NHK天地人(42)上杉(武田)菊姫の死
病床の京都・菊姫のもとに江戸から景勝がはせ参じてきます。菊姫の病は結核なのでしょうか、喀血がありました。
菊姫は景勝に、まなじり決して「側室を持て」と言います。景勝は「養子をもらう」と答えますが、「今の上杉に、どこから養子が来るのですか」と菊姫に言われて、景勝はうなだれます。
菊姫の父は武田信玄でした。菊姫は言います「兄の勝頼が側室の子だった故に、家臣がまとまらず、武田は滅びた」と。一昨年の「風林火山」にてらすと、つまり武田家最後の勝頼は、諏訪の由布姫の子でした。武田だけでなく家督相続は難しいこともあったと想像します。実は、信玄には正室の実子が別にいましたが、その正統後継者の奥さんが今川家の出身だったので、実父信玄と不和になり、結果的に信玄は後継者を滅したことになります。その後の勝頼は正式な後継者として位置づけられないまま、信玄の後を継いだわけです。
菊姫はもらします、だからこそ私が子を産まねばと思ってきました、「謙信公の血を引くあなたの子でなければ」と。それがかなわぬ今は、なんとしても側室を持ち、景勝の子を造ることが、大名家のあるじの勤めと。
たしかに謙信の姉の子が景勝で、彼自身が養子でした。そのために上杉家には数年におよぶ内紛が生じました。血への信仰、こだわりは強かったと想像します。血へのこだわりとは、今風にいえばDNAへのこだわりとでも言えましょうか。
跡継ぎは直系血縁、長男子が求められたようです。その為には、正室は亭主に側室を勧めることさえ辞しません。そのことで「家」が継がれ栄えるという基本的な考えがあったのだと思います。
今夜の菊姫の雰囲気には、せっぱ詰まったものがありました。自分には子ができない、しかしよい家から養子がきてくれるほど上杉は栄えていない、しかも養子を迎えると景勝の血が途絶える。なんとしても、景勝に側室を迎え入れさせないと上杉家が滅びる、と思い詰めた雰囲気でした。
ドラマの背景には、景勝の菊姫への思いやりがあります。神話、万葉時代以来男女は1:1の付き合いが普通で、それが壊れると相手が天皇でも、嫉妬で刃向かった御姫様がたくさんいます。もちろん正室、側室、側室間で権勢争いも生じます。それにあえて堪えて菊姫は景勝に側室を求めました。景勝は、菊姫の気持ちを思い、これまで側室をもうけませんでした。
菊姫は、景勝、兼続が大坂城へ挨拶に行っている間に、京都伏見の上杉邸でなくなりました。生前の書状が会津のお船を通して、兼続に届けられます。
十二年間も、兼続の大切な人(お船)を自分の手元(上杉の京屋敷)に引き留め、自分の世話(相談相手)をさせたことを、心からわびると。
武田信玄の娘として上杉景勝に嫁ぎ、実家の滅亡を経験し、また嫁ぎ先の上杉の零落を味わい、跡継ぎをもうけられなかった菊姫の気持ちが、ドラマを通して切々と伝わった今夜でした。
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