目次:高台の図書館(ジオラマ|レール・レイアウト)
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承前:高台の図書館:鉄道図書館(7)レールレイアウト仮設と試運転
先回(7)でレールを敷いて試験走行をためして、うまく行きましたから、その後でレールを発泡スチロール用のクリアボンドで固定しました。道床に添わせて両側にボンドをたらし込んでいくわけです。
今回はレールの最終調整をした後、残る隙間に紙粘土を埋め込み形を整え、砂をレールに敷いたり、色粉を地面にまいたりして、地面らしき物を整形してみました。工作の詳細は、各縮小写真をクリックしてください。
今回を第一期工事の最終としましたので、初回(1)を探してみると、2008年7月30日が始まりでした。こんな小さなジオラマ(30X60cm)でも一年かかってしまったわけです。最初の方の石膏荒削り・砂漠の遺跡のような風情が懐かしいです。
本来なら二、三週間で完成する規模ですが、不慣れなことと、他にも種々のジオラマを手がけてきたので、一年間もかかったのだと思います。
出来映えはと聞かれると、最初の最初に造った別のジオラマ(60X90cm:嵯峨野鉄道図書館)の方が良いと感じていますが、この「高台の図書館」は小さい中に前方後円墳などを織り込みましたので、第二期工事とか、他のジオラマに発想は継承されていく予感もして、これでよいと決心し、公開するにいたりました。
DE10(樽見鉄道TDE10黄色)とソドー島郵便車(機関車トーマス世界)
TOMIXのNゲージ車両
↓ (1)残った調整:地面の整形
大体の造形はすでに~「高台の図書館・鉄道図書館(7)」で終わっているわけです。それが2009年1月のことでしたから、最後の調整にはいるまで半年も怠けていたことになります。
ここでは工作の詳細は省きますが、建物の隙間などに紙粘土を詰めて整形しました。レールの周りにはボンドと砂を混ぜたものをスプーンで撒きました。さらに以前の色に追加して、ボンド液に色粉を混ぜて地面にまきました。
この方法はまことに粗っぽい手法で、以前私が開発したものです(笑)。しかし手間暇を惜しむと、それだけの結果しかもたらさず、悲惨とはもうしませんが、現実のレール風景とも地面風景ともまったく違った、独自な世界が残りました。独自さは良いのですが、ボンド水溶液は白濁していますので、作業中は結果が読めないのです。翌日乾いた姿をみて、愕然とします。総じて、まだら模様となっておりました。
しかし当面、この方法を使い込む予定です。こうなると、意地と言うのでしょうね。ですが、心の自由度は充分に残ります。
高台の図書館:纒向号とED79-100
TOMIXのNゲージ車両を改造(MuBlog記事)
↓ (2)このあたりで手を打った第一期工事
白濁したボンド水溶液は乾くと透明になって下地や色が浮かんできます。全体の雰囲気は以前から頭にあったイメージとは大いに異なります。大抵は、頭の中ではもっとすっきりした、綺麗な印象なのです。しかるに現実はこれこのとおり。ここで主観と客観のずれを味わうわけです。ただし、全体構造は、前方後円墳の形状以外は、実はイメージのままだったのです。私は、このような景色のよい、前方後円墳と周濠を見渡せる高台の図書館を造りたかったのです。モデルはその意図とおりとなりました。もちろん、まだら模様ですが。
節を曲げた設計変更は一点あります。
当初、このジオラマは全方位から観察できる作品に仕上げる予定だったのです。どこから見てもそれなりの情景が浮かんでくる物を目指しておりました。しかし、実際には正面と左右面だけで意図を達成し、裏面は諦めました。たとえば農家は、裏面に正面があったのです。プラットホームの向きは、周濠の真上に位置する予定だったのです。
立体物だからこそ、どこから見ても様になるものがあってよいと考えてきましたが、どうしても「裏」を使わないと、全体がおかしくなってしまったのです。逆に、この「裏」を使うことこそ、裏技の極意と達観した次第です。
高台の図書館に停車する愛宕号(二階建てトロッコ鉄道図書館列車の初号)
あたご1号:KATO製、あたご2号:TOMIX製(MuBlog記事)
↓ (3)高台の図書館と、様々な図書館列車
さて、以下はこれまでもお見せしてきた様々な情景を、再度あたらしい色遣いの中で御覧に入れます。以前の写真との違いは殆ど分からないと思いますが、着実に変化はあるのです。
写真の図書館列車は20m級の二両連結(牽引車と合わせると3両編成)ですが、この半径14cmを常用したミニジオラマでも、それらは比較的高速に安定して上り下りします。さすがに、試験走行でも縷々述べましたが、牽引車は制限が強いです。急坂ですから充分な登坂力を持ってしかも急カーブを曲がれる牽引車となると、機関車は限られてきます。
また、地面の色が砂漠風ですから、車両はできるだけ派手な原色が似合うとも思いました。巻頭にあげたTOMIXの樽見鉄道TDE10黄色と、きかんしゃトーマスの赤い郵便列車は、存在感があります。後者を図書館列車に改造すれば、ぴったりの車両編成となることでしょう。
↓ (4)第二期工事に向けての課題
*ジオラマ(レイアウト)細部
