カテゴリー「DCC」の17件の記事

2012年6月17日 (日)

鉄道模型のPC制御:(12) DCC自動運転・図書館パイクでのポイント制御と往復制御

承前:鉄道模型のPC制御:(11) 閉塞区間の構成:BDL168とRX4との配線について


↑レイアウト:配置

12-00 概要
 表題下の動画は、鉄道図書館列車が図書館駅を出発し2周回のあと、ポイント制御によって一旦車庫(ないし近隣博物館)に向かいそこで停車し、再び図書館駅に戻る様子を繰り返すモデルである。このレイアウトを「図書館パイク(30x60cm)」と名付けた。パイクとは極めて小型のジオラマ(レイアウト)の意味である。
 パイク上でのDCC自動運転は移動距離が小さいので、先回配線の紹介をしたBDL168などの列車位置検知装置を使わなくても、動力車を秒単位で前進停止後進させることで、図書館駅に停車させるなどの意図したモデル走行ができる。
 この記事は、JMRI/Jythonによる自動運転アルゴリズムの実験をまとめる意図があるので、ここでは列車位置検知を行わず、比較的単純な時間制御方式を紹介する。

12-01 図書館パイクの全体
 小型のNゲージ動力車を自由に扱えるように、デコーダ非搭載のDCC制御手法を取り入れた。具体的にはレール・レイアウト全体にデコーダから給電制御し、ポイントは選択式のままで、デコーダ番号は標準的な3番にした。この手法は以前に紹介した。ただし、この条件は、下記のプログラムとは無関係と言える。プログラムでは動力車の番号を3(付録の006行)と指定しているので、DCC給電方式(注記)などの物理的な条件は考えなくてもよい。
 
12-02 ポイント制御
Mudsc00020
↑DCCポイントマシン:DS52

 図書館パイクは30X60センチの小さな空間に引き込み線を設定し、建物もいくつか載せている。このために半径が小さいTOMIXのレールとポイントを使った。
 このポイントをDCC制御するためにKATOで販売しているデジトラックス社のDS52デコーダを使った。
 このDS52の取り扱いは単純明快で使い勝手がよい。2台のポイントを個別に制御できるので、それぞれの電動ポイントからのコードの被覆を剝がし、所定の箇所にネジ留めするだけでよい。ただし給電配線は、一般にDCCではレールの左右に接続すればレールが給電や制御の役割を果たすのだが、この図書館パイクに限っては、DCC制御を行う配線の根元に接続する必要がある。つまり、このパイクではレールの電流がデコーダ通過後の給電なので、アナログ運転と同じく直流になっているからである。

12-03 プログラムの概要
 付録に載せたクラス・ToutBackAndForthTimedは、付記したようにJMRIのサンプルを改編したものである。プログラム全体は順次手法だけの単純明快な流れでできている。しかし実際にはJMRI Library APIを使っているので、それぞれの機能を理解する必要がある。
 クラスの中心になるのは、初期化のための(付録の005行)init関数と、操作のための(008行)handle関数で出来ている。
 そのうちhandle関数がアルゴリズムの中心で、この関数は最後に[return 1]と常に真を返すので無限ループを形成している。(実行停止は、JMRIパネルのスロットモニターでKILLし、スロットルで給電をオフにする)

 def handleの流れを概括するならば、
 1.ポイントを初期化し(1番ポイントをTHROWN指示で分岐)。
 2.動力車3番の方向を前進
 3.速度を適度にし、数秒間走行(2周回)
 4.ポイント1番をCLOSED指示で直進
 5.車庫に入った頃、速度をゼロで停止
 6.動力車3番の方向を後進
 7.図書館前まで行ける数秒間の逆進
 8.停止
 9.繰り返す

 という、単純な順次制御アルゴリズムである。

12-04 JMRI特有メソッドの解説
 JythonはPythonのJAVA系実装システムと考え、私はPythonの教科書をもとにこのスクリプト言語についていろいろ確認している。付録に今回のプログラムを掲載したので順次それに随って解説し、固有のメソッドについてはJMRIのソースへリンクを付けておく。
 Jython/Pythonは一風変わったところもあるインタープリーターで、しばらく触った感触ではオブジェクトPascal、Delphi などと似通っている。その近似の事情はまだ正確には言えないが、扱い安いスクリプト言語だと思う。Modula3などと親しい言語なのかもしれない。
 特徴は、関数などを含め、段付(インデンテーション)がプログラムの構造自体を表すので、ブロックを形作るのは標準的に1段付を4半角スペースで表現する書式になれる必要がある。
 またselfという言葉が頻出する。これはある程度使い込まないとこの用法の意味や意義を理解できないので、私も現段階では、サンプル用法をそのまま使っている。
 以下にいくつかの解説を付す。

*プログラムの準備段階
  002 import jarray
    ↑import句によって、JythonでJava言語の配列機能(jarray)をつかうために取り入れている。
  003 import jmri
    ↑import句によって、JMRI制御に特有の機能をまとめて取り入れている。

*初期化関数 def init(self):
  005   def init(self):
  006    self.throttle = self.getThrottle(3, False) # 動力車番号=3
  007    return

 ↑005番のdef init(self):は、全体を初期化するための関数。returnで正常終了するので、一回だけ実行される。
 006行は明示的に、動力車番号(アドレス)を3番に設定している。これは以下のメソッドが使われている。
 getThrottle(int address, boolean longAddress)
 このメソッドは、引数に1~127番までのアドレス(動力車番号)を渡したならFalse、それ以上のロングアドレス(128~9999)ならTrueを返す。結果としてアドレスで指定された動力車のスロットルに下記(def handle)の命令が指示される。

*操作主体関数 def handle(self)
 次に012や015行の、provideTurnout(String name)
 このメッソドは引数に、あらかじめ利用者がその転轍機(ポイント)に与えた番号を文字列として渡す。番号が1番なら"1"となる。そのポイントの状態は.SetStateによって制御され、この引数は定数のTHROWN(分岐・カーブ)あるいはCLSED(直進・ストレート)がJMRIで決めてある。

 次に018行の、setIsForward(boolean)は、スロットルを扱うメッソッドの一つで、動力車の進行方向を定める。引数がTRUEならば順行で、FALSEなら逆行になる。

 おなじ種族である021行の、setSpeedSetting(float)は動力車の速度を指定するメソッドで、引数は通常0~1の小数をつかい、たとえば0で停止、0.5で半速、1で全速である。

 他に頻出する011行の、waitMsecは時間待ちメソッドで、1000が1秒となるので、1分間だとwaitMsec(60000)を指示する。付録のプログラム中で頻繁に使われているのは、CPUの論理が外界(列車を走らせる)制御に及んだときは、人間が頭で考えたように動かず、大抵は「間」を置かないと失敗するからである。ウェイトをかけるのは現実との調和を図ると考えて良い。これはCPUがナノセカンド以下の高速度で動いても、現実界のポイントの切り替えはよっこらしょっと秒単位になることを考えるとよくわかる。

12-05 まとめ
 JMRIはDCCのための貴重で大量の資源をもっている。Jython/Pythonというスクリプト言語に習熟し、そして鉄道模型制御専用のさまざまなメソッドを使いこんでいくと、真のDCC世界が広がってくる。本稿では、単純素朴な時間制御による往復運転とポイント開閉とを組み合わせてみた。本格的には在線検知や信号制御が必要になるが、その前段階として表題動画に示したモデルを作ることができた。Jythonによるポイント制御の事始めとしてここに掲載した。
 次は先回にまとめた複雑怪奇な在戦検知システムをJythonで動かしてみる。

注記:使用したDCCシステム
 この実験では、レールにデコーダを直結したり、また普段見かけるKATO(デジトラックス社)のDCS50Kを使わず、SNJPM DP1を使っている。この事情は別途パイク用の小型制御装置の運用を考えてのことである。しかし付録掲載したプログラムを動かすには、それは普通の手法(DCS50KとPC)で行っても結果に変わりはない。
 なおPCやOSは選ばないのだが、今回のものはWindows7上で実験した。

付録:自動・ポイント制御付往復運転
 オリジナルはJMRI:Scripting Examples より、BackAndForthTimed.py 

001 # 改編 谷口敏夫 2012/06/01~
002 import jarray
003 import jmri
004 class ToutBackAndForthTimed(jmri.jmrit.automat.AbstractAutomaton) :

005   def init(self):
006    self.throttle = self.getThrottle(3, False) # 動力車番号=3
007     return

