ねじれた文章でもないし、冗長でもないし、……。明晰でありながら、そこはかとない熱気があります。
で、今回気にいった工夫部分を列挙しておきます。
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(1)紙粘土を斜面に貼るときは、十円玉くらいにちぎり、水をつけながら2mm程度の厚さにのばし、歯ブラシでたたくと土の質感がでる。うーむ。すばらしいです。
(2)塗りですが、全体にマホガニー色のジェッソを塗る。しかも、3回以上重ね塗りする。これは、叩きモデラーがまねの出来ない丁寧さです。感心しました。
(3)「色パウダーまき」ですが、草を表現するのに、マホガニー色のジェッソを一塗りし、乾く前に茶色のパウダーを茶こしで振りかける。さらにグリーンのパウダーをまく。いままではひたすらボンド水溶液を霧吹きして、という手法しか知らなかった私には、塗料(ジェッソ)そのものを固定剤に使っている点に、感心しました。
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以上の事例は、模型の専門家には当たり前かもしれないのですが、私がわざわざ抽出したのは、その説明がえも言えぬ快感をもたらしたからなのです(笑)。実によいシリーズですね。
34:昭和の『鉄道模型』をつくる
| 今回はシリーズ「名車図鑑」から一畑電車(いちばた:島根県の出雲、宍道湖沿い)のデハニ50型について感想を述べます。惹句には「80年間走り続けた一畑電車の歴史を背負う古豪。その余生も残りわずか」とありました。写真にあったのは、昭和2~3年のものですから、たしかに古豪と言えます。しかし平成21年には引退予定。
その間、片側通路のお座敷列車(デハニ52)とか、全面畳式の荷物合造車(デハニ53)という風に改装し、最後の最後まで地域の人にサービスをし続けています。
写真をよく見ると、屋根などは老朽化がわかるのですが、ヘッドランプは一つの目玉に二球式というか、明るそうなハロゲンかキセノンランプが付いているように見えました(どうなんでしょう~)。室内の写真を見ても、小ぎれいなお座敷と分かります。
鉄道というのは、新造も楽しく大切ですが、徹底的な保守整備改装によって、本当に長生きする「鉄道文化」なのだと思いました。
34:未来の図書館、過去の図書館
今回は進行中の「島図書館」について語ってみます。
すでに小さなボードを二枚合わせて、60センチの土台は作り、そこにレール・ポイントを4つセットしました。しかし、そこまでは他のプロジェクト、邪馬台国周遊図書館ジオラマ、高台の図書館、山裾の図書館と並行した「島図書館」に過ぎなかったのです。
ある日、近所の模型店で商品を眺めていて、突然ひらめきがありました。それはTOMYTECの凸形電気機関車・貨物列車セットA(1512円)というモデルを見つけたからです。わざわざ価格まで掲載したのは、一般にNゲージ列車は普及していて安価と言われるのですが、それでも単体の動力車ですと5000円程度し、特殊な蒸気機関車ですと1万円はします。勿論、長編成の列車セットですと2万円前後になります。こういう価格が高いか安いかは人によって異なるわけです。
そして「島図書館」のトロッコ列車にぴったりの列車を想定すると、流通品ではなかなか見つからず、以前の絶版品ですと見つかりはしますが、高額です。それが、1512円という価格で入手できたのです。パンタグラフを取り去って、ローカルな気動車と思いなせば、「島図書館」の周辺を巡航するトロッコ列車のイメージが、これでぴったり定まったわけです。
なぜ写真のような精密なモデルが安価かというと、つまりこのままでは動かないことが一番の原因です。走らせるためにはモータや金属車輪が必要になります。車体長は12m級と分かっていたので、工具箱をさがしましたところ、以前に購入した動力台車や車輪がいくつかあったので、さっそく取り付けて動くことを確認しました。
偶然の結果ではありますが、日頃「島図書館に似合った動力車が必要だ」と思い続けていると、そういうトロッコ列車に似たものが目に入ってくるようです。
さて目当ての島図書館について、自分なりに復習予習をしておきます。
コンセプトは、生涯学習館として、島全域図書館システムです。ですから、トロッコ図書館列車は、見かけ上では独立して動きますが、図書館と図書館列車と、島のいろいろな設備とを合わせて、一つの「島図書館」とするわけです。
単純に息抜きのリゾート施設ではありません。
教育や研究に特化した図書館ないし情報センターでもありません。
似ているものとしては、施設が整って居住できる巨大な大学キャンパスがあります。しかし、大学キャンパスの目的は研究・教育にあります。多くの人たちが、研究・教育的な側面を生涯追い求めるわけでもないし、そこで楽しみを見つけるわけでもありません。
私は、多くの人が、もともと持っている高度な脳と情感を、十分に癒しかつ鍛える施設を想定し、それを「島図書館」として定着したいわけです。つまり生涯にわたって、人間として楽しみながら学習し、学習しながら楽しめるような世界を求めているのです。
幼い頃から青年時代まで、教育を受けることは、どんな場合にも艱難辛苦の道があると思います。教育には鞭がつきものです。ただ、当然ですが、そういう努力をするのも一種の才能が必要であって、その才能が磨かれないまま挫折し、また未成熟なままに社会、すなわち「ビジネス」の世界に埋没せざるを得ぬのが、多くの現代人です。私はそういう事実と並行して、豊かな世界であればこそ、他の道も社会が用意しなければならないと考えたのです。それが、生涯にわたり楽しみながら学び、学びながら楽しむ世界です。
「島図書館」は、風光明媚な瀬戸内海の無人島を全部まとめて、一つの知育・理想郷としたいわけです。知育、体育、情育とありますが、図書館を中心とするこの世界では、知育を標榜するのが一番現実的だと考えました。他の側面は、また別の人たちが考えればよろしかろう、と思った次第です。
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