鉄道模型のPC制御:(04)JMRIの設定(MacBook)
承前:鉄道模型のPC制御:(03)赤い箱・DP1と731系DCCフレンドリー車(KATO)
04-00 DCCとJMRIについて
JMRIとは、Javaというコンピュータ言語を使った、鉄道模型をコンピュータ制御するためのインターフェースである。具体的には、DCC:Digital Command Control という世界的な規格・方式にそって作られた鉄道模型(電車や機関車)を、プログラムによって自動運行したり、あるいは手動で自由に動かすことができる。これまでの方式(アナログ方式)で、そういうことが全くできなかったわけではないが、DCC方式ではコンピュータ制御と操作の記憶(プログラマブル)によって、自然で奥の深いシステムが生まれてきた。
鉄道模型をDCC方式によって動かすのは世界的には随分進んでいるようだ(日本は若干遅れている)。しかし、それをプログラムによって自動制御するのはハードウェアの面と、ソフトウェアの面とで、一般化は遅れている。ハードウェアの面では、動き回る列車の位置情報を適切に把握することが難しく、ロボットに比べて目や耳のセンサーを搭載する事例が少ない。ソフトウェアの面では、利用者人口が少ないことも影響して適切な導入事例が少ないので、個々が自動制御を自由自在にできるまでのアプリケーション利用や、開発言語による人工知能的自動化システムの構築は難しい状態といえる。
今回は、日本でKATO社のサービスによって普及している米国デジトラック社のDCCハードウェア(DCS50KとPR3)を通して、DCC化したHO車両をJMRIの提供する制御画面(スロットル)によって操作する実験をまとめておく。後日には、JMRI本来の能力を使って、プログラミング=スクリプト(台本)による自動走行に関するまとめを予定している。
この写真はMacBookでの実験で、画面下にJMRIのPanelProタイトルがあり、上部には二つのスロットル(制御板)が並んでいる。
タイトルによれば、このPanelProは仕様が2.10で(ダウンロードは2010年9月)、DigitraxLoconetという通信方式によるPR3というUSBタイプの周辺装置によって、MacBookとDCS50K本体(DCCシステム主要ハードウェア)とをつなげている。さらに全体を動かすJavaの仕様は1.5.0_22(ja_JP)版(ダウンロードは2010年9月)だと分かる。
新しいJavaシステムは自動ダウンロードをオンにしているので、時々更新されている。JMRIシステムは以前は別PCでWindowsXP用のをダウンロードしてつかっていたが、今回はMacOSX用のシステムを使うことにした。すべて無料である。
上部にある二つの制御板(窓か)はスロットルという呼び方をしている。同時操作する動力車の数だけ操作板を画面に展開するのが可能だが、一人で使うには4台くらいが限界かもしれない。左側は、IDが0010番、右側が0065番の機関車で個別に制御できる。ID番号(列車アドレス)は私が以前にDCCの基本システムを入手したとき、2台のHOタイプ機関車に直接、マニュアルに従って命名した。
(上述で、あえて0010とか0065と4桁表示をしたのは、この制御板に列車アドレスを指示するときに、10とか65とか二桁で入力すると、受け付けないことがあったからである。もともとアドレスを命名したときには、4桁で入力したので、PanelProでは区別しているのかもしれない)
さて、下部にあるAddressPanelの10番を事例にして簡単に説明する。この操作盤は普通の意味ではプログラマブルではない。一連の操作を記憶するわけでもない。
左端のタテに細長い区画はスピード制御である。バーを上下させれば変化する。このスロットルを離れて別のスロットルに移ると、離れる直前のスピードや前進・後進、その他機能が維持されている(つまり、別の機関車の操作に移っても、直前の機関車は止まらない)
上端のFunctionPanelは利用者が一番使用するところだろう。つまり、ベルを鳴らしたり、前照灯や部屋灯を消灯点灯させたり、おおよそ機関車や客車に積み込んだデコーダ(固有のCPU)が持つ機能をすべてここから制御する。今回の私の実験では、実はライトの点滅しかできない(一番安価なデコーダを積んでいるからに過ぎない)
この写真に現れた機能・方法は、コンピュータ本来のプログラマブルな自動運転は別のこととして、制御板(スロットル)を複数セットし、MacBookに表示し全ての機関車の状況を瞬時に変更できる点で、きわめてディジタルな手法といえる。
ただし複線レイアウトで2台くらいの動力車程度なら、従来のアナログ方式でパワーパック(制御板)を複数用意すれば似た操作は可能だが、配線などが複雑になる。特に、一本の同一レール上で2台の動力車の方向を逆さまにして、おのおの速度を個別に変更することは、アナログ方式ではできない。
04-02 D101基本セットとPR3(USBインターフェース)
写真下部はKATO社で日本語化しているDCCシステムの、D101という基本セットのDCS50Kコントローラ(コマンドステーション)である。上部はデジトラック社のPR3という、本来は音源データを扱う機器で、本稿では純粋に「USBインターフェース」として使っているPC接続機である。両者合わせて私が入手したのは、おおよそ2万数千円で、機関車に搭載したデコーダ(固有化CPU)が数千円なので、合計3万円前後が2009~2010年にかけての日本でのDCC実情である。