008  def handle(self):
009    # 以下は「この」handle() が真の限り繰り返す。
010    Sokudo = 0.3
011    self.waitMsec(1000)  # 1秒待機
012    turnouts.provideTurnout("2").setState(THROWN) # T:反位・分岐
013     # ↑2番ポイントは常に進入不可とする。
014    self.waitMsec(1000)  # 1秒待機
015    turnouts.provideTurnout("1").setState(THROWN) # T:反位・分岐
016    #↑1番ポイントは、しばらく進入不可とする。
  
017  # 前進設定
018    self.throttle.setIsForward(True)
019    self.waitMsec(1000)
020    # 速度設定
021    self.throttle.setSpeedSetting(Sokudo)
022    self.waitMsec(5000) # 5秒 しばらく前進
023    turnouts.provideTurnout("1").setState(CLOSED) # C:定位・直進
024    # 1番ポイント進入可によって、車庫
025    self.waitMsec(4500) # 4.5秒
026    # 停止設定
027    self.throttle.setSpeedSetting(0)
028    self.waitMsec(1000) # 慣性走行
  
029  # 後進設定
030    self.throttle.setIsForward(False)
031    self.waitMsec(5000)
032    # 速度設定
033    self.throttle.setSpeedSetting(Sokudo)
034    self.waitMsec(4500) # 4.5秒 しばらく後進
035    # 停止設定
036    self.throttle.setSpeedSetting(0)
037    self.waitMsec(1000) # 慣性走行
  
038  # 周回終了 繰り返し
039    return 1  
040    # 完全終了はスレッドモニターでKILL。スロットルで電源をオフ
041 # クラス終了の行
042 ToutBackAndForthTimed().start()

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2012年5月27日 (日)

鉄道模型のPC制御:(11) 閉塞区間の構成:BDL168とRX4との配線について

承前:鉄道模型のPC制御:(10) 半径15センチのHOやDCC

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↑ロコネット・ケーブル配線

11-00 概要
 日本で流通しているDCC関係システムのうち、老舗のヨーロッパ系は別格として、アメリカのデジトラックス社のものが著名である。本シリーズも、おもにそれを対象にしてきた。もちろん、ディジタル制御に優れたシステムはメルクリン社のCS2(Central Station 2nd)など巨大で充実した世界がすでにある。そのことは稿を別にするとして、ここではデジトラックス社の良きにつけ悪しきにつけ中核となるシステムの構成部品として、BDL-168 &RX4についてその具体的な配線のメモを残しておく。この二つは、車両の線路上での位置情報をPCと送受信するための部品で、この装置によってPC自動制御が可能となる。
 しかしその複雑な配線は利用者に委ねられた部分が多く、私にとっても後日のためにメモが必要になる。

 BDL-168は、あらかじめ線路を分断し、数個~16個の閉塞区間(セクション)を作っておけば、個々の区間に電力を供給し、かつ制御信号を送り、また車両在区検知の信号を受け取る。
 そういう機能を持っている。
 RX4はRX1が4つ連動し、RX1は一つのゾーン(4セクションで構成)にいる車両の情報を受信するシステムであり、通常はRX4でA、B、C、Dと4つのゾーンを検知できる。すなわちどのゾーンにどの車両番号が居るのかがわかる。
 この車両在区検知と車両情報を得ることで、どの列車がどのゾーンにいて、そのセクションはどこかということがPCで確認できる。JMRIシステムでは、Jythonというスクリプト言語を用いて鉄道模型の自動運転つまりロボット化を達成しているが、そこにはデジトラックス社のBDL-168 & RX4を比較的容易に操作するサービスが含まれている。

 ここで「配線」と断ってそれを細かく記録する事情は、デジトラックス社が外見上では未完成と思えるような仕様にもかかわらず、優れた機能を持った部品を利用者に提供しているからである。BDL168もRX4も無骨で、日本では「商品」として通らないような形態と組み込みの難しさを持っている。しかるに、その機能は十分に果たされ、完成度が高い。それが、「良きにつけ、悪しきにつけ中核となるシステム」と記した理由である。要するに、配線という手技やそれへの習熟がないと、難しく時間がかかるのが、現在(2012年春)のデジトラックス社が提供する在線検知システムである。

 本稿では実際の配線を敷設し確かめることで、鉄道模型のPCによる自動運転の基礎を確認する。手技の巧拙は考慮していない。ただし、完全に稼働する。(また、JMRIなどでのPC制御は別項としてあらためる)

11-01 自動運転システムの全体
 ここでは全体の構成について述べる。各小写真を左クリックすれば拡大写真と詳細説明が提示される。
 自動運転システムの全体と記したが、そのハードウェアの要素には、

   PC (JMRIなどで列車制御する統合システム:無料。Win, Mac, Linuxで共通に稼動)、
   PR3 (PCとDCC装置の接続:デジトラックス社製品)、
   DCS50K (KATO社が日本風に改良したデジトラックス社のDCC装置)、
   BDL168&RX4 (在線感知、双方向通信:デジトラックス社製品)

の4つがあり、PCはUSBでPR3と接続している。PR3はロコネットケーブルでDCS50Kにつながり、DCS50KとBDL168ともロコネットケーブルで接続している。RX4はBDL168のAUX2ソケットに直結している。

 実際に線路に接続している部分は、在線感知からは独立したポイント部分へのDCCフィーダー線直結と、各閉塞区間にはBDL168からのセクション出力線の2系統に別れる。

BDL168 01 ロコネットケーブル配線
BDL168 02 PC自動制御装置と閉塞区間
BDL168 03 PC接続機器のPR3
BDL168 04 DCS50K(DCCのコントローラ)

 ↑写真はすべてロコネットケーブル(6極4芯・ストレートのモジューラーコード)の接続状態を説明するためのものである。
 右から二つ目がPR3で、本稿ではPCとDCCシステムとをUSB接続するために使っている。
 左からの2枚写真は、ともに中央にA4判透明ケースにPR3、BDL168 & RX4をまとめて仮設置している。すべてビニールテープで貼り付けただけだが、見栄えは別にして、それぞれが軽量なので問題はない。ただし後述するRX4の4つの相互位置は5センチ以上は離すなどの制限がある。混乱しがちだが、USBとロコネットケーブル(説明のために白と黒に区別した)の関係は以下にようになる。

 PC~(USBケーブル)~PR3~(ロコネット白)~DCS50K~(ロコネット黒)~BDL168&RX4

11-02 閉塞区間を作る
 鉄道模型を自動運転するには、列車に関するレール上での位置情報(および車両情報)を得なければならない。たとえば、博物館前で停車させようとするとき、どこが博物館前かを列車に自動指示するには、内部的には線路の「セクション5番が博物館」「セクション9番が図書館」「セクション1番が中央駅」というような取り決めが必要で、しかも目的の列車が今どこのセクションに進入したか、出て行ったか知る必要がある。

 デジトラックス社のBDL168はこのセクション(閉塞区間)を一個で最大16セクションまで作ることができる。よってその16本の「電力&信号線」をレールにつなげて、ひとつひとつを管理出来るようにする。各区間が独立した制御対象となるには、区間を電気的に独立したものとするために、レール両端を絶縁ジョイナーで接続する。本稿では、片側レール(外周線としておく)に絶縁ジョイナーを設置し、内側レールは全周で共通に扱っている。

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↑閉塞区間への電力供給と信号送受

 KATO社のユニトラック(レール)は一般的な電力供給ジョイナーも、黒の絶縁ジョイナーも大型で扱いやすく差し替えも容易なので自由度が高い。本稿ではその性質を重用し区間箇所や範囲をいつでも変更できるようにしている。また接続にはKATO社の様々なコード類を用い、随時セクション番号を変えられるようにしている。
 以下の各写真はクリックすると拡大写真と説明が出る。

BDL168 05 コード類
BDL168 13 閉塞区間への電力+信号
BDL168 14 センサーの配線(電力+信号)
BDL168 15 青白・配線の分岐

 ポイント区間は別扱い

BDL168 06 ポイント独立電源について
 ポイント部分は一般に在線管理が難しく(検知が不確かな信号になる)、セクション対象とはしない方がよい。しかしセクションとすることで電力も供給しているのだから、セクションからはずす場合には別途独立した電源を必要とする。
 本稿ではKATOのDCS50Kを中心に構成しているので、この電力はDCS50Kの出力・青白フィーダー線で供給している。この青白線は、BDL168からのセクション線とは異なった、純粋にDCC電力・信号線である。写真で明確なように青線を全周共通レールに接続し、白線はポイント部分を独立させたギャップ区間につなげている。
 ポイントの数だけ必要となるので、フィーダー線は分岐ソケットを使って配電することになる。