大階段だけでも、初期のイメージ、明日香・酒船石(北方)遺跡の大階段を再現したいです。それには、薄いグレーを塗ればなんとかなると思うのですが、これまで二度、三度と調整する度に初期の石膏仕立てがますます悪化して、苦い想い出があるのです。いつか、なんとかすることでしょう。
レールの敷き砂利も丁寧にすれば見栄えがよくなります。TOMIXレールの道床部分にも砂を均一にまいて仕上げた事例を知っていますから、手を入れる余地はあります。
自慢の前方後円墳は、これは「邪馬台国周遊図書館列車ジオラマ」で本格的な箸墓を造営しますから、それまでの小手調べということです。現状では、これを前方後円墳と看破するひとは、十人に二人ほどでしょう(笑)。
周濠の水模様は、始めて熱溶解性の樹脂を使って泡だった苦い経験から、次回に試みるときはもう少し上手にするつもりです。このジオラマでは現状維持とします。
高台の図書館そのものについては、記号としての図書館で、この建物(TOMIXのペンション)で行くつもりです。しかし電灯をセットしたり、柵を作る余地は残っています。柵がないと人が周濠にずりおちそうな雰囲気です。
樹木がまるでありません。友人達の感想では木々があった方がよいとのことでしたので、考えてみます。そういえば、酒船石の周りにも木々が茂っておりました。
*似合った図書館列車
以前の第7回ではさかんに「モンスター電気機関車EH500」を走らせていましたが、落ち着いて考えてみると、このジオラマにはもう少しお似合いの図書館列車を作る必要があります。
写真でも少し紹介しましたが、牽引車はDE10(樽見鉄道TDE10)タイプの大きさがよいと思っています。実車諸元を見ていると全長が14mで重量65トン、馬力は1250~1350馬力あるようです。これで、現実の京都市「嵯峨野トロッコ観光列車」は、5両を編成していましたから、充分な力もあります。この実車をリチウムイオン電池車に改造したものを想定しています。
図書館列車は機関車トーマスの郵便車が、大きさといい、雰囲気といい、ぴったりだと思いました。これを二両連結して書庫と閲覧室を設けるか、あるいは車掌車を付けて司書室にすれば、雰囲気的に溶け込むと考えています。
*生涯学習館としての「高台の図書館」
これは特に地域の人達、老若男女が収入や立場や年令にかかわらず、図書(館)の世界や景観をいつでも楽しめるように考えてみたものです。
景色の良い高台に図書館を置くのは良いことですが、アクセスに困ります。自動車がなくても、バスがなくても、安定したレールがあれば、いつでも図書館に通えます。しかも、列車の中でも読書ができます。そういう未来の生涯学習館・高台の図書館を目指しているのです。
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承前:高台の図書館:鉄道図書館(6)前方後円墳・周濠(池)に水を張る
先回で塗装の基本や周濠(古墳の池)が形を見せてきましたので、今回はレールを仮設して試運転を繰り返しました。
改造トビー(トーマスの仲間)とED790(TOMIX):試運転
Cタイプ小型ディーゼル・黄色(TOMIX)と大歩危トロッコ号(マイクロエース):試運転
このあたりの小型ディーゼル車やトロッコ列車になると、ほぼテストが完了したとなります。ところが事実は、Cタイプの黄色車は、一見2軸台車+1軸台車というカーブに強い台車に見えますが、実は可動台車ではなくて、3軸が一体になった長い構造なのです。ですから小さい割りにはカーブに弱くて、ED790に比べるとレールの曲がりや起伏に神経質です。
また牽引されている大歩危トロッコ号も、車両が軽いものですから、ときどきカーブで車輪が浮き上がります。そこを勘案した上で、スムーズに何周も無理なく走りきったことを考えると、今期の試運転は大成功と言えるわけです。
改造未公開「展望読書列車」(諸元:不明):EH500との相性試運転
試運転の最後は、最初にお見せした出力4000KWのモンスター電気機関車EH500、金太郎です。なぜ8軸16動輪の大型車が、20m級の改造・展望読書列車を牽引して、これだけの急カーブ急坂を行き来するのか、実は私自身が不思議なのです。もちろん、これまでの途中経過で、たびたびEH500は登場してきましたが、何度試運転してもその驚きは消えません。
いまのところ、EH500+展望読書列車は、半径14センチのカーブレールとY字ポイントを何ら問題なく高速で通過します。しかも牽引力が大きいですから、超微速でも「高台の図書館」駅へゆるゆると登坂し到着します。
☆
説明ぬきの展望読書列車ですが、整形や原色の不具合、塗り分けの不具合などによって、改造失敗車と内心思っています。これは20m級の食堂車の屋根をくり抜き、そこに別のBトレインショーティー車を接合したわけです。本来は人前に出す物ではないのですが、「失敗は成功の母」という言葉に励まされて、記録したわけです。10テーブル40人分の食堂部分を閲覧室(読書室)とみなし、調理室を司書室と考えて、あと幾度かの調整は試みますが、気恥ずかしい粘りと言いましょうか、お笑いなんでしょうか、遺憾です(笑)。
附録:EH500(TOMIX)金太郎への執心
