NHK龍馬伝(46)土佐の大勝負:象二郎・容堂・龍馬
ここずっと、とくに最終章に入ってからは毎週こみ上げる涙が多くなりました。
一つは、明治維新に直接関わった人たちは坂本龍馬に義理があったのではなかろうか、と思ったときでした。本当に、龍馬の暗殺は明治維新のための生け贄のように思えてくるのです。関係者の無策や嫉みや無理解や悪心や党利党略が、龍馬の死によって浄化されたり、闇に埋もれたり、死人に口なしになったりして、生者達の利となった気がするのです。
もう一つは、龍馬がいろいろ難しい課題に直面して、関係者達を説得する場面で涙もろくなっていました。少なくとも脚本レベルでは、人を説得する龍馬に二心とか私欲があったようには思えませんでした。いつも必ず、常識を突き抜けた根源的な理由で、相手にとって役に立つ、相手の利になるという点で、敵であれ味方であれ、龍馬は相手を説得していました。
今夜、後藤象二郎。
後藤さんは相当に肝を据えて容堂公に龍馬の大政奉還論を進言しました。龍馬が大殿容堂に会えたかどうかは知りませんが、象二郎さんと龍馬さんとがお互いに深く信頼していなければ、容堂公はそういう考えを受け容れなかったと思います。
おそらく薩長の武力侵攻と、山内家の徳川への忠義立てを足して割ってみると、龍馬の大政奉還論は容堂の気持ちにすっと入ったのだと思います。
しかしそのまっとうな現実認識の次には、武士が無くなり藩が無くなり上士や下士がなくなるという、いわゆる「革命」があるわけですから、建白書を書いた容堂公も相当に腹をくくったのだと思います。
と、ここで。
勤王思想には、ある種の平等性も強くあります。すなわち、朝廷、すめらみことの前では、すべての民は平等で、そしてまた最下層の人たちとさえ、すめらみことは直結しているという不思議な祭政が伝統としてあって、徳川は唯一朝廷には頭を下げても面子は保たれる確信もあったわけです。大政奉還とはそこを指しているのでしょう。
歴史か人か。
歴史は必然と偶然の川の激流で、流れにのった人のちょっとした動きで変化するのだと、今夜確信できました。歴史とは人が作るものです。人がいなければ歴史はあり得ないわけです。
ただし。
流れの力を上手に使えた人が歴史を動かすのだと思います。柔道のようなものでしょうか。相手の力の方向を変えることで、自分ではなく、相手が動くという理屈です。必然と偶然とが折り重なって巨大な圧力を生じさせる歴史は、その必然と偶然の間に立って圧力の方向を、ひょいと変えるだけで動く物かもしれません。それを知っていた人が、坂本龍馬なのでしょう。
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コメント
龍馬伝が終わりますね
今年も大河小説を解説していただきました。
繁寿しから帰って老人日記を書きながらチラチラと見ているのです。
見ない日も多く、何がどう進んでいるのか分かりません。
すると翌日の月曜日にMuBlogで解説され、やっと着いて行けるという寸法。
まずはありがとうございましたと御礼を申し上げます。
一昨日でしたか深夜にNHKのBS2で1回分を5分のダイジェストで、というのをやっておりました。
なかなか楽しく拝見しました。
それをやる値打ちがあるくらい、今年の龍馬伝は中味も映像も濃かったですなあ。
一番特徴的だったのはカメラワークでしょうか。
カメラワークをどうするか、というのはドラマの作り方そのものを根本的に変えるものなのだなあと感心しました。
参加するスタッフも役者さんも全員この斬新なカメラワークに備えた。
そんな気がしますです。
投稿: ふうてん | 2010年11月15日 (月) 13時06分
ふうてんさん
えらいメル返が遅れました。
昨日午後に食あたりというか全身蕁麻疹がでて夕方まで青息吐息、で夕食は絶食でそのまま20時ころに寝てしまいました。気付いたら今朝・午前二時過ぎ。
なかなかに生命体維持というのは大変なことだと、実感。
で、龍馬伝ですが。
週によってはいろいろあるのですが、総じておっしゃるように「カメラ」が優れていたというか、TVではみられない手法だったです。ダイナミックな映像でした~それと、印象に過ぎませんが一コマ一コマが、セピア色の色調を記憶に残してしまう不思議さです。現実は色鮮やかに描かれているはずなのに、脳のスクリーンには古色として残るのも初めての経験でした。
いろいろな俳優と出会えたことも有益でした。
「あ、こういう人がおるんや」という驚きですね。
さて。
まだ~来年と再来年の話は年末にします(笑)
投稿: Mu→ふうてん | 2010年11月16日 (火) 02時46分