注記
 DCCの制御対象となる電動ポイントは、KATO HOユニトラックポイントの、手動ポイントR490(右、左)にDCCポイントマシン(左右・29-098, 29-099)を付けている。取り付けは容易で、動作も安定している。
 このDCCポイントマシンは、通常DC用のポイントマシンに比べて、高価で店頭流通は希だが、扱いやすさに優れている。

11-03 BDL168・44ピンソケットへの配線
 先に触れたが本稿は「配線」に重きを置いている。本来ならば、自動運転の核はプログラミング諸言語を用いて一定のアルゴリズムを構築し、対象モデルの動きを「物語」として記述することにある。
 しかしそれを実現するには、周知のように閉塞区間を作り、その電力・信号線を物理的に整理整頓する必要がある。BDL168の場合、その部分をすべて利用者のハンダ付けを含んだ配線に委ねている。そしてその配線は、一般に複雑と言って良い。

Muimg_7857
↑44ピンソケットへの配線

BDL168 07 44ピンソケットへの配線
BDL168 08 BDLの配線全体図
BDL168 09 44ピンの接続マニュアル

 ↑3枚の写真の左はKATOのアダプターコードの金具を用いて上下ピンを一括してハンダ付けしたもの。右端はBDL168マニュアルによってピンの上下関係が図示された部分である。上下のピンを通している様子がわかる。
 真ん中の写真はBDL168配線の全体図で、下方にはDCC電源と制御を兼ねたDCS100がある。本稿は代わりにDCS50Kを用いているが、ロコネットケーブルの配置は同じで、[Zone Common]のRAIL-Aが白線、[Detection Common]のRAIL-Bを青線に変えている。

11-04 RX4の設定
 デジトラックス社のRX4とはRX1が4つあると考えれば分かりやすい。
 そのRX1とは、デジトラックス固有の「トランスポンディング」とよばれる列車情報採取を行う部品である。一般にはBDL168の4セクションをひとまとめにして1ゾーンとしてあつかい、そのゾーンの上にある列車IDをRX1が返してくる。それをPCで使えば、列車の状態がよく分かる。BDL168が持つ在区間検知はどこかのセクションに列車が居るかどうかであり、トランスポンディング機能は、それがID何番の動力車かがわかる。
 そのRX1が4つあって、RX4で、合計でA、B、C、Dの4ゾーンまで識別できる。

BDL168 10 BDLとRXとの全体実写
BDL168 11 RX4のゾーン
BDL168 12 RX4の配線、その注意

 ↑写真の左端は、BDL168の回り四隅にRX1がそれぞれテープで固定されていることがわかる。RX1の表札を上向けにした位置での丸い穴を、感知線(と呼んでおく)がBDL168の特定ピンから出、穴の下から上に通り、その線は他のRX1感知線と一緒にまとめて(コモン)、DCS50Kのフィーダー線のうち、白線として扱われる。これはDCS100の場合はRAIL-Aへの接続になる。

 ↑真ん中の図はRX4のマニュアルの一部で、RX4からの8本コードをBDL168のAUX2に接続する説明の為である。写真や図の説明文ではAUX1に接続されているが、BDL168の場合にもAUX2接続が妥当である。(ロコネットの状態を見ると、AUX1接続の場合、E~ゾーンが表示される。BDL168を2つ接続して使ったときには妥当だが、一つの時にはAUX2がよかろう)

 ↑右端図は、RX4の4つのゾーンを注意深く敷設するための注意書である。まずRX1とRX1とは最低でも5センチ以上離しておく。これは相互干渉を避けるためである。次にゾーン毎の配線の色分けがある。
   Aは、茶+赤色
   Bは、オレンジ+黄色
   Cは、青+緑色
   Dは、灰+紫色

11-05 まとめ
 以上の配線によってBDL168 & RX4は動く。その様子や制御については別項とするが、JMRIでのテストは、LocoNet監視窓を開けることで、動力車が各セクションに進入し、退出することが画面でわかり、かつ動力車のIDが表示される。
 (動力車のIDを得るには、主にデジトラックスのデコーダーを用い、それがトランスポンディング機能を持ち、かつCV61の値を02にするという条件がある)

 配線で留意したのは、30W程度の小電力ハンダと、押さえの効くピンセットと、絶縁チューブ、絶縁テープを用意した。また、KATO社のコード類を多用し、ハンダ固定するにしても、接続ケーブルなどの多用によって後で自由にセクション番号を変えられるようにした。
 また44ピンへの上下接続はKATOの(24-843)アダプターコードを使って隣接ピンとのショートを避けた。
 私が参考にできた配線図や実写にはDCS100を用いたものが多く、DCS50Kでの青白フィーダーとRAIL-AやRAIL-B接続の理解に手間取った。現在はでは、DCS100でのRAIL-Aを白コード、RAIL-Bを青コードに設定することでテストは完了した。

参考サイト
 多数のサイトを参照し、深謝する。配線に関する主なものを掲載する。

 @ ホビーセンターカトー
 @ DCC普及協会
 @ CaldiaのDCC Room
 @ JMRI
 @ Digitrax, Inc.

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2011年12月18日 (日)

鉄道模型のPC制御:(10) 半径15センチのHOやDCC

承前:鉄道模型のPC制御:(09) 従来のアナログ車両を無改造で、DCC運転する

Mudsc00169
↑外線・半径15センチのエンドレスを走るHO・広島電鉄200形ハノーバー電車

10-00 概要
 先回はデコーダから直接線路に給電することで、どんな動力車(DCもDCCも)も無改造で運転できる環境を造った。DCC本来の特徴をいろいろ削ぐ方法だが、簡便にPC制御のDCC実験をするには汎用性があって良いと思っている。

 しかしそのときはまだNゲージの小型車両を実験対象にして記事にした。PC制御から見ると、GもHOもNもZも、なんの変わりもないのだが、実際に手元近くに車両を置いてPCを操作して、車両の制御実験をするには、パイクとよばれる超小型のエンドレス線路があると便利になる。それはNゲージやZゲージだと造りやすいが、HOとなると途端に難しくなる。たとえばNゲージだと市販のレールセットで半径10センチ程度の超ミニカーブも造ることができる(TOMIX社のレール)。

 DCCの制御をするのになにかと便利なHOゲージ(線路の幅が16.5mm)のエンドレス・レールだと、国産市販のもので半径43センチ(KATO)、外国製で半径36センチ(ドイツのフライシュマン)が限界と思う。それ以下のパイク的な半径を持たせるには、フレキシブルレールで加工するしかない。

 今回は、自由折り曲げレール(フレキシブルレール)を使って、極端に小さな半径(外線で半径15センチ)のエンドレス線路を実用化出来たので記録しておく。

10-01 PECO(ピーコ)のレール:メタルシルバー Code100
 ことさらレールを選択したわけではない。店頭(ボークス・ホビースクエア京都)に沢山立てかけてあったレール数本購入した。一本700円前後だった。

 そのレールを台所にあった手頃な大きさのボールに巻き付けて、両端を結束帯で完全に縛り付けた。最初の一つは一時間後くらいに結束を外したが、まだ復元力が強く撥ね飛んだ。二回目は翌日に外したが、ほぼ思った通りの円形を保った。この方法は、しばらく結束したままの方が、作業がたやすい。

 作業の要諦は、ハンダ付けにある。あらかじめニッパーで二線の両端を合わせて切断し、外線か内線のどちらか一方に集中して、レールジョイナーでエンドレスに接合し、その外側にハンダを流し込む。これをもう片方の線にも行う。要するに、レールジョイナーだけではレールの復元力、つまり曲がりを結合させておくのが無理なので、ハンダ付けで固定してしまうのが、パイク・エンドレスの要諦である。
 ついでに適当な箇所の裏側に給電用のワイヤーをそれぞれハンダ付けした。

10-02 運転とまとめ
 給電は、DCでもDCCでも変わりはない。ただしデコーダを載せたDCCタイプ車両をDC:直流で走らせるのは何ら問題はないが(そういうデコーダが主流となっている)、DCC給電にしたとき、デコーダ無しの旧来タイプ動力車をレールに乗せるのは避けている。一応それは可能だが、制限も強く、モータの唸り音が甲高く気持ちが悪い。

 半径15センチで走る1/80、1/87、1/45の縮尺車両は、縮尺にかかわらず2軸のものだと可能だった。写真でわかるように、いわゆるOn30の大型市電も、小型に見えるレールバスも同じように周回できる。

 運用については、これくらいの小径だと基板(板やスタイロフォーム)が無くても自由に取り扱える。もちろん、板にスパイクしてレールを固定化する必要はない。ジオラマとして整形する場合も、ボンドで固定できるほどに、融通性が高い。机上のPCやノートPCのそばに置いて、たとえば永末DP1のような小型DCC給電装置に接合し、JMRIなどで自由にDCC実験ができる。

