昭和の鉄道模型をつくる(40)樹木2(ライトグリーン4本)
今回の昭和の図書館列車姿はいかがでしょうか。先頭のディーゼル機関車は詳しくいうと、DE10-1049ゼブラ塗装米子(Nゲージ・マイクロエース社製)です。鉄道図書館列車としてはリチウムイオン電池などに動力源を変更する必要がありますが、私の考えるジオラマがいずれも電化のない田舎や深山幽谷を走る想定なので、このDE10形は大きさやバランスから重宝しております。
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後ろの客車は、これは後日、二階建て図書館列車に改造してからまとめて報告するつもりです。実車を見たことがないのですが、関東地方の方で箱根へ行かれる際に乗車する特急車両です。多くの二階建て図書館列車の中でも、このモデルには期するところがあります。おなじみのサロ124に較べて、華やかさ、斬新さが深いです。前者が通勤緩和の車両だったなら、後者は純然たる観光地行きの特別車両だと思います。図書館列車は、本当は日常に使ってもらいたいわけですが、やはり一等「ハレ」の気分を秘めている方が、将来の人々を図書館列車に惹きつけると思うわけです。
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DE10+二階建て特急車両(2両連結)、でこのレール・レイアウトを走行します。マイクロエース社の車両もTOMIXと同じく半径14センチを通過する20m級が多いです。
40:部品と工作(樹木2:ライトグリーン4本)
というわけで、「40:部品と工作」は休載です。
40:鉄道模型の達人/楠井利彦 (くすい としひこ)
楠井さんは、もちろんご自身ですべて製作されるわけです。Oゲージといって普段見慣れているNゲージからすると巨大です。「20メートル級車両をNゲージで作ると15センチ足らず。しかし、Oゲージでは、全長45センチ近くなる」。この事情については、十数年前から小さな車両を自作するだけの視力がなくなったとも書かれておりました。
身につまされるお話です。
写真説明によると屋根は木製のようです。多分、シャーシー(というのでしょうか)・床板も木製と想像します(笑)。屋根はカーブを出すのに紙よりも木が適していると思いますが、それだけではなく車両全体の剛性を高めるために、屋根と床が木製で、側面を紙になさっているのでしょう。しかし完成品を写真で見る限り、素材が紙にも木にも見えません。塗装が極みをだすのでしょう。驚くべき技術だと思いました。(と、私には永遠にできません!)
40:車両の製作(3)/車両のウェザリング
今回は「正統汚し技法」について、記事の要点をまとめておきます。
1.クリアスプレーを塗布する:塗料のノリをよくする。
2.エナメル塗料と薄め液を1:3で、凹部(床下器機など)に塗り、綿棒でこする(均一性を無くし、影を作る)
3.パンタグラフのような明瞭は部材は、エナメル黒原液で塗装し、汚れパウダー(タミヤウェザリングマスタ:私も持っています)で、雰囲気を出す。これは化粧するような扱いでしょうね。
以上3点を何度か試みれば、それなりにリアリティーが出ると思いました。雑誌なんかで見ると、様々な技法があるようですが、なにか一つをマスターすれば、コツをつかめるのではないでしょうか。
40:昭和の『鉄道模型』をつくる
というのは、たとえば自家用車ですと数年毎にマイナーチェンジ(部分改良)し、5年以上経過するとデザインを根本的に変えて購買欲をそそる、いわゆる「新車」指向が強いわけです。中古車市場も盛んですが、大体十年をすぎると廃車の憂き目にあいがちです。もちろん電車などもその周期が長いだけで、変化はあるわけですが。
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ところが鉄道車両の場合は、最近の京阪電車もそうですが、色と内装と部分的に新調されるくらいで、ものすごく車両の使用期間が長いようです。つまり、古物扱いされるものが延々と生命を保っています。原型が質実剛健、丈夫で頑丈なのでしょう。
この記事によれば、北陸本線の近郊型電車になると、もともとが寝台特急ですから大改造にあたります。それをするだけの値打ちが車両にあるのでしょう。
「働き者の特急電車は、老いても盛んだ。第二の人生も、北陸本線の優秀な戦力になっている。その性能は、乗ってみて納得した。動きや乗り心地が実に快適なのだ」★
以前、どこかの市電が数十年間実際に使われている記事を読みました。部品なんかは、いちいち一品製作するようでした。普通の列車だと、限界はあるでしょうが、命あるかぎり使い切るのでしょう。鉄道車両の質実剛健さが今後も残ることを期待します。
40:未来の図書館、過去の図書館
