NHK龍馬伝(07)遥かなるヌーヨーカ :龍馬のすこやかさ
龍馬の父親:坂本八平(児玉清)
剣術修行と読書(学問)とで、自分自身を磨き上げていかないと、武士は生きている値打ちがないと、坂本八平は龍馬に諭します。そして、命のあるかぎり命を使い切るべきだと言いました。思い切り生きなさい、という意味でしょね。
私はこの八平の言葉に、その単純明快な心に気持ちがたかぶりました。「そうだ、そうなんです、八平さん。そしてあなたは、末っ子の龍馬を、あなたの言葉を素直に理解できる青年に、育てたのです。よい教育をされたのです」と、つぶやいていました。
単純な言葉の中にも真理があり、人生の奥義が込められていると思います。ただしそれをうまく解釈し、咀嚼し、人生に応用していくのは、難しいです。後の坂本龍馬は、父親が諭したことを、人生にうまく使うことに成功したのだと思います。
居候:河田小龍(リリー・フランキー)
リリー・フランキーという人が日本人なのか外国人なのか、しりません。変わった名前だと思いました。その人が演じる画家・評論家の河田役がちょっとずれた話し方や身のこなしで、味わいがありました。知らぬ間に坂本家の居候になっていました。坂本家の裕福さ、心の広さがよく伝わってきました。
小龍が坂本八平から「龍馬は、伸びるでしょうか」と質問されて、「この家は、住み心地がよいです。そこで育った龍馬は優しい男になりました、……。ただ、龍馬は太いです。だからきっと大きく花咲かせるでしょう」と答えました。
小龍の台詞内容は、ときどき文脈からはずれ天然じみてくるのですが、どんな時にもすぐ絵筆を持ち、絵画でそのときそのとき感じたことを表現していました。人間は言葉以外に、別の伝達手段をもっているわけです。小龍はドラマの最後に龍の絵を残しました。この絵解きは後日にあるのかどうか、楽しみです。
ドラマ制作(1)坂本家の表現
今夜は、私が以前から感じていて、言葉にできなかったことを河田小龍が明快に言葉で説明したので、驚きました。つまり、龍馬の家が、まさに健やかな龍馬を育てる雰囲気だった、という点です。
確かに坂本家は豊かでした。だからこそ龍馬は、江戸へ留学できたのです。現代だと各地から東京の大学へ行くと、学費と生活費と交通費とで、年間200万円以上は必要です。普通の青年が過不足なく(旅行や観劇)生きるには、あと100万、合計300万円はかかるでしょう。それ以上かかった江戸時代に、坂本家は末っ子を遊学させる余力があったわけです。
しかし豊かだから龍馬が生まれたわけではないでしょう。龍馬や家族が父親に対する尊敬や畏怖や親しみは、まさに小龍が言ったとおりでした。龍馬は、「大切な父、家族」というものを味わって成長し、周りの者達も一風変わった龍馬に丁寧に接したと思います。家督を継いだ兄も、父親の意向だけではなく、「弟には好きなことをさせてやりたい」という態度でした。もちろん、乙女姉さんの龍馬仕込みは有名です。
なによりも、龍馬は父や兄や姉に対して、手紙が残っているように、心を開いていました。素直に、家族の忠告を受け入れる心の広さ、強靱さがありました。
で、一番言いたかったことは。
そういう家庭環境を表現するのに、このドラマは河田の台詞がでるまでは、映像表現だけで表現してきたのだと、感心しました。言葉や不自然な動きで、仲のよさを見せつけた展開は、無かったはずです。ドラマ全体で、「これなら、龍馬が生まれてもふしぎではない」という、そう感じさせてきたのです。
ドラマ制作(2)タイトル導入、音楽
公式サイトで見つけることができないのですが、登場人物や物語以外のことで、心惹かれる点をメモしておきます。
タイトルといえばCG手法が鮮やかですが、それはそれとして。
最初のタイトル左の、少し影の深い龍馬の顔が、若い頃の仲代達矢さんに似ているように思えました。私は渋めの仲代さんの演技がすきなのですが、もしかしたら福山・龍馬もいずれ、陰影深く心に染みこむのかもしれません。