 なお先回造ったKATOのEM13 デコーダ・レール直結によるDCC運転も問題無くできた。これくらいの小さなエンドレスで、2軸の小型車両をせいぜい1~2両運転するには、1A程度対応の小型デコーダでも十分に使えると思った。勿論、他のDCC専用車両も実験可能である。

パイク15-01
パイク15-02
パイク15-03
パイク15-04
パイク15-05

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2011年11月27日 (日)

鉄道模型のPC制御:(09) 従来のアナログ車両を無改造で、DCC運転する

承前(先回):鉄道模型のPC制御:(08) JMRI→DP1cs(南福岡急行)→DP1(永末システム)→DF50(KATO)

09-00 概要
 DCCでは、デコーダを動力車に載せて、レールからの集電側と、モーター電極との間に置くことで、レールから来る信号を分析し、それに応じた直流をモータ(ないしライト、その他)に供給する。デコーダは恐竜の小脳のようなもので、狭い動力車に乗るくらいに小さく造ってある。機関車などの音を制御するために超小型のスピーカが搭載されているものもある。

 そういう単純な理屈が分かってくると、一台一台の動力車に各々高価なデコーダを搭載しなくても、レールそのものにデコードを一個設定すれば、そのレール上では、これまでのすべてのアナログ車両が走ることに気がつく。勿論スピーカーも設定し、それなりの高級デコーダを付ければ、音もでる。ただし、そういう方法は車両の一台一台を自由自在に操るDCCの最大メリットが喪われるわけだが、実際に、実験してみると方法も単純だし、従来のアナログ車両をDCCに統一していくための抜け道、バイパスとしてなかなか便利で面白いことに気がつく。

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↑DCCからの電気と信号とをレール直前のデコーダで変換し普通のアナログ電車を走らせる

09-01 デコーダ・EM13を選んで実験した
 EM13というのは、日本のKATO社がアメリカのデジトラックス社と提携して外注生産しているようだ。KATOのいわゆる「DCCフレンドリー車両」のNゲージに使われている。モーター制御機能だけなので廉価だが(実勢1500円程度)、位置表示機能もあり、私は高機能だと思っている。

 工作は、TOMIX社のNゲージ用レール・フィーダー線(小型ジオラマは半径10センチを有するTOMIXが有利)を途中で切断し、EM13 の二本足のうち、先端だけが真鍮面の側を「レール側」とする。長い真鍮面の足側をDCCブースターから供給される側として、上下にハンダが流れないように、丁寧に接続する。ショートしていない常態をテスターなどで調べ、完了なら絶縁テープを巻いて保護しておく。放熱出来なくなって壊れる可能性を避けるなら、保護テープを巻かずにそのまま適当な放熱穴あきケースなどに入れればよい。(つまりEM13 のケースに穴を空けてそこに押し込む:そこまでするのはいささか趣味の領域であろうか)

Muimg_7063
↑デコーダEM13の足の表裏に、DCCブースター側とレール供給側の配線をする(足の表裏)

09-02 運転とまとめ 
 以上のデコーダを、DCCブースターからの線に付け、レールに接続すれば完了。IDはレール全体のものとなり、私は標準の3番のままで使っている。

 実験写真は永末システムDP1を使っているが、これはデジトラックス社からのDCCブースターも当然使える。汎用性は高い。要するにEM13デコーダは特殊な「位置表示」機能を持つこと以外は、標準DCCデコーダとしてモーター回転数と前進・後進を制御できる。勿論、PCからのJythonプログラム他による自動化も計れる。

 私はこの方法で、HOやZゲージ車両をやや小型のジオラマ(というよりも実験線)で使っている。普通のアナログ車両を、ある程度までプログラマブルにできる魅力は大きい。ただし、センサーをレールに埋め込むような高度な自動化には効率の点で向かないし、またEM13 はもともとNゲージの小型車両用だから、大きなHO車両だと電気容量の面から危ない(笑)。

DCC/EM13-1
DCC/EM13-2
DCC/EM13-3
DCC/EM13-4
DCC/EM13-5
DCC/EM13-6
DCC/EM13-7

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2011年10月16日 (日)

鉄道模型のPC制御:(08) JMRI→DP1cs(南福岡急行)→DP1(永末システム)→DF50(KATO)

承前(DP1 ):鉄道模型のPC制御:(02)赤い箱・DP1と南福岡急行の話
承前(先回):鉄道模型のPC制御:(07) 廉価なDCC組み込み車両(HO)とアドレス設定

今回の概要
 国産のDCC制御機器DP1(赤い箱:永末システム)を、南福岡急行鉄道blog「DP1cs:DP1 Command Station」のネットワーク機能を用いて、JMRIで操作する実験(の準備)。

 ☆このことによって、JMRIが持つJythonによる鉄道模型・自動制御の可能性が広くなる。
 ☆Windows、MAC、LinuxなどによるJMRIでの共時・遠隔列車制御が可能となる。
 ☆ネットワーク機能はWiFi(無線)利用が可能なので、DP1csの媒介で様々な模型運用が考えられる。

08-00 小型車両が似合う赤い箱(DP1:永末システム)

Mudsc_0058
↑JMRI制御のDP1cs経由DP1で走るNゲージ・ディーゼル機関車DF50(KATO製+DN163K0a搭載)

 鉄道模型をコンピュータ:PCで自由に制御したい時、それは一般的にDCCと言われる仕組みで可能と知った。ある列車(たとえば図書館列車)がある駅(たとえば、中央図書館駅)から別の駅(隣町の博物図書館駅)へ行って、そこで図書館利用者を降ろして、また別の客を乗せて、別の町の植物園図書館駅に運びたい~。そういう「物語」を自動制御したい、……。と思ったわけだ。

 そんな物語の断章を目で見るためにときどき小さなジオラマを造る。超小型のジオラマ(レイアウト)のことをパイク(pike)と呼ぶらしいが、過去数点造ったので手慣れてきて、最近は30センチX60センチの基板に5センチほどの厚さのスタイロフォーム(堅い発泡スチロールのような)を載せて、そこにコルクシートを貼っただけのものを造った。回りは幅広いカラービニールテープで補強し、ジオラマ上には建物模型を数点並べただけのものだ。レールは、この場合はTOMIXの超小型レール(半径14センチとか、10センチ程度)を組み合わせている。

Mudsc_0060

 動力車はNゲージなので、DCCに不慣れな場合には、HOタイプよりもやっかいな改造だが、KATO製の車両には比較的気楽なものもあって、車両専用デコーダを載せるだけで走るものがある。写真のディーゼル機関車はDF50と言って、そこにDN163K0aというほぼこの車両専用のデコーダを載せた。KATO製NゲージではDD51の方がもっと気楽にDCC化できるのだが、それはそれでこのパイクを曲がりきれない。そしてまた写真の詐術というか、内周の半径10センチTOMIXレールでは、DF50も走れず脱線する。だから、ここを走るのはMODEMO社製の江ノ電(1000形)を普通のDC(直流)で走らせている。この場合、TOMIXのダブルクロスポイントは選択配電なので、外周の交流と、内周の直流とはぶつからない。

 と、このような細部は今回はよくて、要するにパイクと呼ばれるような小型のジオラマDCCには、最初から使っているDP1という赤い小さな箱が一番似合っている。下部写真の机中にあるDP1の実寸は、横65mm、縦55mm、厚さ20mmの小さく真っ赤な箱である。USBに接続するだけで動力車を動かせるが、写真の様に付属の別途電源を挿入した方が力強く走る。

08-01 南福岡急行鉄道の開発システム(DP1cs:Dp1 Command Station)媒介による駆動

Mudsc_0067
↑机上ひきだしの中のDP1(SNJPN:赤い箱)

 永末システム製のDP1は、付属ソフトウェアが付いているのでそれだけでPCによる列車制御が可能である。また南福岡急行鉄道(個人)が開発したDp1CommandStationは、DP1をより容易に使うことが可能である。これらのことは本シリーズの(2)、(3)、(4)に記した。

 しかし一方、DCCシステムの汎用性は処理言語JavaやJythonを使うJMRI(無料)によって確かなものがある。少なくともインターネットを見る限り、Jythonによる列車の自動制御システムの事例が豊富である。このことから、DP1という優れた国産のDCCデコーダ・プログラマー機器とJMRIのような国際的な開発システムとがまとまって使えれば、安心であると考えてきた。どのような場合も複数の可能性を残した方が、将来に向けての良質な進化や安定性が高まる。

