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2011年3月21日 (月)

小説木幡記:東北関東大震災の記録(6)黙祷やPTSDの深層

Muimg_52471.立場の違い
 このたびの大震災は2011年3月11(金)の午後、14:46分に発生した。それから10日経った。TV画面にも棺が見られるようになった。
 余が一年前に、自分の疾病に呆然自失・臨死体験を味わったのと、少し似た気分をこの10日間味わってきた。日常のTV画面の中に巨大な真っ黒な津波が被さって、再び目覚めぬままに棺に横たわる風景は、この後一生忘れることはできない。

●黙祷やPTSDへの違った思い
 7日目の被災地TV実況中継では、黙祷が行われた。しかしまだ肉親や友や知人を捜している人にとっては、黙祷が難しく感じられたようだ。実は、余はこのことが直前まで分からなかった。黙祷は全ての人が自然にできて、また悉皆するものだとずっと思ってきた。しかし、いまだに黙祷を出来ない人がたくさんいて、その気持ちを癒すには時間がかかることを知った。

 またこういう大災害では多くの人が罹患する「PTSD:PostTraumaticStressDisorder心的外傷後ストレス障害」について、人間の心は外からの打撃で傷を負い、時間をかけて何度も苦しみを再現するという、当然の状態を回りも理解する必要がある。そしてまた通常の鬱状態と同じく、場合によっては回りからの励ましが続くと余計に本人が暗澹とし、苦しみを増すことも知っておいた方が良い。
 そこまでは余も以前から理解し、教師としていろいろな場面で心がけてきた。

 しかし今朝の産経新聞のコラムで意外な事実を知り、目から鱗がおちた。阪神淡路大震災のあと、PTSDの専門家と新聞記者が現地で被災者にインタビューして、記者が教えられたことは、PTSDに隠れてしまい、あるいは紛れたことを一緒くたにすると、余計におかしな事になるという記事だった。一番わかりやすくて、単純なことをメモしておくと、
事例:被災者が、「心配で、辛くて、眠れなくなり、心身が壊れそうだ」と言った場合、その考えられる原因として、
 1.PTSD
 2.家が壊れて住むところがなくなり、仕事が出来なくなり、先のことを考えて不眠症になる
 
 この二つ以上の原因があることを予測する必要がある。心のケアをする専門家は1についてはプロとして十分対応していけるが、2については、その被災者が不安なく新居を入手し、あらたに職をえられるように措置することが急務であり、それは心の医師に出来ることではないという、考え方の転換が必要だという事例である。ところで、

b 被災者生活再建支援対策
~一定規模以上の自然災害により住宅が全壊するなどの被害を受けた世帯に対して被災者生活再建支援金(最大300万円)が支給される。平成21年度における被災者生活再建支援法の適用災害は表2-2-4のとおりである。
 この支援法では300万円が支給されるが、これだけでは不安はなくならない。子ども手当とか高校無償とか、いろいろな新しい予算は合計で4兆円規模らしいが、予算の有効利用から考えると、復興支援のための増税の前に、これまでの予算案の見直しが必要だろう。

2.気付いた事
 TVや新聞や、そして自分自身のこの10日間の考えから、いくつか課題を見いだした。今は当たり前に思えているが、後の思いにこれを記しておく。

●破壊された湾口防波堤: 想像の限界まで対処しておかないと、全て無駄になる。
 東北の太平洋側の港湾にあったすべての湾港防波堤が破壊されていた。世界一と言われた、海底60mの深さから波の上にまで築かれた防波堤が完膚無きまでに壊れていた。これはマグニチュード8.5対応で作られた。だから、9.0の地震と津波が襲えば、世界一の機能がゼロになってしまう。
 ただし、これまでの中規模の津波には十分役に立ってきたのだろう。

●ビルの上に載る船舶: 津波の高さは想定を大幅に超える。
 余の記憶では実際の津波はせいぜい数メートルの高さで大津波だと思ってきた。今回は、平均して10mとなり、場合によっては20mを越えたようだ。
 水はこのとき暴力そのものだ。電車が数両横転し逆さまになりくの字に横たわっていた。自動車が逆立ちし、これも民家の屋根に載っていた。
 昔話や過去のニュース映画で見た津波は去った痕のものだった。このたびは、TVの中継で川をさかのぼり平野を襲う津波を10分以上、繰り返し見た。