一月末に伊勢参りを近鉄二階建てビスタカーで経験して以来、ますます「鉄道図書館列車構想」が私の中で実感をともなってきました。近鉄電車の奈良から伊勢への路線が定規で引かれたように延々と続く直線であったことや、近鉄電車が標準軌幅(広軌1435mm)だと人に教えられ、それならまるで新幹線と同じ条件だったと後で気づいたのです。
新幹線が時速300kmで走る振動に比較して、同じような路線を時速約100km程度で走るビスタカー「楽」の車内での静粛さ、読書環境の良さを実感しました。奈良線などの、JR旧来線は狭軌(1067mm)ですから、約40センチの幅の大小が高速度や揺れの少なさ、全体的な安定感をもたらしていると考えました。
その後調べて分かったのですが、関西圏の私鉄は昔から軒並み標準軌のようで、私が幼児から親しんでいた京福電車(嵐電)も阪急、京阪、近鉄と同じく広軌でした。あの小さな電車も少し手を加えれば、静粛で安定感のある図書館列車に変身するかもしれません。
さて常日頃考えている特急車両改良の「二階建て図書館列車」ですが、いままでの復習を兼ねて、図書館列車構想の要点をまとめておきます。
1.二階建て図書館列車
比較的長距離を想定し、都会から地方、地方から都会への往還ないし環状運用を図る。
目的は、柔拘束状況(停車時以外は椅子に座る)での読書や研究の便を図る。
観光や一般旅行を兼ねてもよい。
列車構造は、一階を書庫及び重読書室とし、二階は軽読書室、サロン、カフェテリア等の快適さを用意する。
このために、振動や騒音の少ない現行特急車両を改造する。
車両編成として、会議室車両、コンテナ書庫車両、岩風呂車両、お座敷車両などの編入も可能とする。
2.トロッコ図書館列車
比較的短距離を想定し、一地域内での網状、環状運用を図る。
目的は、地域にある生涯学習施設(図書館、博物館、美術館、名所旧跡など)を相互にリンクすることにある。
すなわち、地域の「知育の足」とする。
この場合、地域によっては観光遊覧の意味が高くなることもあり、その地域では地元住民と(観光)来訪者とが等しく安全・安価な「足」を共有することに意義を見いだす。
車内には、地域資料、観光パンフレットなどを恒常的に配架する。小図書室である。
3.二階建てトロッコ図書館列車
主に風光明媚な地域では、上記1と2との機能を複合した編成列車を用意し、一定地(駅舎、名所地での引き込み線など)で、長時間停車する静止型図書館列車として機能させる。過疎地においては、従来の移動型図書館と同じ意味を持つ。
以上の構想を果たすには、技術的には問題は少ないです。強いて言えば、騒音や排気ガスなどの環境問題を解決するために、リチウムイオン電池などを用いた牽引車が必要になります。あえて自走電車を後回しにしているのは、各車両毎の特徴を徹底して出すため、動力は牽引車に任せるという考えからです。
社会・経済制度の観点からは説き起こすべき問題が残ります。
<注:以下は結論にいたるメモです。>
今、多くの路線が採算性の問題から廃線になり、バス輸送に切り替えられ、そのバスがまた不採算の故に路線を縮小ないし廃棄されています。こうして地域全体の移動機能は自家用車やタクシーに限定されてきています。自動車は、個々の利便性は高いのですが、社会全体を豊かにする点では限界を迎えています。個々の維持費、燃料代、交通事故、無謀運転、走る狂気・凶器、ライセンス制、若年および高齢者の利用制限など、個々に任せる故の自由や孤立性が、逆に将来の足かせとなってきました。なによりも、訓練の少ない不安定な生命体が、長時間大馬力の自動車を扱うという、根本的な危険性を内包しています。
そのような社会全体の動きの中で、自動車自体に問題があるにも関わらず、鉄道が都会の私鉄や、新幹線などを除いて凋落してきたのは、鉄路というものを「輸送」という限定目的のみではかってきたことが、衰退の要素だったと考えます。輸送という観点だけならば、大型トラック便や、ドアtoドアの自家用車に席を譲るのは自明だったと言えるでしょう。
鉄路に輸送以外の他の目的はないのでしょうか。
その解の一つが、安定した広く豊かで静かな空間移動だと考えます。このことを利用すると、将来の人々の生き方を見据えた生涯学習施設としての「二階建て図書館列車」が走ります。
おそらく今後ますます「人の移動」が少なくなっていきます。効率の面から、エネルギーロスの面から、人が移動しなくてもよい世界を迎えつつあります。ただしかし、生物としての人間が、移動するエネルギーを無駄、消耗と考えたとき、世界は植物状態になることでしょう。植物が悪いのではなくて、もともと移動する動物としての人類が、移動をストップしたとき、無気力となり衰亡が始まると予想できます。インターネット技術などの隆盛は、自動車と同じく利便性の裏面で反人間性を助長しているわけです。
……
この先の話はまた後日に考えてみましょう。
空間移動しながら、学習であれ研究であれ娯楽であれ脳を使うことに私は、なにか秘められた人類再生の謎を味わっているのです。
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