NHK坂の上の雲(2009-1)少年の国:近代日本の少年期
秋山好古(よしふる)中尉の騎兵将校の軍服姿が似合っていました。「ろっ骨」と呼ばれていたようで、骸骨姿を連想しますが、明治期の陸軍制服の雰囲気がよくでていました。
松山はどんな土地
四国松山は明治時代どんな地方だったのだろうか、と想像をたくましくしました。漱石の『坊ちゃん』は秋山兄弟や正岡子規・兄妹が少年少女だったころよりも、20年は後の世界だったのでしょう。
松山は幕末に官軍ではなかったから、新政府に莫大な賠償金を支払って、国内の士族も百姓も町人も疲弊し、秋山家は父親が愛媛県の県庁に勤めてはいたのに、家族は喰うや喰わず、餓死寸前の様子でした。
そしてしばらくして秋山兄弟の兄・好古は大阪の師範学校が学費無料という話を聞き、大阪に出向きます。みんな船で出発したわけです。松山は海の国だったのでしょうか。
原作では都会へ出向く過程がもう少し複雑で、小学校の助教とかあれこれあるのですが、ドラマではいつのまにか東京の陸軍大学校に入っておりました。もちろんこの経緯もいろいろあるのですが、それは原作に任せましょう。
明治の青年像
要するにこの時代は、特に地方の貧しい秀才達は、なんとか帝都東京に出向き、自らの立身出世を夢見たのです。末は博士か(太政)大臣かと言われるのが郷党のほまれ、男子一生の夢、青雲の志だったようです。
私は若い頃はそういう感覚を少し疎ましくおもった時期もありました。特に好古が福沢諭吉先生の学問の進めを弟に見せるところがありましたが、これも違和感があったのです。実はというほどの事ではないのですが、十代の私は「あばらやで清貧のまま生を終える」ことを夢見ていました。いささか牽強付会ではありますが、だから最初は「大学図書館司書」とか、後日いと小さな大学の先生という職業を選んだのです(笑)。そういう青年期の残滓をいまだメモリーの片隅に少しばかり掃除しないままに持つ私にとっては、明治期特有のくさみある学問の進めとか、立身出世とかいう青年の気持ちは、すべてがすっと胸に納まったわけではないのです。
歴史は当時に立って眺めたい
ただしかし司馬遼太郎さんの原作を読んでいるとき、そして昨夜のドラマを見ているとき、「明治」という全体像をその後徐々に身につけてからは、心から「秋山! がんばるのだ!」と声を上げていたのです。貧苦。そうです、本当に当時の貧苦は現在とは比較にならないほど厳しい世界だったと思います。そのなかで支える門閥なく「なにがしかの記憶力と、物の道理がわかる」青年たちにとっては、学び、上級職に就き身を立てるのが一番の近道だったのではないでしょうか。餓死・貧窮か、あるいは博士か大臣か軍人か。どちらかを選ばざるをえないのなら、そりゃ餓死するよりは勉強に邁進するでしょう。
その時、師範学校と陸軍士官学校とが授業料が無料だったようです。この二つとも明治期のなかで次々と改革されていったので、どの時点で、どういう内容で、どういう青年達がその道を選んだのかは、私には勉強不足ですが、明治政府は教育と軍事とに資金投下をすることで、新しい国作りを目指したのだと思います。
やがて10歳年下の弟の真之(さねゆき)も兄好古の支援を受けて東京帝国大学の予備門に入ろうとしますが、このあたりも、後日に南方熊楠が予備門で誰かと喧嘩して辞めたとか、いろいろこの時代の学制や現実を詳細には知りませんが、真之は結局帝国・海軍兵学校に入るわけです。このあたりは、広島の呉が関係してきて、私にはなつかしい描写が多々ありました。
役者
みんな好かったです。特に正岡子規の青年時は、よい役者ですね。
好古は、明治の軍服がぴったり似合っていて感心。
真之は、以前NHKのドラマ「聖徳太子」で気に入りました。海軍軍人、なかなかによい役です。
今後が楽しみですが、現実の秋山兄弟もスターじみた好男子だったと噂に聞きます。真之の試験に関する「山カン」もすごかったとのこと、ドラマでどんな風に描かれていくのでしょう。
一つ。
兄好古は、殿様の出す奨学金を真之が希望したとき、断固として拒絶します。つまり、将来国に奉公する身こそ「よし」と決断したわけでしょう。当時の好古の気持ちを想像してみると、新たな明治日本「建国」という意識があったのではないでしょうか。
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