小説木幡記:司書達と二流小説家
昨日は縁あって様々な図書館に勤める司書達と席を同じく出来た。考えて見れば随分多様な世界だ。大学博物館図書室、専門図書館、大学専門図書館、公共図書館、学校(高校)図書館。
隣席になった方が小説好き(みんなそうなのだが、物には限度があって、限度を超えた人)で、余がぽつぽつ話す小説は大抵ご存じだった。
「いま、二流小説家というの、読んでいますが、筆名が沢山あってSFやポルノやミステリやとジャンル毎に別名を持っていて、それぞれが売れない悲しい商売です。比較的好評なのがヴァンパイアー小説で、この場合は女性名で出しているわけでして。ところがどうしても顔写真が必要となって、仕方なく母親の衣装を着て、つまり母親のコスプレするわけでして、……」
「ほお。先生も、そういう小説がお好きですか」
「? 抱腹絶倒なのは、家庭教師している高校生のこましゃくれた少女がいて、この女子高生が主人公の二流作家を引きずり回すわけでぇ~」
「セーラー服と機関銃、のノリかなぁ」
「たとえば主人公が犯人扱いされると、『絶対に母親のコスプレしたって、言ってはならない』とか細かく注意したり、金持ちの令嬢だから、速攻で最高の弁護士を雇ったりとか、~」
「ふむふむ」と、ネットで某所を検索し出した。どこを調べたのかは余にも分からなかった。
「えっと、現在京都市の図書館では分館全部で4冊しか所蔵していません。その4冊への貸出予約が、えっと、40件を越えていますね。先生、それって人気ありますよ」
「こんなおもろい小説が、政令指定都市なのに、4冊ですかぁ?」
「……。ともかく、読まれたら京都市図書館に寄贈してください。その前に、私がまず読ませていただきます」
余は宇治市民だが、京都市の司書にそこまで頼まれると断ることもならぬので、正月明けに寄贈すると、酒の上での口約束をしたのかどうか、おぼろ。
~
そういえば、その夜は見かけなかったが、小学校の校長さんに頼まれて、小学校先生採用だったのにいつのまにか図書室の切り盛りを全部任されている人もいる。
余は司書達とはなにかと縁があるようだ(笑)。
余だけは売れない虚業「センセ稼業」をしているので、司書という実業者達と話す機会があると、背筋がぴんと伸びる。さて、来年もがんばろう。
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