この前方後円墳公園を見下ろす「高台の図書館ジオラマ」で、どのような列車を運行し、図書館利用者の利便性を高めるかはまだ決まっておりません。それなりに、フィットした二階建てトロッコ鉄道図書館列車を別途作ることで、基地図書館と鉄道図書館列車が一体化した、近未来の「図書館像」を形作ると考えています。
それにしても、ここには似合わないJR貨物のEH500(金太郎)が頻出します。その執心の度合いを確かめ発散するために、附録としてモンスターマシン:8軸16動輪EH500の様々な姿を公開しておきます。
次回は、レールを固定し砂利をまき、また図書館や民家(図書館長官舎か自宅)をそれなりに大地に溶け込まし、廃墟感を少なくするために若干の植樹をします。今回は照明を組み込むことで、完成とするつもりです。
ただし、最後にならないと決定図は出ないわけですが、今一つ、目玉の大階段が白っぽく飛んでいるので、ウェザリングというか、若干グレー色で調整をする必要があるかもしれません。
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今回の工作は、前方後円墳・周濠(池)に水を満たす作業です。水は、樹脂を使いました。私には、水作りが好ましい作業に思えました。ただし、波や飛沫を仕立て上げるほどには、工作力がありません。それは後日のこととしましょう。
樹脂を流し込む前の池(古墳周濠)
↑いわゆる使用前の写真です。濃緑、青、白の三色で池底に水の色を作り、乾かした状態です。ここで注意したことは、池面にすでにパウダーが飛び散っていますが、工程の前後関係として上部は先に済ませた方がよいということです。
この場合だと、前方後円墳を後回しにすると、せっかく池水表現がうまくいったとしても、古墳の色やパウダーが、ボンド水に混じって、どんどん下部の池に流れ込むことになります。パウダーが飛び散っているのは、パウダーだけを後で追加して振りかけたからです。これは写真を撮った後、すぐに拭き取っておきます。正確にいうと、ボンド水はかかっていないので、吹き飛ばしました。
古墳周濠の水
↑下記の小写真にある溶けた樹脂を流し込んだ直後の姿です。現在は固まって、泡立つ様子は大方消えたのですが、気泡がたくさん出ております。説明書には、流し込んだ後もドライヤーで熱風を吹かせれば気泡も消えると書いてありました。塗装にドライヤーはつきもののようですが、あいにく葛野屯所には用意がないので、そのままにしてあります。いずれ上塗りの気持ちで、ドライヤーをかけるつもりです。
それよりも、下地が発泡スチロールの場合は、高温になった樹脂が不適切だとも説明書にありました。このジオラマでは、下から、ベニヤ板、発泡スチロール基盤、その上に、プラスタークロス(KATO)の下張り、石膏固め、アクリル塗料で層が出来ているのですが、やはり高温樹脂を流し込んだときは、まるで温泉のように泡をふいておりました(笑)。気泡はそれが原因と分かりましたが、それはそれなりに、固まった現在では、ガスの吹き出る古沼のような、えも言えぬ味わいになっているので、満足しています。
当たり前ですが、発泡スチロールに直接流し込んだなら、穴があいて貫通し、完璧な失敗どころか危険です(葛野シンドロームですね)。下地に石膏なんかを塗りたくっているから、それなりの雰囲気になった次第です。
クリアボンドで整形
↑樹脂をすべて流し込んだ後、そこここで「水なし」箇所がでてきました。勿論、残りの樹脂を熱して溶かして追加すれば話は簡単なのですが、手元にあったクリアボンドで後始末をすることにしたのです。
岩の隙間などは、クリアボンドの先に細い注ぎ口を付けて、静かに丁寧に「水」を入れることができました。池の一部分では、裏側なのですが、まるっきり樹脂が行き渡らない所もあったので、そこはクリアボンドを大量に流し込みました。
樹脂とボンドとの境界が、今回はうまく行きませんでした。水面に段差ができたのです。次回試すときは、もう少し慎重に工作するつもりです。ただし、岩の隙間は正解でした。細かな部分は熱い樹脂を流し込むよりも、クリアボンドを丁寧に充填した方が、作業も楽ですし、仕上がりも良かったです。
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承前:高台の図書館:鉄道図書館(4)下塗り(アクリル・クリア)
「高台の図書館」は先回記事のようにツヤ消しのクリア塗料で下地を作っています。私の工作体験で、下塗りという丁寧な作業はジオラマ製作が始めてでした。鉄道図書館列車ジオラマを作りだしてからは、主にウェザリング(古風、古色)のために透明塗料を後で上塗りし、ツヤ消しをした経験もつきました。
机上には、あり合わせのアクリル塗料や刷毛やパレット代わりの容器、大量の水が並んでいます。最初は、地色を作るために、ココアブラウン、ライトグリーン、焦げ茶色の三色を用意しました。後で、大階段を白くするジェッソも用意しました。ジエッソは下塗り塗料なのですが、白がなかったので使うことにしたのです。
ジェッソで大騒ぎしたのは、2008年の3月頃だったので、それからさわりもしなかった容器の蓋が絶望的に引っ付いてなかなか開きませんでした。どうしたかというと、丸い容器を横にして、蓋の周りを金槌で何度もたたき、隙間にラジオペンチをねじ込んで、こじり開けました。工作って、時々こういう無理難題を解決するノウハウが必要になるものです。
