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2013年5月21日 (火)

小説木幡記:癌の必然 『NHKスペシャル 病の起源「がん」より(2013年5月19放映)』

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  ↑近つ飛鳥博物館の建物模型

 癌の由来、起源は以前から気になっていた。和田洋巳(ひろみ)先生の『がんとエントロピー』(NTT出版、2011)では、癌とは老化の必然とのお話だった。これに対処するには、18~19世紀以来の西洋医学における対象をたたきつぶす発想の「細菌戦」とは異なった考えをもたなければ、克服できないという説に出逢い、目から鱗が落ちた。つまり癌とは敵ではなくて、我が身の一部なのだ。殲滅思想だと、自分自身も滅びる。共生する考えを導入しないかぎり、克服出来ないというお考えだった。この著書については縁あって、余も随分熱心に読んだのでいずれ、感想を記そうと思っている。
 
 さて、数日前に放映されたNHKのスペシャル番組でがんと人類史の関係をより具体的に知った。

 人間と99%も遺伝子構成が同一のチンパンジーに引き比べて、人類(統計的には日本人と限定した方が正確かもしれない。仮に人類全体としておく)はその30%が癌で死亡する。チンパンジー(日本産のチンパンジーとは考えない)の癌死はわずかに2%である。そしてまた通説では人類の50%は目立った癌に罹患する。わかりやすくいうと、人の100人のうち、50人が生涯にめだった癌を発症し、そのうちの30人は癌死する。これはチンパンジーと比較するととんでもない統計数値であり、異様な現実に人類はさらされている。

 なお、目立った癌に罹患するというのは番組からではなく、和田先生の著書をよんでいると、人類はしょっちゅう身体のそこら中で癌化が発症している。しかし癌と言えるほどになるには時間もかかり、また人間の強力な免疫システムで癌がうまれても消えてしまう場合も多い。だから、病院でわいわい騒ぐ癌は、それが現代医学で「癌」と認定された、いわば癌システムの一部なのだ。余の感想では、癌は単純に生きることの側面の一つに思えた(笑)。

 そこで番組の構成を忘れぬうちに記録しておく。詳細なデータや物質名はすでにわすれた。

1.SEXが遠因:精子増産
 チンパンジーと人類が別れた頃に、人類の繁殖革命が起こった。それまで猿やほ乳類などは明確に発情期があって、その事情を♀は♂に隠さなかったから、繁殖のためやその他において♂は年がら年中SEXに没頭しなくて済んだ。しかし人類らしくなったとき、♀は食料調達を円滑に進めるために、SEXを♂にたいしての労役代償と化した。食料は年中必要だから、♀は♂にたいして受胎時期や発情状態を隠すに及んだ。よって、♂は子孫を残すため、その他ももろもろのために、年間通期で♀を追いかけざるを得なくなった。その結果として精子製造に異様な能力を身につけてしまった。
 と、その能力が人類に固定化したとき、遺伝子複製ミスが原因の癌細胞もまた、精子製造のスキルを利用しだしてしまった → それが人類の癌化増大の原因。
 さて、となると、生涯卵子の数が限られている♀にも癌はあるが、そういう精子増産能力を♀癌にどうやって継承したのか、ちょっと疑問だった(笑)。

2.大脳肥大の必然
 人類の大脳が極端に大きく成長し、緻密になったのは、脂肪酸が大きな原因らしい。そのために脂肪酸合成酵素「FAS」のシステムが躍進した。
 ~、とこの話はすでに忘れかけているので詳細は専門書や専門家に聞かないとわからぬ。
 ただ、人類は異様な大脳巨大化のために脂肪酸を使った。しかしてこの好機を癌細胞システムが見逃すはずもなく、まんまと癌増殖システムにFASを取り込んだ。らしい。
 知恵がつくことと引き替えに人類は、癌持ちになってしまった、といえよう。

3.出アフリカ:紫外線の減少
 人類は適度な紫外線をあびて、体内にビタミンDを自製しないと免疫が落ち、癌化が促進されるようだ。6万年前に紫外線に満ちたアフリカを出て世界に散らばった人類のうち、紫外線の少ない地域に定住したもの達は、ビタミンDが不足し、癌発症が高まってきたとのこと。たとえば北米アメリカの東海岸あたりは紫外線が少なく、大腸ガンの発症とぴったり重なるようだ。そこである町では組織的に日々ビタミンDの錠剤を飲んで影響を検証しているとのこと。

 ただし過剰な紫外線は皮膚癌をもたらすので、過ぎたるは及ばず也。番組では15分以内が適当とのこと。

4.現代病:光と産業革命以降の諸毒
 産業革命以降、人類がありとあらゆる有毒物質のエッセンスにかこまれ癌化が促進したのはタバコや食品添加物や公害で著名なので、省略する。
 さて。
 エジソンが発明した電気電灯が癌化の大きな要因とのこと。
 夜勤の人達、がんばって夜を警備してくれる人達には申し訳ないが、人類は夜は眠る生物としての素因があって、それを破ると癌化が進むらしい。
 昼間勤務の看護師と夜勤常勤の看護師では、乳がんが3倍に増加するとのこと。
 夜は暗くして熟睡すると、癌化を阻害する物質が自製されて、健康を保てる。
 余はおもうに、夜に活動すると無意識に過大なストレスをうけるのではなかろうか~。

*.まとめ
 こうして番組を見終わって、ため息がでた。癌というのは人類の属性なんだな。必然、宿命におもえてきた。
 人間が上等な知恵を持っているのが特徴なら、癌持ちなのも人類の特徴なのだ。
 そこで、今朝の結論。
 癌はたたきつぶす敵ではない。もしかしたら鬼子かもしれない。子にかわりはない。
 だから。
 癌化老死という普遍的な寿命を受け容れる精神性も必要だし、癌とつきあう発想も必要なんだろう。
 ただし、若い人の癌は人生を真っ暗にするし、悲惨すぎる。
 ~
 となると、癌の進行を遅らせる手法が一番大切なのだろう。癌は老化と考えると、癌になるのは人類史、個人史、両者にとって「さだめじゃ~」である。せいぜい気楽に長生きできる薬や療法がでてくればよいのう。
 (癌にたいして不老不死の考えを持ち込むのは失敗の元だな)

意味深長なキーワード
  FAS、C31、ビタミンD

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