伊勢参り(1)「楽」近鉄ビスタカー20000系・二階建て車両
2010年1月下旬に伊勢初詣にでむいた。その、人の波にもまれた伊勢神宮のことは後日にまとめておこう。
このたびは、行き帰りに乗った近鉄二階建て電車の記録とする。
車両名は近鉄ビスタカー20000系「楽」といい行楽用の二階建て電車である。調べると時速120キロのスピードが出るらしい。実際の、体感では極めて静粛で、自動車なら時速40キロほどの安定した走行感覚だった。何故かと思って車窓を眺めながら思ったが、近鉄のこの伊勢路はとにかく直線が長く続く。後に地図で区間区間を眺めると延々とした直線が続く。定規で決めたような線路だった。
それだけではない。
つくづく近鉄・特急車両の快適さを知ったのは、帰路京都駅でJR奈良線に乗ったときだ。桃山駅と六地蔵駅の、比較的直線が続く箇所を走る様子が、いまでも笑い出すくらい、車両が分解するような過激な走行騒音だった。息を切らして走りに走るという様子だった。この点では、さすがに私鉄・近鉄のビスタカーだけのことはあると、感心した。もちろんJR車両の乗り心地をけなしているのではない。その過激な走りっぷりと、ビスタカー「楽」の音も振動もない滑るような走りの、落差ににんまりしたわけだ。
横揺れもない。
新幹線以上に静粛だった。と、かけば新幹線は時速300キロ、「楽」はせいぜい時速100キロの違いを指摘されよう。ただしかし、私の想定する「二階建てトロッコ図書館列車」が時速300キロで走る必要もないし、せいぜい時速40キロ程度のゆるゆるとした雰囲気で音もなく滑空するように走れば、それで要求項目をパスしたことになる。おそらく新幹線よりも「楽」の方が建造費は安いだろう。
↑4号車の階段状展望席
往路は近鉄・京都駅で、最後尾車に乗った。4両編成の4号車で、帰路はこれが先頭車になった。車両編成の前後どちらからでも運転できるのは便利だ。蒸気機関車だと回転させる必要があり、難儀なことだが、マニアにはそれがたまらぬのだろう。
驚いたのは正面運転席に向かって階段状の座席になっていることだった。映画、シアターの雰囲気を満喫した。特に帰路は夜だったので、行き交う電車に見とれていた。図書・雑誌を閲覧するよりも、前景を眺める方が楽しいというのが実情だった。しかし毎日乗っていたら、やはり快適な席に座って読書するだろう。
↑本来、二階建てトロッコ図書館列車の考究に、全面ガラス張りの運転席を論評しても意味がないともいえようが、しかし開放感ということでは、左右の窓だけよりもこの天井に至る透明度が外界を透かして見せる趣向は捨てがたい。そういう雰囲気を捨て去ったなら、なべて人間のすることなすことは、起きて半畳、寝て一畳ですんでしまって歌も色気もない。
(右写真はサンダーバード→)
よく見ると正面の一部は貫通するドアに見えた。どういう状況を想定したのかは知らないが、車掌や運転士は側面の出入り口を使っていたから、この正面ドアから出入りするとは思えない。以前、長浜に行ったとき、北陸線のサンダーバードが、確かに正面同士でくっついていた。電車というものは、そういう使い方をすることもあるようだ。
↑4号車の一階席
目当ての1階部分だが、広い「多目的サロン」があった。このまま図書館列車に応用するなら、ここを雑誌や新聞を読む軽読書室、あるいは談話室としてよかろう。↑写真はその隣の座席で、包み込まれるような感触は重読書室としての機能を十分に果たす。
問題は、書庫をどこに置くのかだった。1号車と4号車とはそれぞれ階段状座席になっているので、その一階部分がどうなっているかの判断ができなかった。単純にデッドスペースなのか、何かの用にたてているのかは、後日の調査を待たねばならない。要するに、書庫スペースがない。2号車、3号車はハイデッカーなので工夫すれば床下書庫を造作できるかもしれない。一番よいのは、書庫車の新造となるが、これは新造よりも他の車両を改良する方が現実的だ。特急車両でなくてもよかろう。
もうひとつは、私の気のせいかもしれないが、走行中に2階よりも多少振動があったということだ。一般に重心の低い方が安定しているように思えるが(京阪ダブルダッカー車両の1階)、車両の設計によってはそれが異なるのかもしれない。ただし、その揺れはわずかに感じられたので、偶然ないし気のせいかもしれない。
参考
近鉄20000系電車 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鉄路の名優「20000系 楽(RAKU)」
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コメント
近鉄は標準軌なのですねぇ
近鉄のスムーズさに感心した後、JR奈良線に乗ると(車両が分解するような過激な走行騒音だった)とありますね。
かなり(過激な)文章表現なので思わずプッと吹き出しました。
すぐに、おやっ?ということはひょっとして近鉄も(狭軌)じゃない、のかしら?