 アメリカの竜巻には各家庭で地下待避壕があった。津波の待避壕のようなものを今後のために考案する必要がある。防波堤は景観、自然環境を壊す可能性があるから、視界を遮るほどの巨大なものは建造が難しいだろう。海辺や海河川の市町村は、役場を必ず高層にし、ところどころに海面より10m以上の高さになる丘陵公園を設ける必要がある。いわば避難人工丘陵の設置だが、土木建築的にどのくらいの予算がかかるのかは調べないとわからない。

●原子力依存、電力依存: 天井周壕や水力発電
 まだ福島では原子炉周辺への放水や冷却が続いている。この事故が無ければ、政府も関係者ももう少し地震・津波の復興に力を注げた事だろう。明確なのは、地震・津波の災害は天災だったが、原子炉冷却失敗問題は明々白々な人災だったと言える。
 防護システムの致命的決定的設計ミスという人災につきる。
 耐震や封じ込めについては言及しない。冷却についてだけメモすると、冷却を電力モーターとポンプという実に現代的な精緻なシステムにしたことが問題なのだ。

 たとえば自衛隊あるいは一般的な軍は、師団レベルか連隊レベルかまでは知らないが、10000人規模で「独立した、他の世界にたよらない」仕組みになっている。これを成り立たせるのが一つは兵站(へいたん)という物資人資源のたゆまぬ外世界からの補給だが、兵站が途切れても、長期間籠城するだけの仕組みがあるわけだ。
 今回の冷却システムは電気に頼るから自分の所の原子炉か他の電力会社に頼るわけで、その間バッテリがあっても、配線が切れたり、送電が止まれば一日程度しか冷却できなかったと想像する。

 実情について、ぐちゃぐちゃ記すのは止める。
 根治療法が必要なのだ。
 津波や地震に対して、コンピュータや電気やガスや精密な絡繰りに依存しない単純明快な冷却防御装置をメモしておく。
 原子炉のある区域に巨大な周壕を設けるわけだ。
 前方後円墳のように回りを水に取り囲ませる。(放射能を海や川に拡散させない閉じた周壕)
 周壕は耐震性のもので地面より高い。つまり周壕の回りは万里の長城のように囲ってある。
 冷却事故があったときは、そこに水を注ぎ込むか、中央にある原子炉システムが沈むようにするか(防波堤をを決壊させるような方法)、単純な方を採用する。

 今回は自衛隊や消防庁、機動隊から放水機能を持った大型機器が運べたが、輸送や準備に時間がかかった。周辺道路がもっと破壊されていたなら、空輸せざるを得ないが、それだけ大型機器を放射能の中で迅速に運べるヘリコプターがあるのかどうか、こころもとない。

 それで。
 原子力依存の妥当性はまだ考えがまとまらない。安くて力強い原子力だが、広域的に危ないことに変わりはない。
 ダムによる水力発電の復帰を考えて見る。

3.被災者移転、戦車やロボットの活用
●被災地への救援物資や援助と同じく、被災地から他の都道府県に移転する方法が数日前からニュースになりだした。被災者のコミュニティー温存と、心理的な剥奪感の減少とが課題となるだろう。

 前者は、仲良しグループを温存するだけでなく、被災者は医療風呂食事冷暖房が整っても被災者であることを速攻では免れない。他の地域のホテルに移っても、最大限の支援が必要で、それには「まとまり」がないと支援が有効に動かない。
 後者は、故郷を捨てたり、まだ発見されない行方不明者をのこしたまま、被災地を離れることの困難さだ。これは説得と、心的保証が必要だ。心を支えるには、故郷を離れても直通連絡の整備や再建計画の広報を必要に応じて入手できるようにするシステム。

●戦車やロボット。
 TVや新聞をみていると日本にも戦車はあるし、災害ロボットも実用的なものがある。前者は鉄板での放射能防御と力持ちを見込まれて、昨日あたりから動き出した。使えるのは自衛隊という匠集団がいるからだ。
 しかし後者の災害ロボットは、分かっていても使いこなせないようだ。被災地が混乱しすぎて、新しい概念やスキルを必要とする道具を、地元で有効に使えない。もったいない話である。

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