小説木幡記:個性と没個性
▲葛野でも企業説明会
最近葛野で三日間連続の、企業セミナーがあった(ようだ)。実際に会場に入ったわけではないので、様子はわからないが、新卒者採用のためのセレモニーが本学でも始まった。まだ学生達は3年生の者が多い。さて、一般論として自分の通う大学で沢山の企業がまとめて説明会を開くのは、気持ちにゆとりも生まれ、よい企画だと思った。ただ、二三聞いて見ると、ここには「説明」の人がやってきて、採用に直結する面接というか、より個人的な面談はなかった(と、聞いた)。
まとめて面接してあれこれ決めていけばよいのにと思ったが、企業には企業の論理とか掟があるのだろう。組織が人ひとり雇うと、その一人分とは維持費を入れて本人に手渡す給料の2~3倍かかるそうだ。たとえば年収300万円本人が受け取るとすると、総額1000万円近くの出費になるのだろう。
ならば、余を養うのに大学は数億円かかっておるのかのう(うけけ、嘘ですよ!)。
▲今日は企業の味方する!
さて今日は企業の右肩を持とう(その次はきっと左肩を踏みつけるにきまっておるが)。社長になったつもりで、人を採用することを考えると、採用に失敗すると年間1千万円をどぶに棄てるようなことになる。まして、2年間くらいは初心者運転で、おおめにみてそれでも給与ボーナスをちゃかちゃか支払って、さて3年目にようやく「一人前になったかな」と、思ったとたんに「一身上の理由で辞めます」と言われると、うむ。もちろん物事現実世界ではなべて歩留まりという考えがあるから、最初から半分は棄ててかかって、計算し心つもりをしていると言っても、そういう人の心の事情、都合に左右されるのは計画性や採算性の上からは、しんどいだろう。
だから、昔は露骨に「たこ部屋」とか「年季あがり、借金返すまでは、奴隷じゃぁ!」とかいう考えが社会に大手を振って通用しておったのだろう。ああそうだ、今は知らぬが、昔は防衛とか軍の教育機関は学費免除・給金付きで若者の面倒をみたそうだ(笑)。で、ようやっとまともな軍の指揮官卵に成長したなぁ~と思ったとたんに、「私、戦争は嫌ですから、普通のサラリーマンになります」と、言われると、これは税金がかかっておるから、まことに難しいなあ、防衛大学任官問題。
▲会社の正義
というわけで、今日のところは採用する側の正義を推測しておる。
実際に、仕事とは難しいものだ。なまなかの根性では自分を喰わしていく対価を得るのはしんどいことだ。余など生まれた時から、人から「Muは遊んでばかりいる、怠け者め」と言われ続けてきたが(本当)、人の実情は親知らず、じゃなかった、人のことは分からぬもので、その間余がどれほどの艱難辛苦にたえてきたかは、誰も知るまい脳、皆の衆(笑)。たとえば、仕事でシステムを設計制作したとき(20代の終わりかな)、余は何年間も日曜祭日休日なんか無い世界で、泣きながら一日13時間、キーボードにむかっておった、ぞ。中年の頃、ある関係プロジェクトが無事終わって一ヶ月後に余は体重が3キロ増えていた(つまり、元にもどった)。
だから新しく社会に羽ばたく若者ズよ、社会にでて普通の給料をいただくということは、人間関係がどうのとか、お友達ができるできぬとか、毎日気持ち良くはたらけて回りにもかっこよく見られる~、そういう極楽とんぼみたいな考えはまるっきり通用しないものなんだ。40年後、「ようやっと、いのちからがら逃げ帰った。同僚たちの多くが戦死した」と、呟くような世界かもしれない。だからこそ、いましっかり自分を鍛えなされ。見方を変えれば、仕事はスポーツにも通じる。
▲個性はどこに~
さて。
そんな中で黒服、スーツ姿はまるで喪服に見えた。もちろん黒や喪服が極端に似合う人はいる。
しかし没個性の黒、白いブラウス、モノトーン。企業も若者達も、なんだか、端から見ていると大芝居を打っているようで笑ってしまった。つまりここ何十年間も、世間では、やれ個性の、オンリーワンの、ひらめきの、耀きのと、お互いに言っているのに、肝心の正念場になると黒服一色で個性を消せといい、そしてまた、当然のごとく茶髪やカラーコンタクトをもどし制服に着替える若者達~。
TPOなんてまるっきり嘘方便。一事が万事。根性がねじ曲がってオル。
嘘嘘しい世界じゃのう。
いつか、もっと別の視点で企業と新人が歩み寄る社会になればよい。
そうそう、夏に客人が暑苦しい暗いスーツで来ると、当方まで蒸し暑くなって、「その服、止めて欲しい」と、本気で言う。相手に不愉快な想いを抱かさないのが、真の礼節というものじゃ。マニュアル通りにやって、なにが礼儀か、と思うMuであった。
(夏は全員ステテコ腹巻き、チジミのシャツじゃねぇ~それ以外は、カス)
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