鉄道模型のPC制御:(11) 閉塞区間の構成:BDL168とRX4との配線について
承前:鉄道模型のPC制御:(10) 半径15センチのHOやDCC
↑ロコネット・ケーブル配線
11-00 概要
日本で流通しているDCC関係システムのうち、老舗のヨーロッパ系は別格として、アメリカのデジトラックス社のものが著名である。本シリーズも、おもにそれを対象にしてきた。もちろん、ディジタル制御に優れたシステムはメルクリン社のCS2(Central Station 2nd)など巨大で充実した世界がすでにある。そのことは稿を別にするとして、ここではデジトラックス社の良きにつけ悪しきにつけ中核となるシステムの構成部品として、BDL-168 &RX4についてその具体的な配線のメモを残しておく。この二つは、車両の線路上での位置情報をPCと送受信するための部品で、この装置によってPC自動制御が可能となる。
しかしその複雑な配線は利用者に委ねられた部分が多く、私にとっても後日のためにメモが必要になる。
BDL-168は、あらかじめ線路を分断し、数個~16個の閉塞区間(セクション)を作っておけば、個々の区間に電力を供給し、かつ制御信号を送り、また車両在区検知の信号を受け取る。
そういう機能を持っている。
RX4はRX1が4つ連動し、RX1は一つのゾーン(4セクションで構成)にいる車両の情報を受信するシステムであり、通常はRX4でA、B、C、Dと4つのゾーンを検知できる。すなわちどのゾーンにどの車両番号が居るのかがわかる。
この車両在区検知と車両情報を得ることで、どの列車がどのゾーンにいて、そのセクションはどこかということがPCで確認できる。JMRIシステムでは、Jythonというスクリプト言語を用いて鉄道模型の自動運転つまりロボット化を達成しているが、そこにはデジトラックス社のBDL-168 & RX4を比較的容易に操作するサービスが含まれている。
ここで「配線」と断ってそれを細かく記録する事情は、デジトラックス社が外見上では未完成と思えるような仕様にもかかわらず、優れた機能を持った部品を利用者に提供しているからである。BDL168もRX4も無骨で、日本では「商品」として通らないような形態と組み込みの難しさを持っている。しかるに、その機能は十分に果たされ、完成度が高い。それが、「良きにつけ、悪しきにつけ中核となるシステム」と記した理由である。要するに、配線という手技やそれへの習熟がないと、難しく時間がかかるのが、現在(2012年春)のデジトラックス社が提供する在線検知システムである。
本稿では実際の配線を敷設し確かめることで、鉄道模型のPCによる自動運転の基礎を確認する。手技の巧拙は考慮していない。ただし、完全に稼働する。(また、JMRIなどでのPC制御は別項としてあらためる)
11-01 自動運転システムの全体
ここでは全体の構成について述べる。各小写真を左クリックすれば拡大写真と詳細説明が提示される。
自動運転システムの全体と記したが、そのハードウェアの要素には、
PC (JMRIなどで列車制御する統合システム:無料。Win, Mac, Linuxで共通に稼動)、
PR3 (PCとDCC装置の接続:デジトラックス社製品)、
DCS50K (KATO社が日本風に改良したデジトラックス社のDCC装置)、
BDL168&RX4 (在線感知、双方向通信:デジトラックス社製品)
の4つがあり、PCはUSBでPR3と接続している。PR3はロコネットケーブルでDCS50Kにつながり、DCS50KとBDL168ともロコネットケーブルで接続している。RX4はBDL168のAUX2ソケットに直結している。
実際に線路に接続している部分は、在線感知からは独立したポイント部分へのDCCフィーダー線直結と、各閉塞区間にはBDL168からのセクション出力線の2系統に別れる。
↑写真はすべてロコネットケーブル(6極4芯・ストレートのモジューラーコード)の接続状態を説明するためのものである。
右から二つ目がPR3で、本稿ではPCとDCCシステムとをUSB接続するために使っている。
左からの2枚写真は、ともに中央にA4判透明ケースにPR3、BDL168 & RX4をまとめて仮設置している。すべてビニールテープで貼り付けただけだが、見栄えは別にして、それぞれが軽量なので問題はない。ただし後述するRX4の4つの相互位置は5センチ以上は離すなどの制限がある。混乱しがちだが、USBとロコネットケーブル(説明のために白と黒に区別した)の関係は以下にようになる。
PC~(USBケーブル)~PR3~(ロコネット白)~DCS50K~(ロコネット黒)~BDL168&RX4
11-02 閉塞区間を作る
鉄道模型を自動運転するには、列車に関するレール上での位置情報(および車両情報)を得なければならない。たとえば、博物館前で停車させようとするとき、どこが博物館前かを列車に自動指示するには、内部的には線路の「セクション5番が博物館」「セクション9番が図書館」「セクション1番が中央駅」というような取り決めが必要で、しかも目的の列車が今どこのセクションに進入したか、出て行ったか知る必要がある。
デジトラックス社のBDL168はこのセクション(閉塞区間)を一個で最大16セクションまで作ることができる。よってその16本の「電力&信号線」をレールにつなげて、ひとつひとつを管理出来るようにする。各区間が独立した制御対象となるには、区間を電気的に独立したものとするために、レール両端を絶縁ジョイナーで接続する。本稿では、片側レール(外周線としておく)に絶縁ジョイナーを設置し、内側レールは全周で共通に扱っている。
↑閉塞区間への電力供給と信号送受
