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2009年7月26日 (日)

NHK天地人(30)利休の切腹と秀吉の偉光

承前:NHK天地人(29)直江兼続の見た天下統一

 今夜あたりからでしょうか、秀吉が狂いに狂いだしたのは。なぜ歴史に残るいくつもの狂の跡を残したのかは、以前から考えてきましたが、精神病理学的なケースとして想像出来るだけで、その歴史的な解釈はまだ知りません。
 どのドラマでも秀吉晩年の極端な猜疑心や誇大妄想を表現してきましたので、普通には権力者のたどる典型として考えても良いのでしょう。たとえば後日に話題になる甥の秀次に対する仕置きは、本人だけではなく関係側室も含めて数十名が殺されています。

 秀吉は、旧師・信長をトレースし出したのかも知れません。信長公なら、このような場合、どう仕置きなさったのか、……。と、考えたこともあったのでしょう。

 利休を切腹にまで追い込んだのは、石田三成が直江兼続にもらしたように<死までは考えていなかった。謝ればすんだことだ>が最初の一歩だったのかもしれません。秀吉の言い分や世間の噂では、利休がどうでもよいような茶器に法外な値段を付けて思うままに価格操作をしている、……。とか耳にしてきました。今夜の利休には、頑固さはあっても、そういう堺商人的な側面はなかったです。

 当時の事情は不明ですが、結果として、千利休は後の茶道を嗜む人達に、ひとつの楔を打ち込んだのは事実です。つまり、茶の湯の道とは、刀を振り上げて血を見せることはないが、奥にある精神は武士の「命がけ」と同じところがある、という「生き方」の鑑だと思います。権威権力富貴になびてはいけない、茶の湯の世界を汚してはならない。それは俗世のことで気持を汚さぬことが、茶の湯の道に通じるということでしょうか。

 生死の狭間に立つ武将たちが、茶室で信頼できる人から、あるいは自ら茶を点てて、深々と相対面するを一期一会(いちごいちえ)と感じ、今の生を味わい、明日の血なまぐさい「死」を克服する風儀は、情理かなったセレモニーだと思います。
 
 さて、今夜のテーマは「奥方人質」でした。これは「狂」とは言えません。後の徳川幕府も参勤交代で奥方は江戸城下の藩邸に住んでいました。また入り鉄砲(鉄砲火器の江戸流入)に出女(大名妻女の江戸脱出)を激しく監視したのですから、秀吉を責めるなら徳川家はもっと狂だったとなります。

 奥方を人質にとるとは、秀吉一流の知恵かもしれません。
 今夜の菊姫は武田家の数少ない縁者で気位の高い女性でしたし、またドラマでは上杉景勝を愛していたので、自決寸前にまで問題が大きくなりましたが、他の大名家の奥方がみんなそうだったとは言えないと想像しました。山深い地方から、花の都に出向くのですから、国元に帰るのが嫌になった奥方もいることでしょう。また都で秀吉が大茶会、花見をするにしても、北の政所や淀君の手前、むくつけき男子大名関係者、公卿だけでなく、各大名の令室を招くことで、淀君なんかの機嫌をとりたかったのでしょうか(笑:あんたが一番、と)。実は、奥方人質の悲劇は10年近く後で、細川ガラシャ夫人(明智光秀息女)によって体現されます。しかしそれは後日のこと。

 苦しむ菊姫を見かねてお船さんが、「私が京にご一緒して、話し相手になります」という場面が見どころだったです。新幹線も飛行機も無い時代に、お船さんは兼続との子供二人を残して上京する決意を見せたのですから、相当な烈女だっとも言えます。主君の奥方を守ることが、上杉を安泰にし、それが自らの亭主や子の安寧を招くことであると、お船さんは考えたわけです。ドラマの良さは、その決心を菊姫に見せるまで、時間をかけたということです。お船さんが考えに考えて、そのような結論をだしたというプロセスが上手に描かれておりました。

追伸
 兼続さん、景勝さん、三成さん、それぞれ年令を経て少しずつ銀色になってきました。ドラマの中での役造りとして、役者はなにかしら変化していくものだと分かりますし、青々さが取れていき、一皮二皮むけていく男子の成長は良いものですなぁ(笑)。

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コメント

今の大河に引いてしまうための罵詈雑言なのかもしれませんが、人の悪口を聞いてるのと一緒でそればっかりだといい加減聞いてるほうが、その発言者に対し引いてしまいます。
あいかわらず、この傾向が止まらないのにいささか閉口
その点、此処へお邪魔するとホッとした気になります
こき下ろしへの追従の、こき下ろしという連鎖に陥らず純粋に歴史が語れるからです。
ということで久しぶりにお邪魔しました。
三成が利休を死に追い込んだかどうかは実際 歴史の七不思議、、、真相は闇ですが。
ただ三成が秀吉への忠誠、自分が主宰者たる豊臣政権という組織に拘りすぎた面は事実だと思います。
彼を見てると、どうしても新選組の土方さんとだぶるんですよね!
主として司馬さんの描く土方像に影響されてると思うんですが、、、つまり彼も 何よりも心血を注いだのは新選組という組織、、そのため過剰なルール作りまでして同士を数多く粛清しています。
組織愛が人類愛に勝ってしまったんでしょうね。
それと同じものを三成にも、、、彼も後年 組織作り、規律に拘りすぎたため 朝鮮出兵の勤務評価とうでいろんな武将から反感を買い、、、後年の関が原への悲劇となるわけですが・・・

だから今日の見ものは 組織愛の三成と人類愛の兼続の対比、、、なかなかよかったです!

あと秀吉と利休の対比   
長いものに巻かれろ主義と世渡りでトップに上った秀吉と、自分の道(自ら極めた茶道も含め)、道理にこだわった利休の対決   この二つの対比が見れ、なかなか良かったと思います
本当に、そんなに貶めるほどの内容でもないと思うんですがねぇ~    

投稿: taira | 2009年7月27日 (月) 00時38分

こんにちは、Tairaさん

 今年の大河ドラマ天地人は、鉛筆のスケッチとか、淡い水彩画の気分でみています。
 それとなく歴史の輪郭があって、個々のエピソードの重みとか濃さは、求めていません。

 毎週、日曜の夜に、食事の後か途中でながめて、ふむふむとか、あははとか、上手にならはったとか、そういう気分で見ています。

 不満といえば、ここ何年間も、幕末か戦国時代ばかり選ばれているので、NHKの関係者達が怠惰なのかと思っています。縄文時代とまでは言いませんが、せめて卑弥呼時代から昭和まで、まんべんなく大河ドラマのネタをさがして、一年間楽しませて欲しいと考えています。

 石田三成とか千利休とかの歴史はさまざまに語られているので、Muが新解釈をする余地はないです。今夜のドラマでは、そうだったんだぁ~、とそういうスタンスですね。

 ということで、コメントありがとう御座いました。

投稿: Mu→Taira | 2009年7月27日 (月) 05時08分

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