なおこの写真にある殆どのものは100円ショップと、近所のホームセンターで入手したものです。ただし、ジェッソとチューブ入りのアクリル塗料は、工作不慣れなおりに画材屋(京都河原町と新京極の間のビル)で買いました。一般に塗料はホームセンターの方が安価に思えましたが、家屋用なので繊細さでは落ちるかもしれません。しかし、コンセプト重視の手早い「叩きモデラー」としては、色は、付けばよろしいわけです(笑)。
しかし、実際にやってみて、「おもしろい」という感想が残りました。わが「二階建て鉄道図書館列車」は売り物でもないし、美を競うジオラマでもないのです。理屈なのです。理屈を具現化するためにモデルを作っているのです。だから色を塗るとは地面を抽象的に表現するだけだと、自分に思いこませました。すると塗装している途中の感想は、まるで身体中に絵の具を塗りたくって、キャンバスの上を転げ回るような気分でした。我ながら、とてもシュールなジオラマができたと、喜びました。
となると、今回の「高台の図書館」も同じ気分でやればよいという、気楽さがあったのです。
今回はNHKの趣味悠々(Nゲージ模型)などを見ていて、アクリル塗料はべた塗りよりも、水で薄々にして、流すように塗れば良いと思いました。そして地面の色は明るいという言葉が耳朶に残っていて、ライトグリーン色も使いました。モデルの上部からチョコレート色や、ライトグリーン色を、刷毛で無造作に交互に塗っていきました。薄く流せと思いながらも、最初に塗った上部はなんとなくべた塗りになりました。しかし気にしないで進めました。
最後に薄暗い部屋では黒にしか見えない焦げ茶色を、本当に水で薄めて、点描する気分でそこここに流しぬりをしたわけです。
次に水の色ですが、これは本当は実に難しいことのようです。池の色などを見ていても太陽光で変化しますし、子どもの頃の「水は水色」とはまったく異なる色調です。ですから、いろいろな模型雑誌を眺めていて記憶に残った方法をとることにしました。まず、池の深い所は濃緑がよいと覚えていたので、チューブごと濃緑アクリルをたらたらと絞り出し、刷毛でごにょごにょと塗りました。次に、やはり水だから「水色というコード」の助けを得るために、色鮮やかな青色アクリル塗料を、濃緑との境をボカシながら流し込みました。最後に、ジエッソの白で全体の境界をボカシ塗りしたわけです。
と書くと高度なことをやっているように見えるかも知れませんが、実際は濃緑と青色はべた塗りで、水をたっぷり含んだ刷毛でジエッソを叩き塗りしただけです。そう、歯ブラシ刷毛を使いました。
色粉(パウダー)と言えば定着させるためにボンド水溶液を常用します。これは白濁液体ですが、乾燥後は透明になる便利な工法です。小写真は半年か1年前の古いボンドを、長期間屯所で逆さ置きしていたものです。屯所にきた学生達に、この逆さボンドの意味がわかったでしょうか(笑)。
半年以上経過した残り少ないボンドでも、逆さ置きしていたことで、すぐに水霧吹き容器に流すことが出来ました。いやはや、半年1年先まで見通す、ものすごく気の長い遠謀深慮の結果です。
模型屋で入手したパウダーには茶色や緑や黄色のものがあって、半乾きの塗装面に指で振りまきながら、息で吹き飛ばしていきました。それらしくするだけなので、秘伝のノウハウは知りません。半乾きの状態で振りまいたのが妥当かどうかも分かりません。その後に霧吹きでボンド水溶液を振りまきました。
総じて「叩きモデラー」らしく、手荒です。繊細さに欠ける方法ですから、真似はなさらないように。要は「それらしくパウダーをまいておけば、それらしくなる」の心です。
部材箱に小石袋があったので、これも所々にまいておきました。こういうトッピングが後で効果をあらわすこともあり、楽しい工作のひとときです。
さて、次回は周濠(前方後円墳まわりの池)に水を張る、つまり樹脂かセメダインかを流す作業が残っています。その後で、レールを貼り付けます。
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今回は、透明水性塗料での下塗りです。先回の「石膏塗りたくり」ジオラマを指で触ると、白い粉が指に付くわけです。たとえば倶楽部の屯所に置いたところ、ある日隊員達が掃除をしたとき、案の定「キエーッ」と声が高く響きました。倶楽部経理局長が抱えて、どかそうとしたらしく、服のベルトあたりに白い粉がふいていたのです(笑)。
叩きモデラーにも良心があって、これではならじとさっそく粉を押さえることにしました。材料はホームセンターで一缶800円程度のアクリル(水性)クリア艶消しスプレー缶にしました。専門雑誌を読むと、鉄道模型専用でないと、塗料のキメが荒いとのことでしたが、値段と量(420ml)を勘案し、一般用のモノを入手しました。私の場合、万事が手荒というか「形が分かればよい」の方針なので、どうしても安価なものに手がいきます。
(後日、少し大きめの「邪馬台国周遊図書館ジオラマ」の下塗りにも使おうと欲張った次第です)
クリア艶消し
塗り方は、スプレーをぶわーっと吹きかけるだけでした。30分ほどおいては、吹き付けて、結局三度塗ったことになります。乾いた後で、先回の石膏塗りの写真と見比べましたが、なんの変化もなかったです(笑)。ただし、粉は落ち着きました。
