小説木幡記:2010/06/20(日)iPadがやって来た
承前:小説木幡記:2010/05/29(土)iPadと賢弟たち
↓ iPadに納められた本箱
林檎社のiPadがやっと届いた。数週間またされたことになる。しかし、うむ、待った甲斐があった。
なぜ大枚はたいてiPadの出始めを入手したのか?
おそらく、電子読書元年になるマシンだからだ!
なぜ、そう思うのか?
iPhone(携帯電話)とか、iPod(携帯メディア貯蔵箱)とかがもう何年も世界で流行していたからこそ、iPadが紹介されたとき「真打ち登場」と、思ったのだ!
どうして?
iPhoneもiPodも「音」が主で、その使い勝手の佳さから人々に迎え入れられた。しかし小型である点で「目」には非力だった。目は人間が受け取る外界情報の80%を占めている。だが目は可視光線の中で、対象物の適切な大きさを必要とする。文字や版面の大きさ、これがiPhoneには欠けていた。老眼や近眼には無理があり、しかも無理を続けると目を悪くする。
iPadは、その大きさにおいて適切だった。
だから、入手した。
最大の目的は、電子読書のためだった。
↓ 風立ちぬ/堀辰雄 (iPad上)
iPadの大きさは、横にすると文庫版や新書版を見開きにした程度になる。だから、情報量は大きい。しかもフォントの大きさは、この読書アプリケーション(i文庫HD:700円)では自由に変更できる。iPadを縦置きにすると片面で、昔の漱石全集(岩波)のような巨大なフォントにしても、気持ち良く版面が収まる。
備え付けのiTunesで、i文庫HDを購入するとそれに付随して、これまでインターネット上で眺めてきた「青空文庫」がiPad のi文庫HDの書棚にずらりと並べられる。これらは青空文庫が無料だったのと同じく、無料で読める。つまり古い小説類を楽しめる。
余は最初に『風立ちぬ/堀辰雄』を読み出した。20ページほどを一気に読んだが、紙図書との違和感はなかった。文字を大きくしてあるので読みやすい。しかし寝転がったとたんに「重い!」「これじゃ、京極さんのキロ級ミステリを読むようなもんだ」「腱鞘炎になる」と、自笑していた。純正のカバー(別購入)とあわせて、感覚的には1キロ前後で、実際に計量したところ860gだった。
やはり、次世代iPad は、文庫判ないし世界標準なら新書判が佳いだろう。
なお、ソフトウェアとして、紙のページをめくるようにくるくる巻き上がったり、巻き上がる紙の裏面にうっすらとページ面が透けて見えるのは、楽しいとも言えるが、本当に読書に没頭するとそういうギミックは無用となるだろう。このアプリケーションに限って言うなら、ディジタルならではの新機能をこっそりと、必要に応じて使えるようにしてもらいたい(まだ、余が気付いていないだけか?)。栞機能や辞書引きも洗練されていないように感じた。
↓ iPad画面に現れた購入ソフト:i文庫HD(上段の右)
ところで、受け取ったのは昨日土曜日の午後、葛野でのことだった。上述したことをするために、慣れないせいもあって夕方までかかった。
すばらしいマシンだが、これまで林檎社のマシンを触っていないとか、まして余のようにiPhoneもiPodも未経験の者には、いろいろつまずくところがあった。
1.OSでのフォルダーとかファイル管理という思考方法を拒絶される:iTunes管理下マシン
iPhone(携帯電話)と同じOSを使っているようだが、iPhoneでなれていないと、自分のファイル格納位置とか、その整理という視点からは、別世代の物だと感じた。もちろんOSだから変化(進化とは言わない!)していくだろうが、現状のiPadはwindowsとかOS9とかOSXとか、Linuxとは、別の思想なのだと痛感した。
要するに、これまでのOSの仕事の大部分は、iTunesという初期には音楽(有料)ダウンロードアプリケーションだったものを、全面的に改良して、新iTunesにOSの一部負担をさせている。
なんとなくwindowsが一時期IEに多くの仕事をさせていたような気分である(今もかな?)。
2.だからOSは考えないのがiPadの使い方
まだまだ慣れていないが、今のところはOSを仮想的にも考えず、ひたすらiTunesでおもしろいアプリケーションやコンテンツを探して、有料無料関係なくダウンロードして愉しむのが正しいことだと味わった。
作家とか研究者のように文章を書いたり、ミュージシャンのように演奏したりするのではなくて、そういう小説や文章や映画や音楽を享受するためのマシンなのだ。
……。
もちろんiPadも今後変化していくだろう。
初年次には、徹底的な享楽マシンとして生まれたと、メモしておこう。
作る汗をかくよりも、よいものを探す、使う、愉しむマシンなのだ。
3.iTunes もネット接続も~
iTunes を触ったことが無い人(余もそうだ)には、最初はわかりにくい。他のPCと同期する必要があるからだ。じゃ、他のPCを持たない人はどうするのだろう?
