九州2011夏:福岡篇:太宰府天満宮の九州国立博物館
太宰府天満宮に早朝に到着し、麒麟像を眺めたとき、『月の影 影の海:十二国記/小野不由美』を思い出した。この長編シリーズでは「麒麟」は一国の宰相を意味し、実に重い役割を持っている。そしてまた魅力的な設定なので、ときどき思い出す。日頃はビール会社のマークでしか眺めないが、こうして間近にみてみると随分荒々しい動物に思える。昨日の授業で、空想動物の分類というテーマが学生から上がっていたが、こういう空想動物にはキメラが多い。麒麟だと、龍と馬との合体かと想像した。で馬は現実だが、龍はまた空想の物だ。歴代中国では龍とは皇帝をさしているから、空想がいつのまにか思想になって現実と虚構の垣根を越えてしまっている。
天満宮に祀られている神さまは菅原道真(すがはら・みちざね):菅公で、藤原家との政争に敗れ、ここ九州太宰府に左遷されたお方で、歴史上実在した人が神様になっておられる。なぜ太宰府に来ることが左遷なのかは、都を中心にして考えると、都からの距離によって中央政治での権力に強弱が生まれるのだろう。本当は、太宰府は第二の都といわれるほど当時の日本にあっては格式の高い地域だったが、政治の中央ではないから、頂点近くまで上り詰めた菅公が、九州へ行くと言うことは、後のない懲罰人事を受けたことになっている。藤原氏専権のよい事例であった。
さて、菅公といえば、京都の北野天満宮を親しく思い出す。というのも、高校時代の友人知り合いの多くがこの北野の天神さん地域から来ていたからだ。京福電車(嵐電)でいうと北野白梅町駅が通学路の起点になっていた。天満宮は、太宰府天満宮、北野天満宮、大阪天満宮などを代表として日本各地に沢山天神さんが祀られているが、現代は学問の神様としての性格が強い。往時は、菅公の祟りを鎮める意味が強かったらしい。そんなこともよく知らないままに、北野の天神さんの市に出かけた記憶がある。祖母が毎月25日の天神市を楽しみにしていたから、何度か一緒に行ったのだろう。そして、友人達の家へも遊びに行っていた。~
だから、九州太宰府天満宮は、まるで、本当に親戚の家を訪ねるような親しみを持っていた。遠隔地だから、今回は三度目のお参りにすぎないが、鮮烈な記憶や、疑似記憶に包まれているので、毎年お参りしているような奇妙な思いにひたって、今年の夏も訪ねた。
その境内から、十年近く前に開設された九州国立博物館への経路、歩くエスカレータが造られていた。
九州国立博物館について、同行のJo氏は手厳しい評価を参考にあげたJoBlogに残している。で、私はその説に賛同する。しかし理屈で賛同するのと感性で愛着を持つのとは、別のことだと思った。たとえば、天満宮から博物館に至る長大な歩くエスカレーターや建物は、まるで往時の箱物行政の悪弊、バブルの残滓に近く、批判は当たっている。あたっては居るのだが、一方「常にいつも世間から無駄と思われる図書館や博物館に、これだけの資金をかけ、思いを込めている」というプラスの評価を私は持つ。
本当は、建物を立派にし、芸術家である建築設計者の意図を尽くすほど、後日膨大な水光熱費に税金を投入せざるを得ない実情もよくわかる。しかし、貴重な税金を図書館や博物館に浪費することに、私は国の成熟を味わう。本当に貧しければ、人は米やパンにしか目がむかない。図書館や博物館が順調に開館している間は、その国にとっては「平和」があると考えて良い。
~。
様々な思いにひたった。Jo氏のいう「レプリカが多い」という話も、実情はそうなのだろう。後発の博物館としては、時が必要なのだ。東博や京博や奈良博が秘蔵の国宝を、たとえ九州にゆかりがあるものと云え、九博に管理替えするとは想像も付かない。実情は分からぬが、九博は一人孤独にお宝を集める苦難を背負って誕生したといえるだろう。
~。
などとすべては想像にすぎない。
想像でないのは、相変わらず撮影禁止が多かったことだ。これこそ、Jo氏とともに憤怒の思いで早々に館をでた原因だった。多くの人は自分の目で見て対象を味わい確認する。私はすでにカメラファインダーを通してでないと対象を把握できない慣性にある。つまり、カメラでみないと物を把握できないのだ。その私にとって、肉眼でしか見ることを許さないという措置は、ばかばかしくて話にならない。国のお宝を国民や訪れる者が記録に残せないというのは、一体どういう了見からなんだ!? カメラ・フラッシュがレプリカを傷めるって? 販売パンフレットの売り上げが落ちるって?
あははは。
~
もうよそう。
参考
JoBlog:築紫紀行(9) 太宰府天満宮
太宰府天満宮
JoBlog:築紫紀行(10) 九州国立博物館
九州国立博物館
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