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2011年3月24日 (木)

小説木幡記:インセプション・心の旅路

Muimg_5184 日本公開されて一年にもなろうか、やっと映画「インセプション」を木幡で観た。感想は、上出来だ、ということになる。数日経った今朝は、映画のあらすじやキモを縷々記すことはせぬが、さわりくらいは忘れぬ間に、~。

 小道具として、夢幻(無限)に続く合わせ鏡があって、これはらっきょの皮むきと同じで最後は空虚になる。あるいはエッシャーの無限階段のような~。入れ子になったマトリョーシカ人形をおもいだしたり、再帰的なサブルーチン・コールが無限ループに陥って戻れなくなり、荘子の蝶蝶の夢世界を思い出したり、全てが余の好みの世界だった。そういう世界を渡辺謙やディカプリオが演じるのだから楽しめる映画として余の中では最上位にはいる。

 アクションやSF的華麗さに目を奪われたが、つまりは「心の旅路」がテーマになっていて、ものすごい悲しみの圧力感にうちひしがれた。そういうシナリオ、全体構想からハリウッド映画の実力を堪能できた。あっという間に終わったが、実際は二時間半の長尺ものだった。
 心の旅路といったが、行きは睡眠で、旅路からの帰路は音楽やショックや死があって、音楽やショックは残念ながら夢を仕込んだ人が設定するものだから、セットされた本人には分からない。夢の中の行路者自身が主体的に夢から覚める方法は自殺や他殺を問わず「死」以外はない。そこに悲劇がある。
 小道具として「トーテム」がある。なにがトーテムかは映画を観てのお楽しみ。要するに夢か現かを判定する道具なのだが、これが映画の最後で上手に使われていた。

 人生の悲しみを味わった。今生きていることは夢なのか現実なのか、よく分からなくなった。しかし「現実」というものも、高度に自己存在を認識する人間だからこそ現実が主体の中にあるのであって、人間以外の生命体の意識には「現実」と「夢」の区別は無いのかもしれない。生命体として存在しているか(活性)、生命体としての仕組みや絡繰りが油切れを起こしてばらばらになったか、それだけの違いとも言える。で、そういうことが本当かどうかと考えていくと、この映画「インセプション」のおもしろさとか凄さがあらためて切実に分かってくる。

 思い出せば他にいろいろ気持ちは高ぶるが、今朝はこのくらいにしておく。

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コメント

夢と現実が入れ子のようになった世界をあてどなく巡るという物語であれば、ぜひ「うる星やつら ビューティフルドリーマー」をごらんになってください。一部では「インセプション」の元ネタかとも言われているようです。監督は「スカイ・クロラ」の押井守です。
日本のアニメといえば、「ナウシカ」とか「カリオストロの城」とか「トトロ」とかが上がってきますが、ある種哲学的で難解な「ビューティフルドリーマー」こそ、日本のアニメの到達した一つの極点だと思っています。
Muさんの好みに合わなかったらごめんなさい(笑)

投稿: morio0101 | 2011年3月25日 (金) 02時12分

もりおくん
 意外な反応ですね。こういう子ども子どもした世界はお嫌いかと思っておりました。Muは十代からSFが一番すきなジャンルでして、いわゆる少年少女文学は欠落し、SFから入りました。当然映画もSFです。

 で、SFといえばこういう悪夢悪夢したものが十八番(おはこ)で、古くはプリズナーNo6(最近リメークですか)、いろいろあります。某O氏がすすめてくれたCIAものもこの系列でしょうかね。

 さて、うる★はずっと観ていたつもりですが、おっしゃる内容はどこかに記憶があるのですが、らんちゃんのお笑いにだまされて深刻に観たことがないので、見過ごしている可能性があります。そういえば押井さんの甲殻もなにかしら、夢か現かものですなぁ。

 うる★はわかりましたから、もっと他にあったら、どんどんリストして教えてください。余生は「夢か現か」しか残っておりません。

 それにしても多層識の色即是空というかアラヤシキの底の底まで夢見るSFちゅうのは、すすんでおりますな。

投稿: Mu→もりお | 2011年3月26日 (土) 14時13分

SFは嫌いではありません。三月からwowowで「攻殻機動隊」の全話放映があって、最近はそれを熱心に見ております。ハイビジョン&5.1ch化された世界を楽しんでいます。そしてタチコマのフィギュアがどこかにないか、探してます(笑) 26日より「攻殻機動隊」の3D映画も公開が始まっていますし、しばらくはこれに浸りそうです。
こちらこそおもしろそうなのを教えていただきたく思います。

投稿: morio0101 | 2011年3月27日 (日) 03時15分

 士郎正宗さんの作品を昔よく読んでいました。
 最近は、SFなのか実話なのか学術なのか、とんでもない図書にこっています。

 破壊する創造者/フランク・ライアン (早川書房)

 これはアニメや映画や小説や、要するに快楽エンタメをすべて凌駕する破壊力ですよ。ちょっと2500円と高額ですが、たまらないです。

 テーマは「ウィルスがヒトを進化させた」
 多くのウィルスによる感染症は、これまでいつもやがては共生する(ヒトが死ななくなる、発病が軽微になる)! らしいです。

 これはつまり、人類史のさまざまな局面で、昨日のヒトが明日のヒトとは明確に異なってきたようです。それは、ウィルスの遺伝子と人の遺伝子が融合して、ヒトが別の生物に変わってきたかららしい。大抵は、初めてのウィルスで、寄生された宿主は絶滅に瀕するらしいですね。それを生き残った宿主はウィルスと共生し、すでに遺伝子構造が変わってしまっているとのこと。たびたびあるらしいです! 100年単位の進化。

 怖くないですか?
 で、ヒトゲノムの、最近まで無意味と思われた部分(95%以上の部分)が、実は過去の多種のウィルスの遺伝子の遺物らしい。その中には完全なものも多数あって、ただ「停止」コードが効いているだけのものもあるとか。

 うわぁ~。私もmorioさんも、ヒトじゃなくて、ウィルス・キメラだったんだ。

投稿: Mu→もりお | 2011年3月27日 (日) 10時01分

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