小説木幡記:東北関東大震災の記録(3)
◎ 被災地のこと
東北で避難箇所が2500あまり、そこにいる被災者が45万人とNHKのニュースで聞いた。死者や行方不明は日々刻々と変化するのでよく分からないが、合わせて2万人近くになった。
45万人といえば、木幡のある京都府宇治市が20万人弱だから、その倍以上になる。金沢市や長崎市が大体45万人である。要するに、金沢市の全部の人が、今夜東北では寒さに震え、腹を空かせ、板の間の体育館や公民館に横たわっていることになる。それが最低数週間続く~。
45万人が住む家を無くしたり、あるいは住むことが難しくなった状態というのは、一家族四名としても、10万軒の住家が使えなくなったという単純計算が成り立つ。その10万の家を取り戻さねばならない。新たに、どこにどう定めるかが、今後の復興に関わってくる。当然だが、だれか代表やトップが全部まとめて考えて、その要件の一つ一つをさらに別の人が考えていかねばならない。
10万軒の家が津波や地震で無くなるのは一瞬だが、それらをどこかに設営し、誰に入ってもらうのかを考え、そこまでバスや電車で案内し、……。と段取りをくみ上げるのは大変なことだ。
しかし被災者にそういう労苦を上乗せするのは絶対にできない。
◎ 東京電力のこと
福島第1原発の1~4号機、その全部が爆発や火災を起こし、放射能が拡散し始め、すでに半径20km以上の圏外への避難が始まった。このことで今、復旧に多くの人が命をかけている状態なので、いい加減な一家言は厳に戒めねばならないが、それにしても記録せねばならぬ、と思った。
まず、数日間TVをみているかぎり、東京電力の発表が最初は「楽観的」で、あとでこっそり「事実」が公開される。それが次々と重なるから、情報公開制限をしていることが、明々白々となってしまっている。情報公開の制限は必要なこともあるが、日本社会の場合は大抵「情報隠蔽」そのものと同義である。要するに、姑息なのである。すぐに底の割れる嘘をつく、と言い切った方がわかりやすい。
それと。当番というか輪番停電、「計画停電」の施行が関東でなされだした。一番の失敗は、茨城県の被災地もあっけなく巻き込んだことだ。さすがに2日目からはそれを外したが。決定が二転三転し、優柔不断というか、ばっさりとどめを刺すことが出来ない停電を繰り返した。
ところで物流や人の移動に大切な電車まで止めて、被災地まで直線引くように停電グループにいれて~、そして真の情報公開が遅れに遅れた。これは、なにかしら頭はよいが根性のないキャラクターを露骨に示している。小役人タイプの人が東京電力の中枢を固めているような印象を受けた。
小役人でも秀才でも侍でも、企業にどんな人がいようが、それはあずかり知らないことだ。しかしながら、その中枢に居る人達の総意によって、会社や組織の動きも、決定的に定まってくる。そして決定的な失敗をしてしまう。今回の東電の動きをみていると、そのような印象を受けた。
願わくは、気持ちを入れ替えて、覚悟性をもって、奮起していただきたい。
◎ 原子炉設計のこと
原子力工学の先賢には申し訳ないが、聞けば聞くほど馬鹿げた防御・制御システムだと感じている。原子炉を止める工夫と閉じこめる工夫は今回分からなかったが、原子炉を冷やすことについては、どうしてもひと言記録しておきたい。
結果が致命的な対象ほど、複雑怪奇なシステムを持ち込むのは良くないと、分かっているはずだ。冷やすためになぜ電気を必要とする電力モータでポンプを稼働させたり、燃料を必要とするディーゼル自家発電システム、要するに現代技術を使うのだろうか。おそらくコンピュータで制御しているのだと思うが、原子炉のような危険なシステムを冷やすのに、地震で壊れるような複雑な防御(冷却)システムは、無駄だと思った。
実情はしらないが、ポンプを使って水や海水で冷やすなんてシステムは、どうにも信じられない悪手だ。こういう先端システムを考える人達は秀才だからこそ、複雑な現代利器を使って構築するのだろう。単純に、人口湖や池を造って、原子炉をその水面下に造って、最悪の場合は手で蓋を開けて水漬けにするようなシステム、あるいは昔の宮殿噴水のように、落差を使ってモーターなしで水漬けにする方法をとらなかったのだろうか?
上記の考えが素人考えと誹謗されてもよいが、これは人災だと思った。最初はマグニチュード9なら仕方ないと思っていたが、4つの原子炉が次々と似たような事情で壊れていくのを見ると、欠陥システム設計という点で人災と言わざるを得ない。世界中の原子炉が電気ポンプで水を巡回させる方法をとっていたとしても、なにも日本のシステムがその通りする必要はないだろう。(通常はモーター水冷システムでもよいが、危機的対応時の話)。
| 固定リンク
「小説木幡記」カテゴリの記事
- 小説木幡記:楠木正成のこと(2013.06.07)
- 小説木幡記:腰痛と信長(2013.05.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント