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2010年2月21日 (日)

NHK龍馬伝(08)弥太郎の涙:現実とは辛いことも多いろぅ

承前:NHK龍馬伝(07)遥かなるヌーヨーカ :龍馬のすこやかさ

 今夜のドラマはいささか消化不良がつのり、漢方胃薬を飲みました。ドラマや役者が悪いとか、演出が悪いとか思ったわけではないのです。現実感がありすぎて、めげてしまいました。

1.吉田東洋の現実感
 庄屋の理不尽な水盗や、岩崎弥太郎の父親に対する用心棒をつかっての暴行。それをさばく安芸の奉行が、どうも庄屋から賄賂を受け取っていたらしく、不正を城にしられたくないばかりに、事件をもみ消した。現代にもよく在る話です。
 吉田東洋は城主山内家の親戚を、その酒癖の悪さ故にたしなめて蟄居中です。そういう気骨ある吉田上士だから、弥太郎や龍馬は、奉行の裁きを東洋に直訴しました。
 ところが東洋は「わしのように実力のあるものは、何をしても良いのだ。弥太郎よ、龍馬よ、おまえらに何ができる? 黙って引き下がるしかなかろう」と答えます。

 さて。こういうリアルな話は一方で、十分うなずけます。会社や組織ではよく見かけられることです。営業トップの者なら多少論理や正義がくずれていても、組織を動かし他を黙らせます。他方、まともであっても成績の悪い者の意見が、通るわけもないです。
 従来なら、東洋の立場を反面教師として、龍馬や弥太郎にたいして、私も「君たち、もっと経験つんで、早く大人にならないと」と、言うところです。

 しかし昨今、まるで法治放置国家の体を見せる世相のもとでは、うんざりしました。たとえば同一人物が、昨年は「検察と政治権力が癒着している」といい、今年は「検察は、正しい」という。
 なるほど。
 そしてまた政治中枢の者ならば、違法であっても「知らない」ですむわけですから、警察も国税庁も不要になってしまいました。
 億単位の土地や現金の動きに不正があっても、国が新しくなるなら、それも良かろうという気前の良い人もおりますが、……。さらに、民族の祭司よりも私事が優先するとなると、何おかいわんやです。
 それが現代です。
 後世の史家は、平成20年代前半を、「衆愚政治の果ての、暗黒政治世界」と注をつけることでしょう。なんとなくフランス革命の後のようです。日本も恐い世界になりました。

 さて、その消化不良状態が、幕末に照射されたようなドラマでした。吉田東洋はやがて暗殺され、土佐もまた廃藩置県の波をかぶり、疲弊していきます。意外にも下士の龍馬や弥太郎が、新しい世界の主人公となっていきました。もちろん龍馬は一旦忘れられ、岩崎もそのごの会社がどうなったかは知らないわけです。明治時代に限れば、土佐出身者は薩長閥からはじかれていました。

 気持ちとしては、ドラマの龍馬が早く脱藩するのを待っています。

2.龍馬よ、女子をだましちゃならんぜよ
 一般に男女の口約束ほどあてにならないものはないです。しかし、好き合ったふたりが指切りげんまんは普通としても、念書を交わすのもへんだし。おそらく社会風俗としての結婚は、男女の契約書、念書のようなもんでしょうな。
 ただ、今夜の龍馬はきっちり口約束しましたね。
 「わしゃ、まだ何者にもなっておらんぞよ。な、な加尾、きっとそのときがきたら、迎えにくるきー」
 「うん。うれしい」
 これって、龍馬君、結婚詐欺師の台詞に聞こえたよ。男性の目からみると今の加尾(広末さん)は、妖艶役でもないし、男子をきりきり舞いさせる役でもないし(うーむ、弥太郎の場合は?)、清純な「待つ女性」に徹しています。そういう女性に、今夜の龍馬君、それはいかんぜよ。
 たしか二週間ほど前じゃなかったかな、千葉のお嬢さんと指切りした男がいたのは。

 常日頃なら、若い男女の和気藹々、青春模様としてほほえましく思うところですが、今夜は上述の(1)で現実のむごさを味わったところなので、私には龍馬が底知れない無意識「女たらし」に思えてしまいました。これもこれ、龍馬ほどの男なら、これからの史実もふまえると、常時おなごはんがダースでいても、「許される」と、なるのでしょうか。うむむ。

3.というわけで
 来週はもう少し夢のような、青雲の階梯を一歩一歩登っていく龍馬像をみたいです。
 なんだか、いつも飲む茶まで苦くならないように。星に願いをかけてみます。

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