実は、PCとデジトラック社のDCC機器(たとえば、DCS50K)を接続するための古典的手法は、MS100という周辺機器を使うのだが、これはRS232C仕様なので現代のノートタイプでは無理だし、さらにUSB変換をするにも転送速度が特殊なので一般に扱いにくいものである。よって私は、PR3「サウンドプログラマ」というタイトルの付く機器を使用した。
この場合、MacOSXで使うとPR3はドライバーソフトも不要で、実に簡便である。実は、MacOSXの先代版を搭載したMacBookをJMRI実験に使った一番の理由は、このドライバーソフトが不要だと知ったからである。
(WinXPだと、他の類似アプリケーションと、なにかとコンフリクトが生じている~気がする)
なお、初心の場合{DCS50K+PR3+レール}の結線がわかりにくいと思うが、それはJMRIの適切な図版を確認すれば確実である。(JMRI Hardware Guide: Connecting to a Digitrax PR3)
04-03 DCC化したHO機関車
写真の機関車は2008年ころに入手したHOのDE10ディーゼル機関車(上部)と、EF65電気機関車(下部)である。
小さな貨物車のようなものはヨ8000(KATO社記事)という車掌車の一種で、図書館列車の「司書室車」として最適と考えている。
この三種類の列車はKATO社HO製品だが、いろいろな点で好ましく、愛用している。
KATO・HOタイプのDE10もEF65も、箱にはなにも書いていないがともにDCC化が即効でできる。もっとも簡単なDCCフレンドリー車といえる。屋根をはずせば受け口があって、そこにピン付きのデコーダを差し込むだけで完了。デコーダは廉価版で十分だが、3000円弱でデジトラック社のDZ125PSを使った。末尾のPSにピン付きの意味がある。
私は、実はこの単純なDCC化を知らなかった。たくさんの情報をネットや雑誌で目にしたが、ふたをあけて差し込むだけで完了。なのに、箱にもどこにもDCC化情報がない! というわけで、ある種の不思議な雰囲気が現代の日本・鉄道模型DCC世界の状況である。
04-04 JMRIの初期設定
初期設定を記事の末尾に持ってきたのは、WinXPの時も今回のMAcOSXの時も多少混乱したからである。最初から混乱した状況を記すのはよくないと考えた
。
最初に機器類をセットして、JMRIのPanelProを起動し、次に「初期設定=Preferences」を見つけ指定すると初期設定の画面が出てくる。
ここでLocoNetというのは、ディジトラック社が共通して採用している機器間の通信プロトコル(規則)名である。このプロトコルをJMRIに知らせるわけだ。つまり、利用者はどういう会社のどういうインターフェースでPCやDCCを接続したいのかをJMRIシステムに通知する必要がある。原則として一度済ませれば、他に特殊なことが必要ない限り、開けることは少ない。
最初にDCCシステムの会社名を入れる。Digitrax社。
次にどういう周辺装置を使うかを入れる。LocoNet PR3というUSB接続機器と入力する。
Serial Portは、私のMacBookではこの「/dev/tty.usbmodem1d11」でうまく行った。通信が成功するまでリスト内容を試してみた!
次のDCS50(Zephyr)とは、日本のKATO社サービスならば、DCS50Kというコマンドステーションが該当する。話が逆で、DCS50Kを使っているから、JMRIではDCS50を指定すればよいとなる。
次のConnectionPrefixは最初からLなので、そのままにしておいた。
これを「保存」すると、通信の成功不成功が知らされる。不成功が続くようならば、しっかり調査するのと同じく、別のPCでWinXPなどに変えて試してももよいだろう。
04-05 まとめ
JMRIは初心者にとってはとっつきにくいという評判がある。まだ使いこなしていないのでよくわからない点も多いが、おそらくそれはプログラミングが重視されているのも理由の一つだと思う。
私がJMRIを気に入ったのは、ホームページが充実し、細かなところまで書き込んであったからだ。もちろん無料なのもよかった。さらに、WindowsもMacOSもLinuxも、共通して使えるという点で安心感を持った。
写真は2008年製のMacBook上でJMRIが動いている実姿である。以前はデスクトップのWinXPで試していたが、レイアウトとの距離が不自由になり、Macに変更した。その間にwinノートPCもあったのだが、これが他のアプリケーションと競合して動かず、あきらめた。ワープロのような普及度のあるソフトウェアではないので、いろいろ不備もあるのだろう(笑)。どこに原因があるのかわからないが、うまく行かないときは、最近はまるっきり別のことを試すことが多くなった。
しかし今回記事はやっとスロットル(車種や速度や方向を制御する)にたどり着いただけで、これからは独自パネル(パネル模様のギャラリーがあった)を作ったり、スクリプトを書いたりと盛りだくさんの試みが待っている。また折々に記事を掲載する予定だ。
参考サイト
JMRI Hardware Guide: Connecting to a Digitrax PR3
JMRI Install Guide: Mac OS X
JMRIを導入:JMRIを使う DCS50K+MS100
Python初心者のNゲージ自動制御に挑戦:DCC制御ソフトJMRIでPhthonスクリプトを勉強中
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