小説木幡記:対象情報世界の整理整頓
ある科目では、夏期休暇を有効に使えるように、七月のうちに仲間をつのってグループを編成する仕組みをとっている。事例では6~7人班を8つ組むので、総数50名以上の学生対象だ。
この班編制については、様々な工夫を20年間近く経験してきた。最初は名簿の順番に切り分けてきたが、それが拙いことも分かってきた。だから数科目ごとに方法を変えるようになった。極端なのはおみくじである。事前登録制や、こちらで選んだ多様なテーマへのエントリー制や、班代表の事前指名制~。いろいろ経験した。
で、いろいろやっておくと、学生達も仕方なく(笑)、班に帰属し、がんばろうとしてくれる。その気持ちを上手に消化できない学生は不満をもったまま青春を過ごす。気持ちの動きをどう制御するかも、学生の資質なんだろう。つまり、向くか向かないか、合うか合わないか、~ただそれだけのことだ。教師が諭す必要はない。「ほぉ、そうですか。それは残念」と突き放すのも教師の仕事。
今年は7月に50数点のレポートから、8つのテーマが選ばれた。関係上級生(葛野図書倶楽部2001の助勤達)5名と余とで合議した結果だ。この合議に至る模様も実況放送すれば、以前どこかの政府であった、予算項目仕分けだったかな、それに似て阿鼻叫喚、怒号とびかい、ちゃぶ台替えしが頻発する激しい論議であったなぁ。
数日たったあとも余の耳を離れないセリフは異口同音、どの助勤も余に反対するいい口は、
「センセ、こんなテーマ、学生、誰もついてきませんよ!」
今後数ヶ月間、6~7名の受講生達が調査し、まとめていくテーマだから、たしかに受講学生の好みに合うのは大切だが、そこで余と上級生達は大抵反目する、意見が異なる。余は極めて学術的なテーマを重くおもうが、その世界に偏りすぎると、最初の段階で挫折する班が多数生まれる、というのが助勤達の意見だった。
たとえば過去、余が高尚な「邪馬台国問題」を扱ったレポートを選ぶと、歴代助勤達はほとんど反対した(笑)。余が極めて難解アカデミックな「鉄道図書館列車」テーマを選ぶと、全員が反対した。要するに、余が「良し、これは最高に良いテーマレポートだ」と思うものは、ことごとく否決されてきた、長い歴史がある。
現実でのすりあわせは必要だ。
お互いが強権をふるってもだめだし、怒声で相手を威圧してもいけない。相互に恨みの残る方法は佳くない。ということで、余が5名の助勤達に妥協したテーマは、以下の8点であった。
さて、この複雑怪奇な情報群が整理整頓されて、レファレンスブックとなるのは年末年始だ。どんな結果になるのだろうか。
1:ジョジョの奇妙な冒険 第3部についてのレファレンス
いつ終わるかよくわからない漫画があるそうだ。ジョジョという家系を扱った巨大漫画を、第3部限定でまとめるとのこと。
2:マオリ族の刺青
ニュージーランド國のネイティブ文化を整理整頓するとのこと。そこでの「刺青」は文化の表れらしい。
3:攻殻機動隊~登場する多様なキャラクターのゴースト~
甲殻ではなくて、攻殻と書くらしい。機動隊とあるが、警察小説ではない。キャラのゴースト、と言われても~。
4:作家西尾維新の作品について
幕末維新のことか、あるいは現代関西の政治組織のことか、と思ったが、そういう実在作家がおられるらしい。東野幕末とかいう作家もおるかもしれんのう。
5:蝶と蛾の違いについてのレファレンス
蝶のような女、蛾のような女、~。そういう話ではなさそうだ。蝶と蛾って、どう区別するのだろうか?
6:日本の海藻について
海藻シャンプーの事ではなさそうだ。余は海底二万マイルという映画や小説で、海藻好きになった。
7:宇賀神について知りたい!
古い神さんがおられて、秦氏(はたうじ)とか伏見稲荷とか、まるで銅鐸銅剣の分布と同じで、神さんの分布があるらしい。
8:妖怪について
どういう妖怪を扱うのかまだよく知らないが、夏休み中には決まるのだろう。
ということで、今年も、受講生や助勤たちにとっては、暑い夏になりそうだ。屯所には、ジョジョが山積みされて、攻殻のDVDやBDが散乱し、嘘入れ墨がはやって、維新倶楽部ができて、~蝶か蛾のような大明神が長い髪に海藻を巻き付けて妖怪じみた踊りをするのかも~暑くって長い夏だぁ。
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