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2011年9月 4日 (日)

NHK江(34)姫の十字架:負い目と誉れ

承前:NHK江(33)徳川の嫁:三成という人

 女性故の辛さを今夜のドラマで味わいました。
 つまり、女性は結婚したとき、一般には嫁ぎ先の「人」になるわけです。それは生家の考えや風習や行動規範を婚家先の意向で、引き剝がされることを意味します。現代だと、可能性が広まって、二人で新たに別所帯・一家を立ち上げて、新たな文化を創っていくことも多いわけですが、当時の状態では、男系に絡みとられるのが普通だったことでしょう。例外的には婿養子の制度があります。

 浅井(あざい)の三姉妹はどうなのでしょう。
 長女茶々は豊臣の子を産むことで、本来なら豊家にどっぷり絡め取られるはずですが、秀吉亡き後、女性として背筋を伸ばしていきます。これは正室おねさんが京都に去った今、淀君は豊家というよりも、母として息子秀頼を守る立場に立ったことを意味します。

 次女初は、京極家に嫁入りしましたが、まだ子供はいなようです。小姑として亭主の姉(もと、秀吉の側室)が居ますが、いまのところドラマ上での軋轢はありません。これは、婚家の亭主そのものが、徳川につくのか石田三成に付くのかの瀬戸際にたたされたのが、焦点です。もし徳川につくと、初は姉淀君との関係が難しくなり、石田三成に亭主がつくと、江との関係が難しくなります。

 江は、これが一番の大問題です。
 亭主の秀忠の言うことを聞かざるを得ない立場ですが、その秀忠がオヤジ家康に絶対に頭が上がらず、ずっと長い間、アパシー状態(病的な呆然自失状態)なので、江のやきもきすること限りなしです。
 その秀忠に、家康は3万余の軍の総大将として、会津の上杉追討を命じます。そして、側近には、「一番手強く厳しい戦とは、息子に任せ引き継がせ、自立をみとどけること」と、漏らします。
 この話は、男性故の辛さです。

 信長の姪たる江は、気弱になった秀忠に母からの形見、信長の天下布武印判を守りに渡します。そこで秀忠は初めて、信長に憧れをいだき、その姪の江と結婚できて嬉しいと言います。これは江にとって、誉れでもあり、逆に重い重い重荷、あるいは信長ほどの姪としてやってこれたのかどうかという「負い目」ともなります。
 嫁いだ先で、徳川の風習や考えに随い、誉れと思う信長の姪である自覚が一歩間違えばものすごい自信喪失にもつながります。これは秀忠が、オヤジの名が上がれば上がるほど引きこもりたくなるのと、同じ心理です。

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 そして今夜のドラマで一番泣けたのは、細川ガラシャ夫人のことでした。
 すでに15歳の息子は大阪から江戸の徳川家に人質として送り込まれています。さらにガラシャ夫人は、亭主の細川忠興が徳川についていくかぎり、留守の大阪で事変が発生すると、どうなるかも分かっていたことでしょう。

 名将明智光秀の娘・玉子として細川に嫁ぎましたが、実父光秀が信長を討ったあと、亭主忠興はオヤジ細川幽斎の意向をうけて、光秀を見殺しにしました。そして謀反人の娘である玉子を京都府北部の寒村へ追放したわけです。玉子としては自分の亭主や義父の意向で、実父を見殺しにした思いが残ったことでしょう。そして今、石田三成が大阪に入城し、毛利を立てて徳川追討の計画を実行するに及び、徳川に付いていった武将の奥さんや子供をすべて大阪城内に引き連れ、人質として構えます。
 ガラシャ夫人(玉子)の死は、そのときのことだったのです。

 もちろん解釈はいろいろあるようです。細川忠興は事変があれば、部下にガラシャ夫人を殺すことを命じた。あるいは今夜のドラマのように、ガラシャ夫人は忠興の気持ちが揺らがぬように、人質になることを避けた~と。
 どちらにしても、明智玉子さん=ガラシャ夫人の生涯は、厳しいものでした。なにかしら、女性である故に、婚家の事情に左右されて、悲劇的な半生と死を迎えた、と今夜のドラマで感じ入った次第です。

 では来週。
 いよいよ、三成さんの退場が近づいてきました。なにやら寂しいです。

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