NHK龍馬伝(09)命の値段:龍馬のひとがら
承前:NHK龍馬伝(08)弥太郎の涙:現実とは辛いことも多いろぅ
龍馬伝、好調です。
まだ三月ですが、私はとても気に入っています。今夜も、津波情報を画面の片隅でみながら、気がつくとドラマに見入ってしまっていたのです。わずかに45分世界。その中で今夜だけでも、いくつも話題や見所がありました。兄妹の連携、二人の女性に絡まれて板挟みの龍馬、親戚の若者がおこした事件、武市半平太との確執、組織の掟、そして岩崎弥太郎における商売開眼、……。
1.道場経営と千葉佐那の心映え
よく調べないと明言できないのですが、当時「道場をかまえる」とは、自営業のようなものでしょうか。千葉定吉はさる藩の江戸での剣術指南役をしていたこともあり、その点では大名に仕えていたはずです。ただ、普通の藩に属するような形ではなかったように思えます。ドラマでは、千葉道場にパトロンがいる雰囲気ではなかったです。
そこの兄(千葉重太郎)と妹(佐那)が連携して、妹の旦那(龍馬)を確保する様子がおもしろおかしく描かれていました。龍馬は二年半前に佐那と指切りして土佐に帰り、その間、佐那は江戸でじっと待っていたようでした。
千葉道場は江戸でも著名な剣術道場でした。佐那はそこの娘さんです。他方、龍馬は土佐の下士で、いわゆる田舎侍です。末っ子だから、坂本家の裕福な家督を継ぐわけでもありません。普通の次男、三男坊カラスなら、喜んで佐那の婿さんになったことでしょう。佐那は美人だったようですし(笑:いやはや、男子がすべて美女に惹かれるわけではないのですが、一般論として)。
佐那の兄で、そしてまた龍馬の師にあたる千葉重太郎は、龍馬を好ましく思っているとつげます。思わず吹き出しましたが、ようするに龍馬の人柄を気に入っているというわけです。もちろん、佐那が龍馬を恋い焦がれていることもほのめかします。
このドラマでは、龍馬が福山さんの風貌や仕草と合わせて、たしかに人当たりの良い、多少天然じみた、何とも言えない龍馬像を早くもはっきりと見せてくれています。だから、単に主人公だからではなく、佐那や加尾が龍馬に惹かれ、千葉重太郎が妹婿として「よい男だ」と思うのがよくわかります。
佐那は、賢い女性だと思います。土佐の田舎侍であっても、下級武士の末っ子で家督を継がなくても、龍馬の独特の人柄が気に入ったのでしょう。
2.岩崎弥太郎の商売
弥太郎は獄につながれている間に、変な泥棒と知り合います。本人は泥棒じゃなくて、10両のものを100両で売ったから捕まった、といいます。弥太郎は「それや詐欺だ、泥棒だ」と言い返します。
しかし、目の前の饅頭に、それに一文の値打ちも感じない者もおれば、十文の値打ちを感じる人もいる。だから、十文でもよいと思う人に売る。
詐欺は、だまし、脅迫を伴います。事例を挙げなくても、近頃は詐欺商法がはやりですから、だれでも知っていることでしょう。
~
それまで下級武士でもあった弥太郎は、士農工商のならいのように、商売を毛嫌いし、詐欺、だましとしてしか認識していなかったのでしょう。だから、今夜、老人の言葉に愕然としたのです。
商売は、相手の納得する値で売り、それでも利ざやのあるのが正しいことでしょう。当たり前のことですが、難しい仕事だと思います。
3.山本琢磨事件
実話のようです。ただし、ドラマですから~。
みているかぎり少年法適用ものです。一応「拾った」わけです。それを悪ガキ友達に、引きずられたのかどうか、わざわざ古物商で名前を名乗って売ったわけです。なんとなく抜けた話です。
最近も、高級自動車を連続して盗み、部品に分解してネットオークションにかけて、捕まった者がいました。少年じゃなかったかな? 足のつくばかばかしい犯罪です。
しかし古来、嘘つきは泥棒の始まりといいますから、拾って売ったのは泥棒の始まりでしょう。積極的に連続して車を盗み売ったなら、これは組織的犯罪ですね。
なにがもうしたいか。
それが(後の)土佐勤王党、つまり攘夷を掲げる思想武闘集団の結束を損なうという点で、切腹騒ぎになるわけです。
まず馬鹿げています。しかし現代でも組織の中で、自殺で事を納めるタイプの関係者は確実に絶対的におります。官僚や政治家と業者との関係では、往年の松本清張さんがよくテーマにしていました。慣れてくると「自殺要員」が誰かも分かってきます、……。連合赤軍時代は、総括次第では死を伴うリンチがよくありました。江戸時代も今も変わりません。
龍馬はバランス感覚の優れた人物として描かれていました。
龍馬は琢磨を逃亡させました。バランス感覚を保つには決死の勇気が必要なことがあります。だから、坂本龍馬はひょうひょうとして人に好かれた青年の面もありましたが、他方危ない橋を渡る勇気もあったのでしょう。
ではまた来週。
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