知らない(笑)。
これは、調べないとならんなぁ。
ネット接続も、余は自宅でwindowsマシン用に無線Lanを使っているので、そのパスワードであっけなく接続した。しかし、こういう世界と縁遠いと、イーサネット受け口もないし、困った困った~。
USBも特殊な受け口なので、壊れると邪魔くさい話になる。
~
4.いろいろ分かりにくい点もある
iPhone やマックユーザーにとっては取っつきやすいが、そうでもないひとはカンが狂うかもしれない。
まるっきりのPC初心者だと、PCもないだろうし、無線LANもないだろうから、……。
うむむ。
最後になるが使い勝手を占めるiPad の大きさは、ゆとりあるA4判ケースなら縦にすっぽり収まる。透明ケースに入れたiPadと紙図書との組み合わせで、想像してほしい。
ところで左の写真にある手のひらサイズの電子読書機はなんと1993年の某社による国産品である。余は、このマシンを電子図書館研究会という席上で、手にしてあれこれ言っていた。今から17年も昔のマシンをiPadに比較すると、当時はスイッチ類が多い。これは現代ではほとんど画面上に指を動かすだけですむ。そしてモノトーンの視認性の悪いディスプレイだった。これは現代では、総天然色の精細美麗なものに進化している、……。
そしてコンテンツは現代のようにネットで自由自在に購入する方式ではなかった。思い出せないが、フロッピーディスクなんかでデータをいちいち移動させていたようだ。
今朝もiPadを触りながら、16年も昔、1994年初版の『電子図書館/長尾真』(2010年に新装版)にこの電子読書機の原型があり、それに搭載するアプリケーションの仕様、要求事項が今でも色を失っていないことに、感動した。
付録として、普通の携帯端末としてMuBlogも読みやすく見ることができますよ、という意味で本邦初(爆)のiPadによるMuBlog写真を掲載しておく。→
どんなマシンができても、まだまだコンテンツを作るのは人らしい。これからもMuBlogをせっせと書こうと思った。
今後は、自分自身の作った論文や小説やblog記事を、iPadのような形態で自由に読みかつ再利用できるような方法を考えてみよう。
また、近々の話としては、職業がらプレゼンテーションなども必要なので、そういう方法論にしっかり慣れていくつもりだ。ただ、こういう世界は賢弟たちが多くそろっているので、あまり心配はしていない(邪笑)。
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コメント
おめでとうございます。そっそくいろいろとお試しのことと拝察します。
できるだけiPad専用アプリを落として、お楽しみ下さい。
そら案内・人間電卓X・keynote・yubichiz・google mobile appあたりをお試し下さい。さらにこの板で文章を読むということでは、産経新聞・クーリエジャポン・講談社南ア ワールドカップ デイリーマガジンなどを見ていただきたいと思います。
新聞は早くすべての全国紙が配信を始めてくれたらと期待しています。
投稿: morio0101 | 2010年6月21日 (月) 01時36分
morioさん、朝からどうも
最近、昼は小忙しくて夜は寝付きが佳すぎて、朝しか脳が動きません~
昨日夜は、お奨めのkeynoteをiPadでダウンロードしたとたんに、寝てしまいました。
その後は。
まだ不慣れなので、MacBook上の授業シナリオをiPad に転送できていません。「同期」を取るのでしょうな(笑)。原始的なファイル操作に慣れきっていると、USBフラッシュに入れて、右から左へ移動複写する手法が懐かしいです。
問題
木幡の無線Lanは快調なのですが、逆に葛野の通信が上手く行きません。ソフトバンク系のWiFiを使おうにも、その系列のエリアはマクドナルドへ行ってマクドを食べないと使えないようですし~。無線ルーターを、「AirMac」を新規に買ったら上手く行くかな?
葛野のは2007年くらいの製品なんですが、windows系だと楽々無線だけど、現状iPadでは接続しないとなると、あの世界もややこしいからね! 困っております。
最悪の時は、有線のUSBのLanアダプターを入手して、なんとか特殊受け口を橋渡しして~。ものすごい様相になりそうです。
よい方法を小耳にはさんだら言ってください。
AirMacを新規購入して接続できなかったら最悪だからね。
(たとえば、葛野でネット接続しているMacBookにiPadを同期させたら、iPad 画面でもネット接続できるような方法はないかな?)
投稿: Mu→morio0101 | 2010年6月22日 (火) 04時45分
morioさん、失礼した、
今朝葛野にでてきて、冴えた脳で古い無線Lanルータをさわって、すべて解消した!
脳は、私の場合早朝でないとまったく動いていないね。
どうしたかというと、要するに、
1.MacBookでルーターにアクセスして(ルーターの側面にアドレス書いてあった!)
まず設定を呼び出す。
2.AOSSとかいう自動無線Lan設定を解除して
3.瞬間的に、認証なしで「接続可能かどうか」を確認→可能だった
4.あわてて、認証付きにして(パスワードも適当に決めて)
5.返す刀で、iPad のwiFi設定にパスワードを入れた
6.IpADは無事、YouTubeを見せてくれた!
まあ、iPad っていうのは、かわいらしいマシンだこと。
以上、お騒がせしました。
投稿: Mu→morio | 2010年6月22日 (火) 08時30分