次は、色つきのアクリル系塗料で、色塗りをすることになります。これもスプレーを使えば手軽ですが、NHKのTV趣味悠々(Nゲージ鉄道模型)を見ていると、薄い塗料を流すように刷毛塗りすると、適当に混ざり合って現実感のある大地になるようです。ですから以前入手したチューブ入りのアクリル塗料を使うことにします。
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承前:高台の図書館:鉄道図書館(2)試験走行→DD51+ED790(Nゲージ)
夏の間、発泡スチロールを切り刻んで階段や前方後円墳らしき形を彫りだして、レールを敷いたまではよかったが、次の工程に進むでもなく毎朝毎夕列車の試運転を重ねてしまった。あわてないというよりも、モデルを思ったように動かすには、それなりの経験が必要だと痛切に味わった。
すでに記したが、列車の台車の回転一つで接続部(カプラー)が無理な姿勢になって連結が外れたり、カーブで脱線したりするわけだ。一種の複合要素による脱線なので、すんなり解決するものではなかった。
そしてようやく次の工程に入る機運が高まった。待機の長い、夏から初秋の季節だった。
この回は、発泡スチロールをプラスタークロス(石膏布)で補強し、石膏を塗ってそれらしい地形に成型する工程で、「石膏固め」と名付けてみた。
3.1 処理前の「高台の図書館」
最初の写真には、プラスタークロスや石膏粉の箱も撮しておいた。
石膏で固める前や下塗り前のジオラマは、単純に、コンセプトを表現することとレールを通すためだけの段階である。前者のコンセプトは、高い所から眼下の前方後円墳公園を見晴らすような「図書館」表現であり、後者はその勾配のきつい図書館に図書館列車が横付けできるようにすることである。
レールの配置はすでに試運転を十分繰り返したので、こういう極端な設計内容でもNゲージの図書館列車が走ることは、確認できている。
これらの写真は石膏固めの前にレールをすべて取り去ったもので、この後、石膏で固めたり塗装して地形が完成したときは、再びレールを敷設して、また試運転をすることになる。
一般にレイアウト(ジオラマ)製作事例の多くは、基本地形が定まると、最初にレールを固定敷設して、その後で地形の詳細成型や塗装を行う事例が多い。レールを釘やクリアボンドなどできっちりと設定することが第一に大切なことの表れだと思う。列車がなめらかに走るレールなくしては成り立たない世界だから、そういう過程がうまれたのだろう。しかし、私の場合は、地形や塗装がどんどん変化していくので、レール設置は最後の最後にし、その代わりに試運転をたびたび行っている。
3.2 石膏を塗った直後
これらの写真は、プラスタークロスをボード全面に貼り付けて、その後に石膏を塗った直後の写真である。工程としてプラスタークロスをハサミで切って水につけて貼り込んでいく様子が抜けている。これについては、「嵯峨野鉄道図書館ジオラマ」を製作したときに、下地造りの章で詳細に記したので参照願いたい。
ただ、工程を写真に撮らなかったわけは他にあった。カメラを持つ手がプラスタークロスを貼り込む時に石膏だらけになって、その場面や後の石膏塗りの場面を写すことが出来なくなったからである。手を洗って新たな手でシャッターを押せば良かったのだが、それをするのが面倒に思えた。
だから、こう考えた。
プラスタークロスの貼り込み手法はすでに別途記録した。
そして石膏塗りは一行で済む。
「石膏の粉と水を等分でよくかき混ぜ、筆で塗る」
使ったのはTOMIXのジオラマ用の石膏粉(8141 シーナリープラスター)なので、ホームセンターよりも割高になるが、一箱504円だったし、プラスタークロスよりは安価と言える。そして使い勝手が良かった。
材質表示には「焼石膏、炭酸カルシウム、耐熱セメント、速硬セメント」とあったので、不慣れな私には意味が掴めなかったが、事は単純で、水に溶かして塗りたくる、それだけのことだった。
しかし「速硬セメント」と表示があるのに、なかなか固まらなかったのは、水を入れすぎてべちゃべちゃ状態のまま、残すのがもったいなくて三度塗りしたからである。それでも、粉は1/3残った。
なぜプラスタークロスと石膏と二度手間にしたかの理由は、実験の意味と、プラスタークロスだけでは目地が目立ち、微妙な凸凹を表現しきれなかったからである。プラスタークロスは、新聞紙をまるめた上に山肌や地面を作るときに使うのが最良で、この「高台の図書館」で使ったのは、私のクセだと思った。以前、プラスタークロスを非常に気に入ったからである。発泡スチロール基盤に石膏を塗るだけで良かったのかも知れない。
しかし、物作りのクセとは、その方法が充実感をもたらすので、迷わずよしとした。多分、補強にはなったが、無意味な事なのだろう。
3.3 石膏固めの完了
というわけで、なかなか固まらなかったが、翌朝には水気もほとんど取れて、翌日の夜には完全に石化していた。叩くと金属音に近い音がして、心地好かった。
そのかわり、再びレールを仮置きして試運転をしてみると、走行音がキンキンしてイメージが狂った。別の雑誌記事では、レールの下にコルクを敷いて音を消す工夫もあったが、こんな小さなジオラマでそこまでしなくても良かろうと思った。
