NHK天地人(33)五大老という合議制の成立ドラマ
直江兼続さんと石田三成さんが髭をたくわえました。つるんとした若い顔よりも、格段に好ましくなりました。明治の日本人は諸外国にでかけて大抵髭を蓄え、年令相応の雰囲気を出したようです。日本人は小柄ですから、少年と見誤られる話はよく聞きますが、髭があると大人扱いされたのでしょう。今夜の兼続も三成も、32回までに比較すると破格の変身を遂げたと、感じ入りました。
やはり男は顔ですね()。
お二人とも現代のイケメンというのでしょうか、今夜だから真意を漏らしますが、これまではまるで馬鹿っぽい色男としか見えていなかったのです。ああいう白々しいヤサオトコに、J達が眼差しをむけるのかと想像すると、この国の行く末もながくないと、ずっと内心にがにがしく思っていたのです。それをなぜblogに書かなかったかというと、人(J)達の趣味にケチを付けるのは良くないと、従来固い自訓・自戒があったから、それに従ってきたのです。
今夜は、言いようのない感動を受けました。
まさに積年、私が心に描いてきた「男達の挽歌」世界でしたね。それも二人そろって! 数えると、早くに上杉景勝さんはお気に入りでした。景勝は貫禄というほどの年令ではないのですが、安定した渋みがありました。そのそばをうろうろしていた兼続や三成は、そうですねマズイ生クリームでべとべとになった、食いさしのバケツ・パフェという味わいでした。ところどころ光るところがあったので、ずっと見続けてきましたが、毎週半分は消化不良を起こしていた次第です。
もういちど言います、男は顔です!
今夜の兼続も、三成も、景勝も「顔」全体でドラマをもりあげてくれました。
分析するなら、髭を蓄えてこそ景勝、兼続、三成の現代イケメンは大勝負を無事乗り越えたと、心からの喝采をあげました。それぞれが往年の大河ドラマ、ガクト謙信や、勘助に接近してきましたね。これほど嬉しい日曜の夜は、昨年末以来のことです。
見どころですか。
一つは、家康はじめ諸侯が秀吉にいろいろ世辞を述べたてる際、それを一々喜び聞いていた秀吉が「ところで、上杉殿は言うことないか?」と、だまったままの景勝に(お世辞を)促します。
で、景勝さん「はあ」と、うなずいただけ。
この時、座が一瞬、シーンとなりました。
一つは諸侯うちそろって「お拾い」に忠誠を誓った後、秀吉が席を外しました。すると、徳川さんや毛利さんが、はげしく石田三成の失政(関白秀次の切腹など)を詰ります。三成は「いたらなかった」と頭を下げます。この時! 日頃口数のまったくない上杉景勝が、突然ぴしりと座を緊張させます。
「三成は家臣。主君の決めたことで、三成を責めるのは姑息」。よいセリフでした。家康さん、もろもろ、あっけにとられていました。痛快でしたね。
以上二つの場面で、今夜の上杉景勝は、男ぶりをあげましたね。
諸侯の様子や三成の重責・重荷を知った直江兼続は、伏見城の天守閣まで三成を誘い出し、夜が明けるまで「五大老」(五奉行)という合議制による豊臣政権を語り合います。
二人は共同戦線を張ったわけです。
しかしこれを秀吉に納得させるのは至難の技です。秀吉はすでに絶対専制君主の立場を取っています。そこで、前田利家に二人で相談し、役割を分担の上、秀吉に進言します。
もちろん、秀吉は激怒します。自分が決める国政をなぜ、家康を含めた諸侯に任せねばならぬのかぁ! と。
前田さんが兼続にふります。「上杉は、苦労してきたのです。のう、兼続」
兼続 「わが上杉謙信公は一代の英傑でしたが、巨星墜ちた後、後継者問題で越後は疲弊しました」
秀吉 「わしの後継者は、お拾いと決まっておる」
と、そこで三成クククッツと嗚咽する。「お拾いさまのよちよち歩きを見ると、私は泣けるのです」
秀吉確然として自分の死後、痛々しい息子の行く末を想像する。
前田 「この二人ほど、忠義な者はおりませぬ」
秀吉 「おお、わかった」と、納得。
兼続、三成は再び天守閣に戻り、秀吉を納得させたことに、「芝居がうまく行った」と大笑いする。
しかし、最後にわかるのですが、三成は本心から兼続の友誼に、そして豊臣の行く末を心配して泣いたようですね。
以上、ドラマの世界であっても。
それぞれ役者が所を得て、歴史の機微を上手に演じると、まるで眼前に兼続や三成が語らっているかのように、引き込まれてしまいました。よい一夜でした。
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