邪馬台国周遊図書館ジオラマ(7)レール固めとテスト走行・試運転
一般に固定的な鉄道模型レイアウト(本稿ではジオラマ)でのレールは、フレキシブルレール(自由折り曲げ変形線路)を使用することが多かった。その場合のレール固定は木材を主とする基盤(模型の地面)に釘止めするのが常道だった。自由にカーブを成形できるレールだからこそ、釘でしっかり打ち付けて微妙なカーブを維持することが合理的だった。
しかしこのジオラマでは道床付きの組立レールを使っているので、地面が発泡スチロールであれ木材であれ、釘で頑丈に固定しなくても、両面テープやボンドで貼り付ける手法が簡便である。このために、HOおよびNゲージの組立固定式レールをすべてボンドで貼り付けることにした。ボンドやセメダインの種類は問わないが、強いて言えば「発泡スチロール適合の接着剤」を選んだ。そうでないと地面を溶解することがある。
↑写真は、先回説明したアクリル水性塗料(クリア)で作られた川・水をまたがったHOゲージレールの道床を、発泡スチロール製の地面に接着している。ただし、貼り合わせるというよりも、ボンドで盛り土している雰囲気だ。レールの中央部分、枕木に釘の頭が見えるが、これはレールを固定することよりも、位置決めのために使った。基盤が発泡スチロールだから、釘で固定することは無理である。
鉄道模型を最初に触ったころには、「試運転」の意味がつかめなかった。「一度、試しに走ればそれでいつでも走るだろう」と思っていた。レールが固定されて、動力源が安定した電気だから、そう考えたようだ。しかしジオラマを作っていく内に、それがとんでもなく誤解だと分かってきた。毎朝、毎回、試運転をしなければ「走るか、止まるかは時の運」とまで、現在は考えている。要するに、何もしなくても試運転が必要なのだから、ましてレール固定など、少しでも変わったことをしたときには、つまり変化があったときは、試運転という調整をしなければ、列車はまともに走らない。
このことは後日考えてみるが、模型列車が「不安定」ということではない。走るための条件項目が多いので、チェックに手間取るということだ。ひとつひとつの条件変化、およびその結果としての走らないとか脱線には、必ず理由がある。魔法や怨念で脱線するわけではない。いま、一つつかめた「コツ」をメモするなら、たとえば原因は脱線した箇所にあるのではなくて、その10センチ手前にあることが多い、ということだ。鉄道模型は動的に、走る。だから、静的に眺めていても解決しないことが多い。それが、私の得た「コツ」の一つだ。
↑写真は、奥のHOスケールがDE10(KATO)+二階建て図書館列車(TOMIXのサロ124改造)+サロ124(無改造)。手前のNスケールが、DD51(KATO)+二階建て図書館列車(TOMIXのカシオペア改造)である。それぞれ製作したころの記録があるので参照願いたい(HOサロ124改造、Nカシオペア改造)。なお、HOゲージレールは起伏が無く、複雑部分はポイント分岐だけなので試運転はあっけなく成功した。ただし、このレールは半径35センチなので、一般的な20m級の車両を走らせるのは、ほぼ限界的なカーブである。起伏があると脱線する。Nゲージレールは相当に起伏があるが、レール・レイアウトを設定するまでに長い試行期間を経ているので、これも試運転は成功した。
以上につき、細部は写真7.1、写真7.2を、右クリックで拡大し参照願いたい。
これでレールも固定されたので、以後は細かな地面成形や建物(ストラクチャ)、ライト類の敷設などが残る。ジオラマらしいジオラマは、この段階から始まるわけだが、完成のめどは立たない(つまり、常に普請中になる)。
写真7.1:レールの固定(ボンド固め)
写真7.2:試運転(HOとNスケール・二階建て図書館列車)
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コメント
屋根なし二階建て列車よろしいなあ
図書館列車が山間に差しかかりました。
両側に大きなコナラの木が並んでいて木もれ日が差しています。
運転手さんが一休みしたくなったのか列車は止まりました。
ちょうど堀辰雄の(風立ちぬ)を読んでいた時でした。
新緑をくぐった風がかすかな花の香りとともにこちらの体を包みます。
いつまでも発車しなくていいよ、と静かにページをめくるのでした。
ポケット壜のサントリー・ウィスキーを一口やり、キャメルに火をつけました。
遠く近くウグイスたちが澄みきったよく通る声で鳴き交わしています。
投稿: ふうてん | 2010年5月15日 (土) 03時02分
と、ふうてんさんの幻視的な原詩に誘われて、2007年ころから始めた二階建て鉄道図書館も、少しずつ形を整えてきました。
清流のせせらぎが聞こえて、木漏れ日の中、紫煙とアルコールに包まれた紙の図書が、一番効果をあらわす名場面ですねぇ。
以前は池波正太郎先生の作品でしたが、このたびは風立ちぬですか。この世に詩や小説や紫煙やアルコールや四季がなければ、生きる値打ちも無いと思います。
砂漠の砂がクリーンであるためには、地球のどこかに清流があって停車し続ける二階建て図書館列車がないと困るわけです。
さて。
私は紫煙を棄てました。あれは私のような蒲柳の質には過激すぎたようです。身体は随分楽になりました。もちろん喪われた40年間にわたる紫煙文化を埋めるものはまだありません。ぽっかりと穴が空いたまま過ごすのも、よかろうかと、思ったときに楽になりました(笑)
投稿: Mu→ふうてん | 2010年5月15日 (土) 07時53分