NHK龍馬伝(03)偽手形の旅:
承前:NHK龍馬伝(02)大器晩成:泥と告白と江戸へ、江戸へ~
気にして観ると
カメラですね。
光や埃や加尾の着物の柄も含めて、普通のTVドラマでは見られない映像美を味わいました。武市半平太が、(後の人斬り)以蔵をほめるのに「精進すれば龍馬を超える」と言った後、半平太が歩いているとカメラが斜めになって半平太の屈折した心境を表現しますね。龍馬が江戸へ昇竜したことへの、鬱勃とした心理、羨望と嫉妬を表現するのに台詞じゃなくて、カメラで見せてくれました。こういう表現の巧拙まではわかりませんが、一目でそれがうなずけたのだから、成功したのでしょう。
旅をしているときの望遠効果もよいです。旅人たちが山の中の道を行き交いしている情景が、手に取るように浮かんで見えたのです。「映像が浮く」のは、相当な長い望遠レンズなのでしょう。龍馬伝からは、TVドラマの映像を好きになりました。
龍馬の素直さ
いい歳こいたオジキが「恵まれた家庭に育った」と話すと、なんだか地獄に落とされたような嫌みというかバカバカしさを味わう昨今ですが、今の龍馬ならすくわれます。
龍馬は岩崎弥太郎のように屈折していないわけです。岩崎は朝に起きてみると家族が餓死しているかもしれない不安の中にそだったわけです。20歳前後の若者が、お互いに「貧しい」とか「お坊ちゃん育ちの馬鹿息子」とののしりあったり、「君はねじくれている」と批判しあうのは、客観的にみて「よい」ことだと思います。
このドラマのファンの中には「龍馬はかっこいいけど、30代に見える」とか耳にしました。もちろん「岩崎は40代に見える」わけですが。それは大河ドラマの弱点でして、場合によっては50代の女優さんが10代の娘役を演じることもあるわけです。
ただ、龍馬の素直さは、まるで20前後の青年のように、すっきり味わえました。特に親父様の掟三つがよかったです。さっきのことなのに忘れましたが、剣術に励め、贅沢するな、色道に迷うな、でしょうか?(笑) この戒めを「父の愛」と大切に思う龍馬の雰囲気は素直でよかったです。だいたい、物事は単純な中に真理があります。目的を忘れるな、衝動買いせずに金を大切に、異性に沈没するな! この三訓を守ればほとんどの人間は聖人君子になれますよね。
その単純な道理を、龍馬は父親が言ってくれたことに感謝しているわけです。好青年です。
付録:岩崎弥太郎の生家
高知県安芸市に弥太郎の生家があるそうです。
驚いたのは駅を下りて30分かかるということです。相当な田舎ですねっぇ。(私は駅をおりて徒歩3分なので!)。こぎれいな茅葺き農家でした。弥太郎は鳥かごをいくつも背負って、鳥を売っていたという設定ですが、ちょっと想像がつきません。昔の人は餓死すれすれで生きていた人が多かったようです。
いや、なに。
財閥でなくても、年間数億円の仕送りがなくても、餓死せずに元気で生きていられる現代に感謝しているのです。
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コメント
先生こんばんは^^
弥太郎は龍馬と同じ時期に土佐に生まれ育って、でも今日までのお話は脚本家さんの創作なのですよね?
弥太郎伝でも良いなと思いました^^*
演出家が大友啓史さんという方らしくて、その方が気になっています。「ハゲタカ」という映画を撮られたそうです。半平太役の大森さんが出ているそうなので見なくては。と思っています。
京都も雪だったのでしょうか。
投稿: yuyu | 2010年1月18日 (月) 00時17分
YuYuさんこんにちは
京都の雪は、たぶんまだ降っていないと思います。
数年に一度、市内で10センチ、十年に一度30センチ程度積もるところです。ただし市内でも北の方は雪景色を毎年みることができます。
Muのすんでいる宇治市は、京都市よりも気温が2度程度高いです。普通は早朝で5度くらいですね。今朝の宇治市の外気温は2度cでした。昨日は近所の池が凍りましたから、明け方は零下だったのでしょう。
ドラマと歴史の違いはわかりにくいです。龍馬と弥太郎が知り合いだった、後日一緒に仕事をした時期があった、程度しかわからないでしょうね。
作家や脚本家は、日常の関係を作り出していくわけです。子供の絵って(私のことです)、風景を描いているのに、ひまわりとお日様と小川しかないです。その他に、実際は土とか石ころ、空気とか木々、草があるけど描けません。
歴史は点と点しか記述できないと思います。他の何もない空隙を埋めるのは作家や脚本家の仕事です。
だから、昨夜の偽手形はどうか知りませんが、弥太郎が龍馬の江戸行きに発狂するほど羨望したのは事実でしょうね。
(私はドラマを見るとき、真偽を区別していません。誰にもわからないのだから、本当らしく感じられれば、それが真実です)
投稿: Mu→YuYu | 2010年1月18日 (月) 04時39分
先生、こんにちは^^ (ほんとにうるさくてすみません。。)
先生のお返事を読んで、そうなんだと思いました。司馬さんの竜馬がゆくの中で、泥棒の藤平衛の配役は誰だろう・・と楽しみにしていたのに、それは司馬さんの全くの創作と知りました。
京極夏彦さんの巷説百物語を借りてきて読み始めました~
投稿: yuyu | 2010年1月27日 (水) 14時27分
YuYuさん
小説はおもしろい人物を創造しますね。
大河ドラマではよく出てきます。
龍馬伝は、いまのところ新人物がわかりません。
篤姫も思い出せません。
風林火山は、山本勘助自体が創造人物説もあります。
功名が辻では、香川さんが役をした忍者でしょう。
義経では、彼の恋人の一人とか、新選組では、獅童さんがなった役。
今回の龍馬殿は、どんな人が完全に空想人物かたのしみです。
投稿: Mu→YuYu | 2010年1月28日 (木) 16時30分