小説木幡記:馬車道の街路標識・架空の地名
↑馬車道の街路標識(横浜)↑
島田荘司の造形による名探偵・御手洗潔(みたらい・きよし)あるいはその相棒の石岡和己(いしおか・かずみ)が探偵事務所を開いていた場所が馬車道である。最近、石岡さんがランチによくエビフライを食べていた洋食屋「ポニー」が店主高齢のために閉店した(2012年9月)。しかし打合せに使う馬車道十番館という珈琲館は今でもこざっぱりした一階で落ち着くことができる。遠隔地の余など、横浜と言えば中華街だが、それだけでなく馬車道などいろいろ面白いところが多い。
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標識に目が移ったのは、見知らぬ土地で東西南北や通りの名前がすぐには分からなかったので、回りをきょろきょろ見渡しながら歩いたからである。「馬車道」も小説の中で出会ったときは実感が少なかった。つまり馬車道があるなら自動車道もあるなぁ、島田先生が工夫した滑稽感なのか、と思っていた。要するに実在の地名と知ったのは今からやっと5年ほど前で、知人が馬車道へ行ったという知らせを聞いて、はじめて「そうなんだ、本当の地名なんだ」と気付いたわけである。
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で、馬車道のそばに「関内」という地名があったが、これを「セキナイ」と呼んだら、地元の人が「カンナイです」と、訂正してくれた。まるで帷子ノ辻(かたびらのつじ)をキャラコノツジと読んだり、太秦(うずまさ)をタイタイというようなもんだ(笑)。そしてまた関内をネットで探していたら、これは地名ではなく、横浜が開港したときのアメリカと日本との条約で定められた地域内のことらしい~そして地下鉄の駅名には「関内」があった。まあ、嵐山をアラシヤマとしか幼少時から呼んだことがないのに、突然歌謡曲で「らんざん」と歌われたり、地名というよりも山の名前や、嵐電の終点駅の名前だったりするのと、同じことかもしれぬ。
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ということで、小説に登場する地名が架空だったり実名だったりするのは、地場の者にしか本当はよく分からない。そういう辞書事典があるくらいだから、昔から文学研究者を悩ませてきた一つの問題だったのだろう。あっさり、K市とか、ハナモゲラ町と書いてくれれば「嘘」と思えるが、~事実は小説より奇なりというから、「自動車道」があってもおかしくないな。
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