 しかしこの数年間、JMRIからDP1を制御して、模型車両を運用する方法を取得できなかった。ところが最近、かねがね使っていたDP1cs:Dp1 Command Stationが、実は優れたネットワーク機能を持つことに気がつき、実験し、良好だったのでこの方式を使うことにした。

 利用者PC→JMRI→
 DP1cs(南福岡急行鉄道)→DP1(永末システム)→レイアウト(列車等制御)

 この方法の全体システムとしては、開発システムJMRIとインターフェース機器DP1との間にDP1csをはさみ、それを媒介にしたネットワーク上でDCCレイアウトを運用することになる。つまり利用者からみると、JMRIから「DP1:赤い箱」を通して機関車を操作しているような形になる。

08-02 設定(DP1cs: DP1 Command Station)

Op DP1csの設定は ツール/オプション/ネットワーク、この窓でネットワーク機能を有効にし、ポート番号を「1234」とするだけでよい。これで完了といえる。
 ただし、IPアドレスはメモしておくと、他のマシンからこのDP1csサーバーに接続するとき役に立つ。

 コンピュータ名や、IPアドレスはDP1csが自動的に設定してくれる。またこのIPアドレスがネットワークを通した他のJMRIが走るマシン(Windows、Linux、Mac等)のJMRI上で、サーバーマシンのアドレスとして設定する値になってくる。このことで、WiFiなどの無線上運用が簡便にできる。

 そして最大接続数とは、私のシステムでは「8」以上は無理だったが、このネット上でのDP1csサーバーの許容接続数と想像している。

 この画面に関連して、DP1csの主画面での注記には以下のようなことがある。
 DP1csでは、列車アドレスを割り当てない方が、あとでJMRI上でスロットルによって列車割り当てを行うときに、問題が生じない。おそらく、JMRIとDP1csとで、同じ車両番号を当てはめるとぶつかりが生じるのだろう。よって車両のスロットルによる割り付けは各マシンのJMRI上で行うのがよいと考える。
 ただし、DP1cs上で、一つの列車に対して、右ボタンで「共有」を与えると、数台のJMERIマシンからスムーズに一台の機関車を制御できるようになる。これは、まだやり始めたところだが、面白そうだ。

 DP1csはサーバーシステムだから、これを最初に起動し必要な設定を確認するというシーケンス(順番)を守った方がよい。各JMRIは、その後で起動する。

08-03 設定(JMRI)

Settei JMRI自体は、PanelProないしDecoderPro上段の「編集/設定」窓を開き、そこでいくつかの設定を行う。なおJMRIの仕様によっては、以下の設定以外のことを求めることがあるが、基本的にdigitraxの手法を援用していると考えておけば、スムーズに行える。
 
☆接続方式は、「LocoNetOverTcp LbServer」とする。これはDigitrax社が普及させたLocoNet(ロコネット)と呼ばれるDCC共通バス(通信線)に、外部からネット経由接続するための方式である。
☆<Server Host Name>欄にDP1csが動いているIPアドレスを入れる。最初の内は、DP1csとJMRIとは同一マシン上のことが多いので、「localhost」で済ますことが出来るが、両者がLAN上での別のマシンならば、DP1csサーバーが起動しているIPアドレスを設定する。
☆<TCP Port Number>DP1csと同セットで1234とする。
☆<Command Station Type>これは「LocoBuffer(PS)」を選択する。

 他のチェック項目はこのJMRI仕様では必要とされない。
 以上を下部の【保存】ボタン押下で設定し、JMRI(PanelProないしDecorderPro)を再起動すれば、JMIRIがDP1csを経由して、赤い箱(DP1)を駆動し、線路上の列車を走らせることが出来るようになる。

08-06 プログラミング事始め(Jython)
Jython01

 上述の08-05までがうまく設定できれば、あとはJMRIの画面上でいくつかのスロットルを呼び出し、そこに線路上の機関車の番号を設定すれば、数両の機関車が同時に自由に動き回ることができる。JMRIで指令を出す分には、レールにつながっているのがKATO社(デジトラック社)提供のDCC機器であるとか、永末システムのDP1であるとかを気にしなくてもよい。

 しかしここからが大問題である。ここで終わってしまっては、わざわざJMRIを持ち出して、「プログラミング(Jython)事始め」と記した意味がなくなる。実はこれまでの記事はDCCをJythonなどで自由に操作し、列車を知能あるかのごとく振る舞わせるのが目的であった。そしてその道は近くて遠い。とりあえず、今回は大きな画面にいくつかのプロセスをまとめ、その解説をもって次のプログラミング世界への序章としておく。

☆左上のPanelPro画面では、中央に「localhost経由でLocoNetOverTcp LbServerに接続しました」と出ている。これがTCP/IPの仕組みを利用した、今回のJMRI操作の要点である。わかりやすく言うと、このJMRIはDP1csに接続しました、とメッセージを出しているわけだ。だから、エレガントで小さな国産DP1を、いくつものJMRIからネットを通して駆動できるようになった。つまりレール上のDCC車両を自由にうごかせるようになった。

☆左側中央の二つの小窓、「スクリプト入力」と「スクリプト出力」がJMRIの利点で、この入力欄にJython様式で命令を書けば、結果が出力欄に表示され、同時にレール上の列車がその命令内容に反応する。

☆左側下のDP1CommandStation画面は、参考に載せたが、このDP1csだけで列車を駆動させるには、左側の山見出し「(1)51」表示のように、目的車両番号をこのDP1cs内で割り当てる必要がある。直接駆動をせずに、他のJMRIから動かすには、この割り当てはしない方がよい。たとえば、右側の列車名50でアドレス50の車両は割り当てていないので、左側山見出しに出ていない。これがJMRIで割り当てられると、アドレス50→50、というように斜め文字に変化する。

☆画面右側の濃青小窓はJMRIが提供しているサンプルJythonプログラムを編集しているところである。実はこのサンプルは編集しなくてもJMRIの、パネル/スクリプト実行、を押下しそこで、LocoTest.py を選べばなんの問題もなく、画面に右上の小窓「Data entry」が出現し、そこで線路に置いた任意の機関車のアドレスを入力すれば、自動的に行きつ戻りつし出す、というわかりやすいJythonサンプルである。この場合は50番を入力している。

★Jythonプログラミングを、JMRIの中で統合的に効率的に開発する方法は、実はまだよく分からない。おそらく将来にJMRIの仕様が上がっていけば、「スクリプト入力窓」がもっと使いやすくなるだろう。現状は、事例のように他のテキストエディタで編集し、入力窓にコピーして動かすか、あるいは直接実行させるかどちらかしか、まだ経験していない。

08-05 まとめ
 「赤い箱」というしゃれた小箱でDCC仕様の鉄道模型を動かすことがこの一年の願望だったが、これまで見つけられなかったDP1csのネット機能を使って、それが出来るようになった。勿論DP1csのインターネット機能は、私が知らなかっただけで数年前から稼動していた。

 このインターネット経由でDP1を駆動出来ることで、最近の無線LANの向上、いわゆるWiFi形式でおよそJMRIの動くPCを数台までは、同時に扱えるようになった。Windows、Mac、Linuxと、多様なOSを扱えるので、様々な面での自由度が一挙にあがった。

 Jythonについては、特別な世界では普及しているだろうが、一般人としては未知の言語に属する。しかし鉄道模型制御の一つの潮流「JMRI」がインタープリターとしてJythonを使っているのだから、それに親しむのが早道だと思っている。教科書もでているので、格別複雑なことをしない限りは、歴史的な手続き型言語の一種なので、宣言型言語のように、考えが一変するわけでもない。というか、旧来の見方でみても、必要なことは理解できるという点で、取っつきやすいと言えるだろう。

 というわけで、次回は、列車線路上検知・センサー問題としてデジトラック社のBDL168やRX4の入門部分に入る必要があるが、なかなかにハンダ付けに手間取る、いわゆる原始的な世界である。

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2011年10月 6日 (木)

鉄道模型のPC制御:(07) 廉価なDCC組み込み車両(HO)とアドレス設定

承前:鉄道模型のPC制御:(06) DCCのスターターセット(HOとKATOのD101)

07-00 廉価なDCC組み込み済みのHO車両
Muimg_7254

 この写真の車両はBachmann社の動力車でDCCデコーダがあらかじめ組み込まれていて、「GE70t LOUISVILLE & NASHVILLE #99 DCC(3680円)」と手頃な価格である。客車は同社の「Open Sided Excursion car yellow(2210円)」で、日本では見られない斬新なトロッコ車両である。この二つの、いわゆるNゲージよりもひとまわり大きいHO車両が、動力車と客車をあわせて5890円で入手できることに、驚いた。