ただ。なにか工夫して音を柔らかにしたいとは、思った。
また、この石膏固めで得た経験から、慌てずにじっくり考えると、この後にジエッソやクリア塗料を塗って、石膏粉(擦るとまだ指に付く)を押さえ込む必要があると思った。以前は石化したプラスタークロスの上から、すぐに色を塗ったが、丁寧に仕上げるには、ここで「下塗り」が必要なんだと、確信した。
次回は仮置きレールを外して、下塗りと、色塗りに入る。
とは言っても、キンキン・カツンカツンとレールを鳴らしながら走る列車もなかなかおもしろく、しばらくは下塗りもしないでこのままになるだろう。
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承前:高台の図書館:鉄道図書館(1)基盤
参考:国鉄時代のレールバス:キハ02形レールバス(TOMIX)
Nゲージ小型・机上ジオラマ
小型ジオラマを机上で運用する利点は、持ち運びが可能なので、私のような教員にとっては一般教室に簡単に移動できることが第一にある。もともとベニヤ板と発泡スチロールが主体なので軽い。他には、スペースを気楽に使える。運転するのも、造るのも、かたづけるのも30X60センチ程度だと手軽に出来る。そして、制作費が安価になる。レールやポイントや塗料など、総合的にみると随分楽になる。
しかし、ミニカーブレール(TOMIX)で列車を走行させるのは難しいことが多い。平面ならもう少したやすくなるが、高台の図書館のコンセプトは、高台に図書館を置き、そこに図書館列車を横付けすることにある。だから、短距離にもかかわらず急坂を設けざるをえなくなり、そのためにレールの至る所で凸凹が発生する。
凸凹と言ってもレールの継ぎ目付近で一ミリ程度のことだが、これが実車だと1/150縮尺だから150ミリ、つまり15センチ程度の高低差が線路の継ぎ目で出来ることになり、不自然になる。
急坂急カーブ走行の条件
こういう技術的な問題をうまくこなさないと、言葉の上での「図書館列車」コンセプトは、モデルレベルでも走行しない。だから、何度も何度も走行テストを繰り返す。繰り返す中で一定の条件が明確になってきた。
1.レールの半径
レールの曲率は、動画のレベルではもう変えられない。このレールの場合、最小の半径10センチをさけて、その上の半径14センチを使っている。ミニカーブレールは、あと半径17センチのものもあるが、それは30X60センチの基盤におさまりきらなくなる。
なお、「邪馬台国周遊図書館ジオラマ」の走行テストでは、この半径17センチ(177ミリ)のミニカーブだと、お召し列車の動力車や、蒸気機関車、新幹線レベルの車両でも、ほぼ通過する。いずれも車輪が多く、車体長が長い、つまりミニカーブレールを走らないタイプ車両である。
2.レールの勾配
勾配を表すのには、実車とモデルではそれぞれ規格があるが、ここでは言及しない。
実際のモデル製作では、発泡スチロールに溝を付けたり、薄いスチロールで高低を調整している。目で見てなんとなく「これくらいは坂がないと」とか「こんな急坂にするのは不自然」と、すなわち経験的に決定している。
3.走行機関車(動力車)
走行する機関車の条件をまとめてみた。
3.1 カーブを回り切る必要がある
TOMIXのミニカーブレールには先述の、半径10、14、17センチがある。ここで走行させるには、車輪の数、つまり台車や車軸の多さに影響を受ける。車体長は20m級以下がよい。さらに、動力車の場合は車軸が多いと可動部分が狭くなり、半径におさまりきらなくなる。
非動力車の場合は、台車を一回転するくらいの修正が可能だが、動力部を含む車軸や台車周辺を調整するのは難しい。
また一般に、KATO製の動力車は特殊な急カーブには向かない。TOMIX製品も「ミニカーブレール対応」と書いてない動力車は相当に調整が必要となる。
3.2 登坂力が必要
平面なら問題はないが、私の設計するジオラマは、図書館の無いような秘境や田舎へ、移動図書館として「図書館列車」が走ることにあるから、急坂急カーブをスムーズに走る能力が必要である。
MODEMO製の箱根登山鉄道タイプだと、半径10センチのループ急坂をじっくり上り詰める能力があるが、他社の高速設計された動力車は難しい。
ただし、動画のTOMIX製、ED79-0タイプ(ないし、別のED79-100)は出色の力を見せる。これは発進停止も理想的な動きを見せる。
動力車の調整事例として、動画のDD51ディーゼル車を注視するとわかる。真ん中にある非動力台車を取り外している。遊輪なのだが、急坂急カーブでは、この台車がレールと不都合な接触を見せた。精密模型を志向する人から見ると乱暴な方法ではある。
3.3 静音
これはMODEMO製の急坂対応タイプや、上述のTOMIX製ED79系で考えたことだが、机上に乗る小型ジオラマの場合、静音は必要である。TOMIX製ED79タイプは、MODEMO製と遜色ない静音であった。
4.客車(非動力車)
非動力車の場合、小型・急坂急カーブジオラマでの走行は、動力車よりも簡便になる。15m級までなら問題なく走る場合が多い。ただし、台車がなく車軸が左右に回転しないもの、たとえばトーマス号のような2軸が多い車体固定車軸は、問題が生じる。
