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2010年2月15日 (月)

小説木幡記:2010/02/15(月)訃報とか読書とか雑記

1.ディック・フランシス(89歳)が亡くなった。
 記事によれば(MSN産経)、カリブ海・英領ケイマン諸島の自宅で死去とのこと。本国ではなくて、カリブ海の島で天寿を全うされたことに、うらやましさを味わった。余はおそらく国内から出ることを厭うので、外国では死なないつもりだが、島に別荘があったならそこで余生を暮らすのは楽しそうだ。
 熱心な読者ではなかったが、昔読んだ数冊は印象が深かった。知り合いにフアンがいて、毎年年末に翻訳が出るのを楽しみにしていたのを、ふと思い出した。なんのことはない、最近書目を眺めていて、そろそろ文庫のD.フランシスをまとめ買いして、読んでみようかな、と思った矢先の訃報だった。驚いた。

2.SF嫌いな人が多いのだが。
 余の知り合いでSFを好む人士は実に少ない。最近では絶無といってよかろう。
 ところが、余が真に愛する図書は、実はミステリよりも、歴史よりも、邪馬台国よりも、むろんのこと純粋文学や古典よりも、SFが好きなのだ。
 そんなに乱読したわけではないが、一つ一つがとても好ましい記憶を残してくれた。

 ここ数日は、オリュンポス(上下)/ダン・シモンズを読み出した。これは数年前に圧倒的に打ちのめされた「イリアム」の続編で、完結編となる。内容は説明しても、受け入れられぬのはわかっておるので、やめておく。余も当初は「ギリシャの神々やトロイ?」、それがSFになるのかなぁ、ファンタジーかいな? と、多少迷っていたが読み出すと止まらなかった。

 ダン・シモンズといえば、以前彼の超大きわまるハイペリオン・シリーズを全巻読んで、夢の中にたゆたっておった。シモンズは、臭みのない程度の良さで、文学青年らしい楽しさがあった。ハイペリオン(これは、ドイツの詩人・ヘルダーリンに「ヒュッペリオン」という長編がある)には、さかんに英国詩人のキーツが謎々しくでてくる。もとより、英国文学になじみの深い現地の人たちや、日本の読者にとっては、「ハイペリオン」も「ハイペリオンの没落」というタイトルもキーツにすでにあることは承知の上でのSFであろう。

 ザナドゥという桃源郷のある「クーブラカン/コールリッジ」も影響があるようで、ダン・シモンズは英国ロマン派が好きな文学青年だったのだろう、と想像してきた。
 今回のイリアムやオリュンポスは、シェークスピアや失われた時を求めてが、これでもかこれでもかと背景を彩る。哲学的にSF的にというよりも、そういう雰囲気が濃厚にあるので、超絶な科学技術や武器がでてきても、すべてがロマンチックになって、読後感に深みが出る。殺伐とした金属兵器やわけのわからない宇宙論があったとしても、「人間」だねぇ~と、息をつける。余は生粋のロマン派なんだろう(笑)、だから彼我言葉はちがっても、ダン・シモンズはお好みだね。

 SFといえば、砂の惑星/フランク・ハーバート:全シリーズや、眉村卓さんの引き潮の時など、いろいろ懐かしいが、最近読んでおらぬ。日本のSF世界がどうなっているのか、そろそろ探検に出かけてもよいなぁ~。

3.現代の保田與重郎。
 最近「保田さんの、何を読めばよろしいか?」という質問を受けた。
 しばし悩んだ。
 余がもっとも影響を受けたのは「戴冠詩人の御一人者」とか「萬葉集の精神」だが、初学者に勧めるには躊躇する。前者はヤマトタケルノミコトと神人分離の悲劇がやや難解で、後者は「続日本紀」を解読するような難読性がある。
 一般には、「日本の橋」がよかろう。次に戦後のまとまった「現代畸人傳」「日本の文學史」「日本の美術史」などが読みやすく優れていると思っておる。
 今夏はいよいよ「後鳥羽院」を分析することにしておるが、これは若い頃に読んだ時は、他の著書よりもわかりにくさがあった。今回、余がどう味わえるのか、楽しみだ。
 なお、来年のとじめとしては、『戴冠詩人の御一人者』に決めておる。
 以上が、余の本日の保田観である。

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