 こういう少し変わったDCC車両を素っ気なく気安く通信販売しているのは、「Models Shima」という、もともとはGスケールの専門店である。私がここを知ったのは、以前に、鉄道模型愛好家(兼作家)の森博嗣さんが、まだGやHOスケールの電気式模型を主に扱っておられたころに記された、「DCC関係車両をおそらく日本で一番安価にそろえるお店」という記事紹介を見たからである。

 本当は、この車両一式2両が6000円以下で入手できることについて、もっと記したいのだが、できるだけ技術情報を中心に置きたいので、社会評論家のまねごとは止めておく。ただし、日本国内ではひとけた異なるDCCのHO世界が特殊過ぎることはメモしておく。

Bach01:GP40-サンタフェと、GE70t
Bach02:DCC動力車
Bach03:Santa Feマーク
Bach04:ディーゼル機関車:HOスケール

07-01 車両のアドレスを整える
Op99address

 DCC車両には、内部コードとして最初の車両アドレスが「3番」に設定されている。DCC世界で単純に車両を動かすなら、「3」として扱えば問題はない。しかし複数の動力車を一本のレール上で自在に扱うには、各車両を識別するために、それぞれの車両アドレスを設定する必要がある。

 国内で普及しているKATO社のDCC入門セット(D101)はアドレス設定などのすべてを簡便に行うことができて、普通は細かなことを考えなくて済む。詳細はマニュアルや、よき解説書『DCCで楽しむ鉄道模型/松本典久』に詳しい。

 ところが今回入手したBachmann社のDCC組み込み車両は、KATOの入門セットでは車両アドレスを設定出来ない。これはKATOとかBachmann社のどちらかに非があるのではなくて、要するにアドレス設定方式が10進数でできるか、2進数(16進表記)直接扱いかの、そういう技術的仕様の違いにすぎない。標準仕様であるDCCも、まだまだ微妙な違いが出てくるわけだ。

Kato+Bach01:アドレス99のGE70t
Kato+Bach02:アドレス(3501番)済みのGP40
Kato+Bach03:Bachmann製GP40Santa Fe

07-02 DCC世界での汎用ツール:DP1
 すでに鉄道模型のPC制御:(02)(03)で、DP1というツールを紹介した。

 このDP1を使えば、Bachmann社の廉価な動力車のアドレスを自由自在に調整できる。
 私はこの点において当初大きな誤解をしていた。DP1を入手したのは、いわゆるDCCで鉄道車両を走らせる、つまり走行制御するために入手したのだが、DP1本来の仕事は各車両に搭載されているデコーダの性質を編集するツールだったことに気付いたわけである。

 DP1にはそれを扱うアプリケーションが付随していて、写真では「DPx:DccPgm3」となっている。
 まず車両をDP1接続のレールにおいて、このアプリケーションを起動し、左側窓の[マルチファンクションデコーダ→Generic]を指定すると、画面が変わり、右側窓の上部左端の[CVLIST]、その右下[読出し]の押下によって、デコーダの内部情報が速攻で分かる(このスピードはすさまじく速い)。

 車両のアドレス変更は、CVリスト列挙の上部に「マルチファンクションデコーダ」という欄があるので、この「●主アドレス(cv1)」をチェックし、右側に希望する番号(事例では99)を入力し、[更新]ボタンを押下する。4桁の長アドレスの場合は、○拡張アドレスをチェックする。

DP1-01:DP1(赤い箱)によるアドレス設定
DP1-02:DP1を上部から見る
DP1-03:DP1
DP1-04:長いアドレス「3501」のDP1での設定

07-03 まとめ
 国内では特殊扱いされているDCCだが、外国製車両にはデコーダが組み込まれている車両が多数あって、それは国内でもおどろくほど容易に廉価に入手できる。
 そのアドレス設定は汎用的なツールDP1を使えば簡単にできる。少なくとも、Bachmann社の車両を標準アドレス「3番」で走らせるのには、なんの操作も必要ない。DP1を使えば、変更操作は自由自在と言って良く、廉価でおもしろい車両を国内でも愉しめる。

 と、このような経験から、今回私がDCC処理扱いの基本方針として定めたことを以下にまとめる。
 ・DCCはHOスケールが良い:KATO社動力車は8ピンのデコーダ受け口を備えている。
 ・外国にはDCC 組み込み済みの廉価な動力車が流通している。それを国内でも気安く入手できる。
 ・KATOのDCC入門セット(D101)によって、国内でもDCC世界が扱いやすくなった。
  しかしDCC世界にはアドレス設定など未調整の部分があるので、汎用ツールDP1などが必要となる。

 本シリーズのPC制御については、一応指針はできている。
 ・BDL168 などのセンサーは必須であり、これは「錦林車庫」のオンラインショップ・DCCパーツ部門で入手できる。
 ・実験レールには、KATOの半径43センチ・16.5mmゲージのレールを使うことで、広さ、ギャップ対応、センサー設定がやりやすい。
 ・ポイント装置については、KATO社の提供するDCC対応装置の使い勝手がよい。
 ・鉄道模型制御汎用アプリケーションとして、無料のJMRIは素晴らしい。
 以上については、今後記事にまとめていく予定である。

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2011年9月 1日 (木)

小説木幡記:九月になれば

Amudsc_0028 余の性癖か人の性癖か、分からぬ処だが、常に今このときの現実を通りこして、「夏休みが来れば」「給料日になれば」「秋になれば」「正月になれば」「来年こそは」と、決着の先延ばしとか逃げを未来に置いてしまう。本当は春休みまで待たずとも、今このときを愉しめるのだが。給料日や年金支給日が来なくても、我慢は我慢、衝動は衝動ですませてきたのだが。

 ということで今朝は一日(注:昔のクセで、ツイタチとは呼ばず、イッピとつぶやく)、九月になった。といえば初秋、晩夏、残暑、台風の季節といえる。小中高校までは、たしか学校が始まる月で、大学生の頃には「まだまだ~」と、ゆとりがあった。お堅い仕事(笑)についていたころは、「そろそろ、夏期休暇を消化しないと」と、思う月だった。
 で、現在は?
 ありとあらゆる校務宿題責務を「夏休みになれば」と、つけ回したせいか、肝心の夏休みあけは、締め切りだらけになって、あとしばらくで宿題提出日が連続してくる。
 と、そんな話を続けていても、おもしろく無い。

☆アンドロイド・auスマートフォーン
 最近漸くスマホを触りだした。これまでは他の細かな事が多すぎて、自分の手元のスマホですらまるで他人の電話機のような、疎外感を持って居った。
 で今の感想は、au携帯とは随分異なるものだと気付いた。auスマホ(アクオス)は、つまりは、携帯コンピュータそのものなのだ。
 PCに電話機能が付いたものだ。
 きっかけは、夏期論文執筆の第2の山場をすぎてほっとしたことと、その前に思うところあって、8GbほどのマイクロSDや、アクオス外殻を入手したこと。前者はワンセグや動画保存用に、後者は人もすなるスマホケースを、余も試したかったわけだ。
 このきっかけ物をさわっているまに、漸く、アンドロイド・アプリ百選なんかのムックを買って、読み出したら止まらなくなった。いやはや、もうWindows7も真っ青になりそうなアプリが無料でがんがん使えるようになっておる。余の中、ものすごい変化じゃ。
 余もようやく世間に溶け込みだしたようじゃ(笑)。
 ところで、アンドロイドOSが、じつはLinux上で動いて居るって、しっとるけぇ~。

☆DCC:ディジタル・コマンド・コントロール
 鉄道模型の電子制御をずっと考えてきたが、「図書館列車物語」を自由自在に紡ぎ出すほどの列車自動運行・人工知能制御の成果はまだない。
 この世界は随分マイナーだと思った。
 その中でも、比較的満足している現実はいくつかある。

 1.葛野では2003年頃の古いiMacに、数年前の中古程度のMacOSXを載せて、最新のJMRI(v2.12)を載せて触って居る。この一昔前のiMacが実に役だって居るところに、余の自足がある。

 2.KATOのHO用レールはいろいろ不満もあるが、それでも半径43センチを使いこなして重宝しておる。で、このことでポイントのDCC化に最良の方式を得た。要するに、半径49センチ用の手動ポイント(左右)に、KATOのDCCポイントマシンを付けるのが、一番わかりやすく、工作も楽だと気付いた。リード線を2本、ネジ止めするだけで完了。ハンダもニッパーもなにもいらない、手も汚れない。どうしてこういう気楽な方法をKATOやDCC愛好家はもっと宣伝しないのだろうか(邪笑:いまや、DCCを気楽にあつかうことは、マニアの沽券にかかわることなのか)

 3.動力車両のDCC化は、以前も書いたが、HOタイプ車両が一番気楽だ。KATOの出す動力車はたいてい、8ピン・デコーダなら、差し込むだけで完了。で、バックマンの廉価な動力車はDCC付きだが、これだとなにもしなくても制御できる。というか、車両アドレスだけは変更した方が良いが(通常は3)、このアドレス変更がKATOのDCC基本セットでは出来ない(パラメタ変更での、十進か16進の問題)。これは、永末さんのDP1&DPXであっけなく変更できる(笑)。

 4.というわけで、JMRI画面上に、4車両くらいのスロットルGUIを同時に表示し、ついでに転轍機(ポイントだな)表をみながら、古代iMacのマウスを操作すれば、一人で数両の動力車やポイントを自由自在に扱える。これは快楽だ!

