NHK八重の桜(05)松陰の遺言:井伊の無念
承前:NHK八重の桜(04)妖霊星:井伊大老
NHK大河ドラマ公式あらすじ
吉田松陰の刑死は29歳だったと知って、あらためて驚いた。萩での数年の談論講義で明治維新を駆動した逸材を育てた、あるいは強い影響を与えたという事実が残った。
人が人の影響を受けるのは、知識と大局観と世界観、そして包容力を持った人物に出会ったときだ。
人から影響されたいとか、人に影響を与えたいという気持ちが中心にあると、うまく行かない。教育現場の失敗の多くはそうだし、組織の非活性化にもそれはある。
もちろん、教育世界も組織も「利」を中心にすると、一過的な擬似的な「相互影響」はでてくる。
その場を出たあと、あるいは棺に蓋をおいた後も、影響が残ったなら、本当の力が存在していたと考えて良かろう。
吉田松陰先生は、おそらく本当の力を持っていた。それは大和魂と言ってもよいし、至誠と言ってもよかろう。彼の刑死は相当な衝撃を後世にまで残した。
そしてまた。井伊直弼の無念。
これがドラマの本流になるのだが、直弼の気持ちは松平容保(会津中将)に伝わった。このことが、旧幕派列藩の中でもことのほか会津の悲劇を大きくした、遠因ともなった。容保(かたもり)は火中の栗をわしづかみにしたわけだ。
たとえばドラマでは、容保は、井伊大老をおそった水戸脱藩浪士を育てた御三家水戸を責めるのは筋違いという話を切り出した。これがどのような道を指し示していくかが、ドラマの醍醐味なのだろう(笑)。
ところで。
このとき、井伊直弼を警護し、生き残った武士たち全員が、国元彦根に帰参した後、どのような悲劇に襲われたかは、おそらくドラマでは描かれないが、「一つの大事件」の影に隠れた歴史として、知っておくべきかもしれない。
この場合、警護に生き残ったから家名断絶身は切腹、罪科は親族に及んだ。おそらく幕府の考えで行われた彦根藩への処置だったのだろう。武芸ある故に生き残ったかもしれない可能性を考えるゆとりはまるでない。旧日本軍でもそうだが、追い込まれた指導者には、高い確率で怯え・卑怯・視夜狭窄症が発生する。生き残った者らへの追い腹強要は「証拠隠滅」&「いじめ」という、まさしく組織・教育関係者のお家芸だな。
だからこそ、あらゆる組織は「長」「幹部」の教育を真剣に組織的に考える必要がある。問題は、そのあたりのことはスキルではなくて、胆力・精神力・柔軟性・倫理感という、数値化しにくい要件で成立していることにある。
(歴史上の多くの「軍」にかかわる学校・教育施設、たとえば士官学校の要素を考えるのもよかろうか)
今年の大河ドラマは、会津若松から見た幕末維新史観がみられる。
楽しみだな。
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