調べると新幹線と同じ(標準軌)のようですね。
線路の左右の間隔(軌間)のせいだけではなく車両の作りもあるのでしょうが、どう考えたって幅が広い方が安定しますわねえ。
関西は近鉄も阪急も阪神も京阪も(標準軌)だとか。
東京の私鉄は実に様々です。
(標準軌 1,435mm) 京浜急行など
(馬車軌 1,372mm) 京王電鉄など
(狭軌 1,067mm) 小田急、東急、西武などなど
地下鉄は乗り入れの関係から上記3種類が入り乱れています。
東京は日本で最初に鉄道を敷設した土地ですからいろいろ試みたのでしょうか。
この鉄道の(軌間)のことも(ゲージ gauge)ということを初めて知りました。
MuBlogによく出てくるNゲージは9mmだそうですね。
本物の電車のゲージだけでも多種多様なのに模型はスケールもありますわなあ・・・。
単純な当方の脳細胞ではとてもついていけませぬねえ。
投稿: ふうてん | 2010年1月27日 (水) 21時56分
ふうてんさん、お早うございます。
コメント投稿が昨夜の10時前後になっています。失礼しました、この時刻にはMuの脳は闇に溶け込んでシャットダウンされていた、……。それは大げさで、字句のごとくスリープ状態でした。生活環境の異なりを痛感しました。
そして「近鉄は標準軌」というフレーズに、頭をトンカチで殴られたようなショックを味わいました。そうです、一般に本邦私鉄は国鉄の狭軌に対応して、世界標準軌だということを、まったく完全無欠に、「楽」に乗っているとき思い及ばなかったのです。
自動車でもそうですが、車輪幅の広い方が車道を占有する分だけ、安定していますね。この近鉄と旧国鉄JR奈良線を比較したのは、ハンディがありすぎます。それにまるっきり気づかなかったMuは、「図書館列車評論家」としての看板を下げねばならなくなります。
ショック。
(いやしかし、看板は予備が数枚あるので、致命傷ではありません)
ふうてんさんは、こういう所によく気がつかれましたね(笑)。文明開化時代の漱石をたしなむ人は、視野が広いですぅ。
ところで模型のゲージとスケールですが、これは何度考えても頭が混乱してくる話だし、ことは思想信条にかかわりそうなので、あまりしないことにしています。要するに、なんらかの歴史的事情で世界標準、日本標準、分派標準がことなって、お互いに相手を分派呼ばわりするので、まるで政治の世界の様相があります。ただ、最低限の土俵はあります。
Nゲージは、一般に(苦笑:一般論です)レール幅9mmですが、スケールは国内物は1/150で、国内新幹線と洋物は1/160のようです。
その上のは、HOと言われたり16番と言われたり、小生もまともには書けません。
ただしレール幅は世界も日本も16.5mmのようです。さっきドイツのレールと和製のレールを金尺で計りましたが、その通りでした。スケールは1/80とか、1/85とか諸説あります。
……。
実はその前後に「ナロー」という規格があって、1/80の汽車が9mmのゲージを走ったり~。
もう止めましょう。
要するに、ふうてんさんの話では、関東の私鉄はレール幅が入り乱れていて、各社の車両・台車はすべて可変タイプにしないと効率が悪くなるわけですね?(爆)
(昔ですね、高校生のころまでは、京阪三条駅に、なんと近鉄電車が乗り入れていたのです!)
投稿: Mu→ふうてん | 2010年1月28日 (木) 08時27分