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2009年8月 2日 (日)

NHK天地人(31)大義なき花戦:北の政所と、淀君

承前:NHK天地人(30)利休の切腹と秀吉の偉光

 肥前名護屋城で、上杉景勝は、直江兼続にもらします。「幾度も戦を経験してきたが、これほど空しい戦は無かった」と。ご婦人連の花戦(はないくさ)と変わらない、勝っても負けても無意味。そのうえ、この朝鮮出兵・明国打倒の戦(いくさ)はたちが悪い。大義が少しもない、と。

 今のところ、新たな史料が出ない限り、秀吉の妄想と悲嘆(鶴松の死)の結果、さらにドラマでは信長公のアジア征服野望をトレースした結果としか、考えようがないです。
 国史上、重大な瑕疵を残したと言って過言ではないです。
 日本での重大な危機は、白村江での敗北(この大義は、唐からの脅威を守り、朝鮮半島を沈静化するため、滅亡百済からの援軍支援要請に応じたという、日本国の義があります)、間断なき二度の元寇(これは、大元国つまり中国が、大量の朝鮮兵を先兵として侵略してきたことへの、応戦という義があります)。そして、難しい問題ではありますが(笑)、大東亜戦争(これは西欧列強の日本封じ込めに対する自衛戦という義があります)。

 この三度の危機に対して、日本が戦ったわけです。
 もちろん、そこに義を一片たりとも認めないのが、現代でも大多数でしょう。ともかく日本は悪い国と言わないと気のすまない人が多いです。白村江と大東亜戦争の敗北は、朝鮮半島を軸にした日本の侵略戦争としか言わない人がいます。そうなると、元寇ですら、中国漢民族正史からすると、北方モンゴルからの侵略王朝が勝手に朝鮮を征服し、その兵を奴隷として、勝手に日本に侵略した、という考えさえあります。
(私などは、それはモンゴルが中国文化に馴染んだ結果と考えています。元寇は、それまでの初期モンゴルがヨーロッパに攻め入ったのとは雰囲気が異なります。もっと、隋や唐の100万兵規模の朝鮮半島侵略に似た、伝統ある中国王朝の持つ独特のシステムを感じます)

 さて、近現代史は私も未知のことが多いので、大河ドラマで書くのはよしておきます。
 それよりも、ドラマを観る限り、朝鮮出兵(つまり明国出兵への経由地)の理屈はどう考えても成り立ちません。悪しき歴史の通例からすると、石田三成さんが言っていたように、国内基盤を固めるために、確固とした統一国家システムを作るために、各大名の出費疲弊を適度にもたらし、なおかつ半島や大陸を、大名に戦功として与える「力」を作りたい、ということでしょうか。なんとも身勝手な考えですが~。いやしかし、当時のヨーロッパ諸国はそれを神の御名によって成したわけですから、秀吉だけが妄想のトリコだったとは言えません。

 ただ、どれほど時代の中で物事を判断するのが正しい世界観だとしても、今の文明国では奴隷制が無い現代からみて奴隷制が人類の恥だったのと同じレベルで、十字軍の正義は今の宗教観からしてもめちゃくちゃ野蛮なことだったと言えるのと同じレベルで、……。この時の秀吉の海外派兵は、義にもとることだったと私は思います。

 以上の基本的な考え方のもとで、私は今夜のドラマを鑑賞し、おもしろく見終わりました。
 上杉景勝の、口ひげを生やした戦(いくさ)装束は非常に似合っておりました。
 菊姫が惚れるだけありますね。
 直江兼続が二女のおむつを替えるドラマ造りが、とても良かったです。家老の家に、年老いた婆様しか居ないなんてあり得ないことですが、女衆もたくさんいたでしょうが、ドラマとして兼続のおむつ換えは出色の味わいでした。

 セリフとしては、子を亡くし訪れる者も居ない淀君のもとへご機嫌伺いにきた菊姫に対し、淀君が<信長の姪を、信玄の娘が慰め力づけるとは、~>と言いました。これがとてもぴったりして面白かったです。ドラマでは、いつもは「ええ役」の北の政所に対して、淀君と上杉令室菊姫が共闘しますね。この共闘は、後の上杉が西軍(つまり、淀君派)に付く伏線となります。対する東軍(徳川家康)は、実は北の政所と同じ気分なわけです。
 おもしろいというか、歴史もごくささいな、人の思惑が相互に絡まって、大きな結果を招きます。もちろん、学者は社会経済的な必然をもって歴史を解釈しますが、実は、歴史には別の見方もあると思います。

 さて、この淀君と菊姫の共闘には、少し違和感もあります。二人がともに当時名門の出だからです。歴史のある名門というよりも、時代風潮としての名門でしょうね。織田信長も武田信玄も、武門のエリートして見られていたのです。そこに上杉謙信を加えると、軍事エリートという役者のそろいぶみになります。鉄砲使い、騎馬兵使い、軍事天才毘沙門天の化身、……。かたや秀吉は、三成の重用でわかるように、軍事天才というよりも、破天荒政治家と経済官僚の組み合わせによる天下統一と見えます。
 淀君も菊姫も武門エリートとして、秀吉や北の政所を、幾分さげすんでいた、そういう視点も味わいました。現実は、秀吉子飼いの大名達(北の政所子飼いでもあった)はほとんど、北の政所に付き、つまり家康の東軍に走りました。

 ながながと記しましたが、たしかに朝鮮半島で「義」や「愛」の旗指物をうちたてるとは、景勝も兼続も、まことに空しい思いに突き動かされたことでしょう。この時の海外派兵は、当時も今も、大義がないです。

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