次にガラス球の中に現れる龍馬の、特に目だけが表現された部分が最初の方にあります。この映像に私は、恐怖や悲しみをずっと味わっています。幼児期に味わったこの世に対する「不可能」を想起させるのです。龍馬の場合は、やがて暗殺されることが分かっていますから、現代人としては「変えようのない龍馬の未来」として、そこに悲しみや挫折感や、どうにもできない恐怖を感じてしまうのです(これは、相当に私だけの問題ですね(笑))。
音楽。
外国の女性が歌っている主題歌です。これは最初から打ちのめされています。歌詞が日本語なのか外国語なのか、まったく聞き取れませんが、私はこういう音色に抵抗できない質でして、それをどのように表現すればよいのか分からず、苦しくもだえています。幾分、映画「イノセンス/押井守」で流れた<傀儡謡(くぐつうた)>に哀調が似通っています。龍馬伝の主題歌に痺れます。
このドラマは世界のネイティブ音楽、濃い音楽を一杯使っていますね。これまでは時々、今夜はなかったようなのですが、ピーター・ゲイブリエル&ヌスラット・ファテ・アリハーン「パッション」(映画:最後の誘惑)がそのまま流れていたような空耳がしました(確認はできていない)。今夜だと、オスマントルコ帝国王室軍楽隊が奏でるトルコのマーチ(タイトル失念)を流していました。いずれも、わたくし、痺れる世界なのです(笑)。
いずれパンソリや浪曲やアメリカ・インディアンの、そういう土着的な音楽が使われることを期待しています。
まとめ
福山・龍馬、ますます好調です。ドラマ全体が多彩です。時代劇なのに、新しい趣向で一杯です。
来週もまた見ましょう。
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コメント
先生こんばんは^^
河田小龍先生がとても良かったです。とても近くに攘夷思想の武市半平太も暮らしていて、思想の違う人々がご近所どうしで住んでいるんだわ・・と不思議な感じを受けました。半平太も黒船を実際見ていたらきっと世界に眼がいったのでは・・と思いました。昨日、司馬さんの「人斬り以蔵」を読んでみました。
先生、空色勾玉年始に読みました。とても感動しました。死ぬことを知らずに真の恐れや別れ、悲しみを心得ているはずがない・・というところがなぜかとても印象に残りました。古事記を読み始めました。橋本治さんの書かれた少年少女用のです^^;たくさんの神々がいるのですね・・
投稿: yuyu | 2010年2月17日 (水) 22時40分
YuYuさん
読書家なんですね。
「人斬り以蔵」「空色勾玉」「古事記」
考えてみれば無尽蔵の本があって、無限の世界が描かれています。
私自身は読書好きですが、他にも好きなことがあって、時期によってはまったく読まないこともあります。けれど、ひとつひとつの世界が上手に描かれたものは、小説でも読み物でも、科学、歴史、どんな本の世界も、時がたっても色あせません。細部をおぼえているのではなくて、全体の印象がずっしり残っています。
図書一冊一冊を「人」と考えると、居ながらにしてたくさんの人たちと会話してきたことになりますから、日頃隠遁生活を自認しているわりには、結構人付き合いのよい方だと、気づきました(笑)。
そういえば、大河ドラマ。これは私にとって「世間との付き合い」だと思いました。登場人物や、役者や、制作関係者と毎週話している気分になります。京都でも時々時代の寵児、有名男優や女優に街ですれ違います。あっけなく「岩崎さん、風呂はいれよ」とか「龍馬さん、まだ近眼にはならんのか?」とか、いいそうです。
と、読書世界の人物とも、深夜に話し合うことがあります。
あんまり、それが進むと、周りから変におもわれるかもしれません(笑)。
投稿: Mu→YuYu | 2010年2月18日 (木) 05時10分