 5.課題。車両センサーとして、BDL168&RX4を入手したが、ワイヤーだらけのお化けになりそうなので、まだ執行を躊躇しておる。電子工作の得意な人のネット記事をながめると、この大量のワイヤーを実に上手に処理しているのでほれぼれするが、余がやると完全なスパゲッティ状態になりそうだ。そういえばPC自作の最後の難関は、ワイヤー処理だった。そうそう、ロボットも大量のサーボモータ結線をどうするかが問題じゃった。電線問題は根が深い。

☆読書、古代史、その他
 もう、疲れたのでまた後日。

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2011年8月24日 (水)

小説木幡記:うまく行った今日、マツタケご飯

800mujmri5

 昨夜は珍しく11時ころまでミステリを読んでおった。いつも食後すぐに眠ってしまい、脂肪がどんどん蓄積されてきたことに気付き、何が何でも深夜11時過ぎまで起きていようとおもって、堂場さんの『雪虫』を読み出したら止まらなくなった。
 ともかく~食後は3時間ほど起きていないと、ファットになるらしい。

 今朝は、しかしいつも通りに起床して、葛野には7時前に入った。暑いのでさっそく地下におりて茶を買って、魔法瓶(今はなんと呼ぶのだろう)に2/3を入れて蓋をし、残りを口に含んだ。日本冷茶は結構いけるなぁ。さらに珈琲をセットしてスイッチを入れて、さっそく仕事に取りかかった。

 珈琲は熱かった。
 午前10時すぎだったか、昨日まで論文がうまく行かず胃を痛めていたことが、すっと行った。万歳した。ずっと、実はクラスター分析がうまく行かなかったのだ。つまり、デンドログラムの出現が悪い。そうこうするうちに、今日の午前に通った。快哉ものだ。(原因は、パラメタ設定を忘れておった)

 調子良く、論文のフレームを最後まで形成してしまった。つまり、これですべて結論まででたわけである。余ひとりなら、それで完了だ。だが、論文とは誰も読まなくても公開されるものだから、他人が読んで分かるようにしなければならぬ。来た、見た、勝った! ではすまない。
 まあ、よかろう。

 11時すぎに、一人にこにこして、めしやに行って、松茸ご飯やおかず(チキンの白蒸し、揚げ出し豆腐などの小鉢もの)、さらに意に反して味噌汁までたのんで(注文しないつもりだったが、お兄さんが、「マツタケごはんにお味噌汁どうですか」と間の手をいれてきたので、思わず、「わかめ」と言ってしまった)、大枚700数十円もつかった。贅沢だなぁ、と思ったが、『戴冠詩人の御一人者論』のフレームができた、つまりスジが通ったのだから、これくらいはよしとしよう。

 午後は一時まで仮眠し、それから一気呵成に冒頭から書き出した。
 しかし午後4時ころになって、「さすがに疲れるなぁ」と感じたので、筆をとめた(マシンを消した)。
 やおら別室に行き、LGBのレールを敷いたり、部屋の片付けなどをした。約30分でテーブルや片付けやセッティングが完了し、それからGゲージ機関車を走らせた。円周の真ん中には「嵯峨野鉄道図書館ジオラマ」をセットした。したが、~、Gゲージ車両をボール紙やバルサで造って、色を塗って、書庫やカウンターやミニ本を置くとなると、こりゃ、時間を湯水のように使う。来年はジオラマよりも、図書館専用列車モデルを造る算段を、限られた余生の中でじっくり考える必要があるのう。

 というわけで、すべてうまく行ったので、早めに帰還した。
 今夜も『雪虫』の残りわずかを読み切る。日々、忙しい脳。

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2011年6月 4日 (土)

鉄道模型のPC制御:(06) DCCのスターターセット(HOとKATOのD101)

承前:鉄道模型のPC制御:(05)iPadで列車制御→WiThrottle

06-00 板敷きのDCC列車走行

Muimg_7028

 ↑何の工夫もなく、コーナー基板(45x45センチ)を4枚四隅に置き、その間に中間基板(30x60センチ)を上下に挟んで板敷き列車とした。ネットを見ると、世間ではレイアウト(ジオラマ)を作って模型列車を走らせる他に、「お座敷列車」とか「風呂敷列車」という方式があるらしい。お座敷も、手頃な風呂敷もなかったので、板敷き走行にした。今はまだDCC(ディジタル・コマンド・制御)が日本では普及していないので、固定的なジオラマとして扱う気力が湧かない。つまり今後も変化が大きいので、このたびは完全固定化よりも可動方式が気楽なのだ。

06-01 私の考えた「スターターセット」
 いろいろな新世界に入るには、一式セット、つまりスターターセットがあると気持ちが楽になる。そこで日本的なDCCのセットを考えて見た。
 まずゲージ(線路幅)だが、これはHO(16.5mm)にした。それより小さいNゲージの方がすべてにおいて普及し廉価と思うものだが、DCCでの初心者結論は、熟考の上で、HOとした。動力車だとNゲージの2倍の価格だが、Nを2台買ったつもりで、HOを1台にすればよい。
 その一番の利点は、日本メーカのKATOはほとんどのHO動力車に8ピンプラグ受け口を付けている。だからこそ、DCC化は、別途デコーダを差し込むだけで完了となる。DCCのネット記事を読むと、小さなNゲージ車両にデコーダを神業的に搭載する記事で溢れているが、初心者には難しい。

 以下、2011年6月時点でのネット通販「錦林車庫」(オンラインショップ)の入手度や価格を標準とした。ここは、一般に品物がそろっている。

(0)DCC制御装置
 KATOのD101+解説本。19467円
  (解説本『DCCで楽しむ鉄道模型』は書店でも買える。しかしこの図書がないと、マニュアルだけではどうにもわかりにくい)
  (電源などが含まれている)

(1)車両
 KATOのDD51ディーゼル機関車。12600円(売り切れになっていたが、これはどこかにまだある(笑))
(2)DCCデコーダ(8ピン)
 DZ125PS。2772円(動力用で、PSがついたものは大抵間に合うが、他のは4000円以上と、高くなりがち)
(3)レール
 KATOの半径43センチ曲線レールを4セット。4000円程度。
 (こればっかりは、KATO通販に直接申し込まないと入手不可。要するに市場に出回っているレールは最低で半径49センチ。それだと机上に載らない。前者だと、可能。)
 フィーダ線付き直線レールと、同じ長さの直線レール。数百円。

 以上で合計が、4万円以内となる。
 部屋が広い人は、最近でたKATOのHO入門セット「DD51貨物列車スターターセット」が24780円。これだと、上記(1)と(3)を外せるので5万円前後。ただし、レイアウトサイズが2366×1382mm、なので小部屋住まいには扱いにくくなる。(このセットの電源はDCCでは不要になるが、いろいろ役立つこともある)

 DCC工作は、↓写真のように、DD51の頭を外して、デコーダのオレンジ色線を1番ピンに併せて差し込むだけ。数秒から数分で完了(笑)。

DCCDD51HO_7035
DCCDD51HO_7037
DCCDD51HO_7039
DCCDD51HO_7043
DCCDD51HO_7047

06-02 セットの動かし方(1)普通の方法:KATO DCCの基本システム

 DCCの動かし方は、解説本で丁寧に読めば車両番号(IDとかアドレス)セットから始まるが、実はデコーダが工場出荷時に「3」番になっているので、アドレス設定は3番のままで飛ばしても動かせる。
 レールに上記(0)から線をつなぎ、車両を載せて、線路電源押下、LOCOボタン+3+LOCOボタン、そして前進、ノブを回す。動き出す。前照灯は、0を押す。以上が基本操作。