台車付きであっても、カプラーの形態によっては、台車回転に制限があって半径10センチのミニカーブレールは難しいことが多い。この場合は回転付近をカッターナイフで削ることで対応する。精密モデル志向の人には難しい決断となる。
さらに20m級の車体だと、半径10センチのカーブは無理と考えた方が良い。
備考1
動画では、最初に先頭車両として近江鉄道クハ1202(TOMYTEC製の鉄道コレクション第6弾内)が見えているが、途中で脱線し隠れてしまい、そのまま先頭にディーゼル車が現れた。先頭に車重の軽い車体を置き、後部から押すと、レールが複雑な場合脱線が多くなる。
力持ち、静音タイプの動力車を重連にしたのは、多様なケースでも走行するかどうかを確かめたかったことが第一にある。
しかし動画では、高台の図書館急坂へバックで入る場面で、動力車の難渋を感じる。これは非力さとか登坂力のなさではなく、実はポイント部分の接触が悪かったので、グリースをほんの少し注入したことが原因だった。つまり、ポイント周辺のレールが薄い油膜で覆われて、動輪がスリップし始めたわけである。さっそくクリーナーでレールを拭き、動輪、車輪を清掃したが、なかなか元に戻らない。初心者のミスと言える。
備考2
YouTubeを今後活用していきたい。実際に走行する雰囲気を静止画で表現するには特殊な写真技術がいると分かってきた。動画は少し簡便に表現できる。
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承前:小説木幡記:2008/09/06(土)高台の図書館そして職場人生(注:この承前記事は、写真だけ関係しています)
昔のレールバス
以前から木幡研では「高台の図書館駅」を作っていますが、一向にすすみません。原因はジオラマを全方位から眺めて、それぞれに趣があるように考えてきたのですが~無理、ですねぇ。目玉の「前方後円墳苑地公園」を見下ろす「高台の図書館駅結構」はうまくいきそうですが、それ以外が難しい。それと、どうしても読書の秋、工作よりもついちょっと小説やDVDに手が出てしまいます。と、泣き言は止めましょう。
さて、巻頭の写真、右側のちっこい車両に注目してください。私は勝手に「亀バス」と名付けました。調べてみると、旧国鉄時代の「キハ02形レールバス」と分かりました。入手した動機は、他の機関車や客車に比べて、ものすごく小さくて、田舎っぽくて、レトロに見えたからです。
私が考える図書館列車は、現代都会に用をなすよりも、図書館もないような山奥や、不便な所、総称して田舎(いなか)向けなのです。なぜそうなのかは、年齢や回想や、紙印刷物(プリンテッド・マター)やらが混じり合って、そういう結果が出たのだと思います。
しかし理屈は、今朝は止めておきましょう。
一目みて、この亀バスが実に田舎の情景にあうのじゃなかろうか、と思ったわけです。ディーゼルで、単線をとろとろ走る、駅とも言えないようなバス停みたいな無人駅で、止まる。もちろん利便性、足の便がもっとも大切だと思うのですが、館としての移動図書館を未来に想定するなら、このゆったり、まったり、少々ゆるいような雰囲気がものすごく合うのじゃないかと、心から思ったのです。
高台の図書館にはまだ、現代風が入っていますが、将来純田舎(例えば、広島や岡山の山奥用)風図書館を造るときは、主図書館列車にしてみたいです。
Nゲージ模型の使用感
諸元はTOMIXのケースに詳細がなかったので、調べてみました。
ものすごく簡単にいうと、これはバスが鉄路を走ったと考えてよいでしょう。1950年代まだ戦後すぐですね、当時の国鉄総裁がドイツでみかけ感動し、日本風のレールバスを実現するに至ったらしいです。
大きさが10mの長さで、高さは3mと、現在の二階建てバスよりも小さいです。エンジンや制御装置もすべてバスから転用したそうです。トラックに乗っている普通のディーゼルエンジンなんですね。
このNゲージ模型もそれなりの由緒があるようです。
TOMIXは何度か製品化したわけですが、最初のころは、この小ささにみんなが驚いたようです。左側にある現代の電気機関車金太郎と見比べて下さい。これくらい小さいと技術的に、滑らかな走行が難しいわけです。
私なりの感想では「よくまあ、こんなちっこい亀を、すいすい走らせたものよ」です。車輪が2軸というのは、集電(レールから電気をとる)とか、急坂にものすごい弱点が出るのです。左側の金太郎君は、モータは一個でも、8軸の車輪が全部動輪となっていて、8軸全部から集電できるので、途中でカックン、ギッコン、しないわけです。
亀君がなぜ、こんな制限のなかで、Mu流急坂急カーブを順調にすいすい走るかの謎は? ウェイトにあると想像しました。重りですね。でっかいのが車体に搭載されていて、レールをきっちり押さえ込んでいるのです。それと、連結部分の自由度が高くて、お互いの列車干渉が少ないから、滑らかに走るわけです。
付記
写真の金太郎(EH500)やミニ金太郎(ED79-100)用には、図書館列車として、現在KATOの食堂車(5065)「オシ17」を改造しています。これは平屋の屋根付き、ごく普通の昔の食堂車なのですが、40人が着席できるテーブルや、厨房室があって、図書館列車に転用するのが非常に楽なタイプです。そのうち、ご披露します()。