KATO社のユニトラック(レール)は一般的な電力供給ジョイナーも、黒の絶縁ジョイナーも大型で扱いやすく差し替えも容易なので自由度が高い。本稿ではその性質を重用し区間箇所や範囲をいつでも変更できるようにしている。また接続にはKATO社の様々なコード類を用い、随時セクション番号を変えられるようにしている。
以下の各写真はクリックすると拡大写真と説明が出る。
ポイント区間は別扱い
本稿ではKATOのDCS50Kを中心に構成しているので、この電力はDCS50Kの出力・青白フィーダー線で供給している。この青白線は、BDL168からのセクション線とは異なった、純粋にDCC電力・信号線である。写真で明確なように青線を全周共通レールに接続し、白線はポイント部分を独立させたギャップ区間につなげている。
ポイントの数だけ必要となるので、フィーダー線は分岐ソケットを使って配電することになる。
注記
DCCの制御対象となる電動ポイントは、KATO HOユニトラックポイントの、手動ポイントR490(右、左)にDCCポイントマシン(左右・29-098, 29-099)を付けている。取り付けは容易で、動作も安定している。
このDCCポイントマシンは、通常DC用のポイントマシンに比べて、高価で店頭流通は希だが、扱いやすさに優れている。
11-03 BDL168・44ピンソケットへの配線
先に触れたが本稿は「配線」に重きを置いている。本来ならば、自動運転の核はプログラミング諸言語を用いて一定のアルゴリズムを構築し、対象モデルの動きを「物語」として記述することにある。
しかしそれを実現するには、周知のように閉塞区間を作り、その電力・信号線を物理的に整理整頓する必要がある。BDL168の場合、その部分をすべて利用者のハンダ付けを含んだ配線に委ねている。そしてその配線は、一般に複雑と言って良い。
↑44ピンソケットへの配線
↑3枚の写真の左はKATOのアダプターコードの金具を用いて上下ピンを一括してハンダ付けしたもの。右端はBDL168マニュアルによってピンの上下関係が図示された部分である。上下のピンを通している様子がわかる。
真ん中の写真はBDL168配線の全体図で、下方にはDCC電源と制御を兼ねたDCS100がある。本稿は代わりにDCS50Kを用いているが、ロコネットケーブルの配置は同じで、[Zone Common]のRAIL-Aが白線、[Detection Common]のRAIL-Bを青線に変えている。
11-04 RX4の設定
デジトラックス社のRX4とはRX1が4つあると考えれば分かりやすい。
そのRX1とは、デジトラックス固有の「トランスポンディング」とよばれる列車情報採取を行う部品である。一般にはBDL168の4セクションをひとまとめにして1ゾーンとしてあつかい、そのゾーンの上にある列車IDをRX1が返してくる。それをPCで使えば、列車の状態がよく分かる。BDL168が持つ在区間検知はどこかのセクションに列車が居るかどうかであり、トランスポンディング機能は、それがID何番の動力車かがわかる。
そのRX1が4つあって、RX4で、合計でA、B、C、Dの4ゾーンまで識別できる。
↑写真の左端は、BDL168の回り四隅にRX1がそれぞれテープで固定されていることがわかる。RX1の表札を上向けにした位置での丸い穴を、感知線(と呼んでおく)がBDL168の特定ピンから出、穴の下から上に通り、その線は他のRX1感知線と一緒にまとめて(コモン)、DCS50Kのフィーダー線のうち、白線として扱われる。これはDCS100の場合はRAIL-Aへの接続になる。
↑真ん中の図はRX4のマニュアルの一部で、RX4からの8本コードをBDL168のAUX2に接続する説明の為である。写真や図の説明文ではAUX1に接続されているが、BDL168の場合にもAUX2接続が妥当である。(ロコネットの状態を見ると、AUX1接続の場合、E~ゾーンが表示される。BDL168を2つ接続して使ったときには妥当だが、一つの時にはAUX2がよかろう)
↑右端図は、RX4の4つのゾーンを注意深く敷設するための注意書である。まずRX1とRX1とは最低でも5センチ以上離しておく。これは相互干渉を避けるためである。次にゾーン毎の配線の色分けがある。
Aは、茶+赤色
Bは、オレンジ+黄色
Cは、青+緑色
Dは、灰+紫色
11-05 まとめ
以上の配線によってBDL168 & RX4は動く。その様子や制御については別項とするが、JMRIでのテストは、LocoNet監視窓を開けることで、動力車が各セクションに進入し、退出することが画面でわかり、かつ動力車のIDが表示される。
(動力車のIDを得るには、主にデジトラックスのデコーダーを用い、それがトランスポンディング機能を持ち、かつCV61の値を02にするという条件がある)
配線で留意したのは、30W程度の小電力ハンダと、押さえの効くピンセットと、絶縁チューブ、絶縁テープを用意した。また、KATO社のコード類を多用し、ハンダ固定するにしても、接続ケーブルなどの多用によって後で自由にセクション番号を変えられるようにした。
また44ピンへの上下接続はKATOの(24-843)アダプターコードを使って隣接ピンとのショートを避けた。
私が参考にできた配線図や実写にはDCS100を用いたものが多く、DCS50Kでの青白フィーダーとRAIL-AやRAIL-B接続の理解に手間取った。現在はでは、DCS100でのRAIL-Aを白コード、RAIL-Bを青コードに設定することでテストは完了した。
参考サイト
多数のサイトを参照し、深謝する。配線に関する主なものを掲載する。
@ ホビーセンターカトー
@ DCC普及協会
@ CaldiaのDCC Room
@ JMRI
@ Digitrax, Inc.
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