DCC普通_7025
DCC普通_7027
DCC普通_7031
DCC普通_7032
DCC普通_7033

06-03 セットの動かし方(2)コンピュータ操作:JMRI

 この記事シリーズはPCによる鉄道模型操作なので、JMRIによる運転は後日にポイント装置の組み込みと併せてじっくり書く予定。入門はすでに記したので、参照願いたい。

 ここではまだJythonなどによるスクリプト方式ではなくて、JMRIが持っているスロットル機能を使って、数台の列車を私一人で動かしている様子を写真に撮った。もちろんそれはハンディなスロットル(運転装置)を数台用意すれば出来るわけだが、それでは漫画になる。そういえば、運転会などでは、別々の人が各人スロットルを持って運転することになる。人付き合いの無い私は、それをPC一台と対話して操作しているわけだ(笑)。

 JMRIのPanelProなどの上部ツール欄に、新規スロットルがあって、これを押して、スロットルのアドレス設定欄に機関車番号を入れるだけで、スロットルが完成する。これはファイル保管しておく。

Mudccpcjmri

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06-04 3列車の並行処理

 この動画は中央にある建物が「未来の図書館」というコード(記号)で、奥にある細長い木造建物が「未来の中央図書博物館」というコードである。この間を図書館列車が走行することで、互いの施設をリンクしていく。そのことで地域全体を視野に置いた、未来の「生涯学習館」を考えている。
 薄暗く見栄えのしない動画だが、この中で三台の列車が走っている。これをそれぞれに特徴を持った「リンク・図書館列車」と考えておく。

 そこで、技術的な話になる。
 この三列車はDCC方式なので、それぞれの制御が完全に独立している。列車は車両に搭載された別々の背番号を持つデコーダ(一種のコンピュータ)によって走行指示をうけている。その独立したデコーダに指示を与えるのは、「私」なのだが、一旦与えられた指示(例:前進、速度70%、前照灯オン~など)は記憶され持続するので、私が次に他の車両に指示を出しても、先の車両の走行は維持される。

 こうして私は、つぎつぎと指示を出し、その指示に各車両が独立して、一つのオブジェクトとして対応する。これは明白な、イベントドリブン方式である。各デコーダ、すなわち各車両はそれぞれがオブジェクト(自律物)として並行に振る舞うことができる。そのことが、DCC方式による最大の利点である。

06-05 まとめ

 今回は、JMRIによるポイント制御やJythonまで話を進める予定だったが、DCCのスターターキットを考えているうちに内容が変わってしまった。

 まず、現今の日本の状況では、HOゲージによるDCCが容易だと考えた。経費については、車両の数を減らせば、普及しているNゲージとそれほど違いは出ない(笑)。
 レールはKATOの半径43センチ定格ものを使うと、実に気楽な小スペースですませられる。KATOがこれを何年も大々的に流通させないのは謎だが、おそらく日本の精密な車両が曲がりきれない、脱線する危険、そういうクレームもあるのではなかろうか。この対処はいろいろ工夫したが、DD51では、まず中間の遊車輪、つまり中間台車そのものを外している。私は走らせることに意味を感じているから。とくにDE10では、台車の四隅を削り落としている。次にBackmannなどの極めて小さな半径でも回るOn30・DCC(0-4-0 Side Rod Gas-Mecanical DCC)とか、1/87の小さな、そして車輪の少ないDCCものを重用している(このDCC車両への列車番号付けは後日に記録予定)。外国製(フライシュマンなど)のものが半径36センチでも走るのを見ると、日本の模型は走りよりもスケールモデルに傾き、少し堅物過ぎる気がした。

 DCCで車両を一台ずつ制御することになれると、原則一レールに一動力車しか走らせない従来アナログ走行が、別世界に思うことがある。私の場合、図書館駅から中央図書館駅に行き、そこから分岐して博物館に行き、別の列車は動物園(これも博物館)に直行して折り返し運転をする~。そういう物語をモデル化するには、現状ではDCC方式の自動運転が最良となる。

 外国車両がはじめからHO・DCC化(デコーダ搭載)していて、音(サウンド機能)を欲しなければNゲージ車両並の価格なのを知り、そしてまた日本ではDCC関係の商品・部品流通が通販以外にはほとんど無いことを知り、少しでも優れたDCCが普及して、全体の動きが活発になることを願っている。

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2011年5月20日 (金)

小説木幡記:少し変わったこと:ubuntu、DCC

Aopimg_5609 最近の葛野はめったやたらに疲れることが多くて、疲弊しておる。事情は簡単で、内外の変動に対応する事に尽きるのだが、具体的には未知の学生たちの前で講義したり演習することが増えたからだ。~まあ、いろいろある。
 さて。
 その間をぬって、半睡状態で、必死で「正気を保とう」とした結果、二三、新規のことを試み、うまく行っているのでメモしておこう。

1.ubuntuの新バージョン
 Linuxのubuntu話は、MuBlogではずっとMac世界記事へのアクセスが多いが、それはもう良かろう。本当は、MacはMacで使うことが多くて、実際のubuntuは春霞2010マシンで動いておる。しかし、まったく記事にしていなかったのは、この一年近くの間、ヴァージョンダウンしていたからだ。実際には半年の間はハードディスクが壊れて休止しておった。
 約一年前に、ネット経由で「ヴァージョンアップしますか?」と聞いてきたのでYesをいれたら、途中でフリーズして、結果的にハードディスクも壊れてしまった。他にすることがあったので半年すておいて、ようやく近所の中古ショップで数千円の100GB2.5インチハードディスクを購入し、昔のCDから昔のubuntuを再インストールした。~というわけだ。
 最近また「とれとれのubuntuに変更するか?」と聞いてきたので、またしても疲れた中でyesを入れたら、今度は美味く新品になった。2011年の四月ヴァージョンになった。

 ということで、現在は新新のubuntuが余の春霞マシンで動いておる。画面構成がだいぶ変化したので、最初は面食らったが、もう慣れた。WIndows7の利用者なら親近感を持つかもしれない。詳細は、雑誌を買って見ておくつもりだ。くだんのラザラス(Pascal処理系の統合システム)だが、ちゃんと動いておる。結局、この春霞はJMRI制御マシン(つまり鉄道模型を自動運転させる)にするつもりなのだが。

2.HO16.5mmゲージのレール半径
 ジオラマのレールは、通になると自由折り曲げレールを使うようだ。余も試してみたが、なかなか小ぎれいな曲線を持たせるのが難しい。DCCを制御するよりも、レールの曲がりにこだわってしまう。

 そこで、実験するには固定式つまり規格レールが扱いやすいのだが、少し大きめの16.5mmレールの規格が国内製品では融通が悪く、困ってきた。(ドイツ製では良いのがあるが、高額で入手が難しい)
 そこで、思い切って最小半径43センチのものをメーカーに直接依頼して、真円を二つ分入手した。なぜメーカー依頼かというと、商品構成上はカタログにあるのだが、この半径43センチものが店頭に並ぶことはまず無い。
 なぜなのか? それは謎だ(笑)
 メーカー依頼だと、値引きがない。一般にこういう商品は八掛けなのだが、メーカーの通販では正価販売になる。ただし、商品は売れる売れないに関わらず、そろっておる。

 ということで、不思議な業界なのだが、これはこれで事情はいろいろ推察できるので諦めておる。DCCについても似たところがあって、日本での普及は遅れておるが、それでもいろいろ事情はぼんやりわかる~というのが、鉄道模型世界の不思議な現状だ。

 さてそこで。
 なぜ半径43センチにこだわるかというと、基板の大きさが90x60センチというのが標準である。それを二枚つかって、90x120にするとHOタイプの車両が綺麗に走る。もちろん通はこの基板から作り出すのだが、余の目的からすると、そういうところにこだわる必要性がない。半径43センチというのはレールの中心計りなので、実際の半径は45センチ、つまり直径90センチになって、丁度この標準基板にレールが収まる。店頭にある最小の49センチ半径だと、51センチになって、直径が1mを越えて、扱いがややこしくなる。
 ~
 と、つらつら書いた。一般論としてはこの業界は理不尽、不合理なことで一杯なのだが、江戸幕府の庄屋造りと同じで、最初にシステム全体がはっきりあって、それを演繹的に展開した世界ではないので、その時々の状況のなかで、なんとかかんとか整合性をあわせて成長した結果、ときどき「おや?」と思わせる事態に遭遇する。
 それはそれで、愉しい体験だと、最近は味わっておるぞ()。

3.まだまだ
 半睡状態であれこれやったことはまだまだあるが、メモするのも疲れてきた。外が明るくなってきたので、また一睡しよう、ぞ。要するに、正気を保つにはいろいろ工夫しないと、日常にながされてしまう。流される人生なんて猿でもできるからなぁ。必死であらがうわけじゃ、わい。

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