またものすごい力持ち機関車、金太郎やミニ金については、後日詳細をレポートします。ともかく、現代のNゲージ模型がどれほど精密果敢な走りをみせるか、それは実際に経験してみると目点になり、驚愕します。ただし、Mu流のレトロっぽい図書館ジオラマに、どうフィットさせるかは宿題ですね。(山奥田舎が電化されているのでしょうか)
写真:亀、金太郎、ミニ金太郎
参考
国鉄キハ01系気動車(ウィキペディア)
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新聞で「大きな試練から逃げないで」(たつみ都志=武庫川女子大学教授)という記事が目に入った。
(産経新聞:平成20年(2008年)9月5日・金曜日夕刊)
花形の総菜メーカーに就職して順風満帆と思われていた卒業生を励ました内容だった。
卒業生は就職後、九州店舗で成果をあげて、大阪の百貨店に栄転、すぐに本社企画部に抜擢され、同級生も、その筆者先生も驚きの目で見ていた青年だった。しかし会った時の落ち込みが激しく、【能力の限界を感じる。接客が好きだったのに企画。まだ3年目の平社員が年上の店長に通達しプレゼンテーションをする苦痛。上司に叱られるたびに自己嫌悪。一人暮らしの部屋で涙している】という内容だった。
たつみ先生(未知)は、大きな試練から逃げたら駄目。体の成長に応じて大きな殻を捜すヤドカリ的人生を選ぶなら、耐えるべき。上司の駄目出しをありがたく思い、成長の糧にするのがよいでしょう、と励ました。そして「何でも話せる友人をつくりなさい」と、握手して別れた。
さて。
たつみ先生は女性のようだ。私は男性だ。卒業生となると、双方ともこれは女性になる。
私はたつみ先生のエッセイを読んで、その内容が心にとまった。そして女性教員と男性教員では微妙に感じ方や話すことが異なることに気付いた。個々人の相違かな? とも思ったが、なんとなく男女の違いだろうと、「感じた」。
最近卒業生と話す機会があった。
数年前に彼女は人もうらやむ就職を得た。というのは、かねがね耳にしていた希望条件にぴったりした職場に、さる年の初夏に決まったのだ。後で内定話を聞いて、私は「うん、そうだろうと思っていた」と言った。つまり、希望する内容と彼女の資質や能力に調和が取れていて、自然に思えたのだ。
研究室に来てくれて、貢ぎ物じゃなかった土産物を手渡してくれた時も、近所で昼食を取り始めたときも、笑顔はあった。しかし「どうなんだ?」と、聞いたときから様子が変化してきた。もともと我慢強く聡明で、相当にセルフコントロール能力の高い学生だった。つまり、安定していた学生だった。
結局、顔をみてから一時間後に、彼女はぽつぽつ話し出した。
話す内容は、上述のたつみ先生のエッセイと実に似通っていた。おそらく彼女本人からすると「そんな栄転とか抜擢とは無縁ですぅ」と言うだろうが、外からはそう見えるし、事の本質は同じだった。
ところが。
私は結果として、たつみ先生とは別の励ましというか、感想を述べた。
「辛さがずっと続き、それを冷静に見つめて、本当に駄目だと思ったら、転職、辞職、故郷に帰る道を選ぶのも人生です」と、言い切った。
せっかく得た就職先を、数年前の教師が「帰郷もよし」と、言い切ったことは冒険かもしれない。私はそこまで他人の人生に関与できる立場ではない。しかし、私は言った。
実はその言葉の前には、口にはださなかったが「人生の、本当の事を言おうか」という内言が私の中にあった。よい大学を卒業し、教授になったり、大企業の幹部になったり、今もそうである知人友人は沢山いる。しかし、どんな道を選んでも、花はあり蜜もあり、そして落とし穴も猛獣もいる。人もうらやむ最良の環境を得ても心中は闇の人もおれば、世間的に一ランクも二ランクも環境が悪くても、極楽の人もいる。
実に人生は様々なのだ。
人生の本当の話は、決断にあり、その決断内容は世間的な一般常識とはずれがある。
本人が本当に冷静に長時間かけて考えた結果なら、自分で手にした物を棄てて、別の道を選ぶことも良い、というのが今の私の診断・決断なのだ。
もちろん、そんな本当の話は彼女がAランクに位置するほど聡明で安定した卒業生だったから、明言した。とりとめもなく「厭になったから」「飽きたから」「しんどい」レベルなら、そんな「本当の話」は言わない。「おお、つらいのでしょうね、でも明日はよくなるかも。またね」(笑)程度で済ませないと、身が持たない。
さて「余」自身のことを一言。
余も日々辛い。能力の限界は何十年か前に痛感していた。日々学生や目上の人や、同僚から駄目出しを喰らっている。余と同年代でも、こいつの方が能力が高いな、とか、迫力あるな、と思う人間は沢山いる。学生であっても、もし余が20代なら「こいつには、負けるなぁ~」と思う者達が沢山いたし、今もいる。
自信喪失して、葛野研や木幡研で涙ぐむことがある。
しかし「高台の図書館」設計、製作、運用を考えると、気持が静かになり、身内の底からふつふつと意欲がわいてくる。「まだまだ、辞めてなるものかぁ~」と、雄叫びしそうになる。こんな「前方後円墳と周濠」を眺められる景色のよい高台の図書館や、図書館列車をイメージできるのは、世界中に「余」しかおらん!
その自負が最近の余を支えておる。
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