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2009年7月 9日 (木)

小説木幡記:2009/07/09(木)ソニック・イエローと瞑想

 昨日は水曜日だった。
 一時間目には、メディアとしての図書館史を講義した。授業の中でも好みの科目なので、そろそろ半期終わりに近づくと「無事終わりそうだな」と一安心する。
 部屋に戻ると、すでに、締切には遠い、事前の課題草稿が届いていた。しっかりしていたので安心した。返事をすぐに出しておいた。

 上階の資料室にいくと、秘書さんが「お荷物、届いていました」と知らせてくれた。
 部屋に戻り開封した。

 KATO社製のNゲージモデル、JR九州の特急、883系ソニック・黄色、五両編成だった。
 空腹だったので、ソニック・イエローをそのまま机上において、極早朝に買っておいた冷麺を、まず食した。

 旅行する習慣がないので、実車は見たことも乗ったこともないが、見ているだけで吸い込まれそうな、この世のものとは思えない斬新なデザインだった。幾つかの受賞をしたらしい。

 邪馬台国周遊図書館ジオラマにのせて、スイッチを入れた。何度か周遊させてモータを慣らし、やがて最高速度にした。
 そして、気がついた。
 ソニックは何のためらいもなく、急カーブをこともなく通過した。
 本当は、必ず脱線するはずなのに、そのままなんの苦労もなくカーブを通り過ぎていった。
 急カーブでの車体の姿が、いつもと違って見えた。
 !!
 思い出した、振り子機能内蔵のNゲージ。
 あわてて説明書を開いて読んだ。
 「 車体を傾斜し実車に迫る迫力感あふれる曲線通過シーンをリアルに再現する“振り子機構”を採用」
 これだったのだ。
 現代のモデルは、実車の機構を小さなNゲージ車両に組み込むほどに、精密なのだ。

 時計を見ると12時半前になっていた。肩に力をいれて振り子機能のソニック・イエローをながめていたからか、急に眠気を催したのでソファに横になった。

 遠くで電話が鳴っていた。
 自分の部屋の電話だった。
 「先生、会議が始まりました」と、秘書さんの声だった。30分間、知らぬ間に眠ったようだ。寝たりなかった。この一ヶ月のことが、わずか30分の熟睡で取れるはずがなかった。

 それから、夕方6時過ぎまで、延々と三つの会議があった。休憩時間は10分ほどだった。
 再び部屋に戻ると、目も肩も腫れていた。
 ソニック・イエローを再び走らせた。えも言えぬ走り姿だった。すぐに瞑想に入り込み、やがて腫れが融けていった。

 殆ど入手不可能だった883系ソニック・イエローをなんとか手にしたのは、偶然にすぎなかった。模型としても名機だけあって、春先以来のきなみ「入手不可」「在庫ゼロ」だった。梅雨も終わりの頃に、なんとか祈るような気持で在庫問い合わせをし、「有り」が返ってきたのは執念のたまものなのだろう。

 途中のネット記事で、この秋にはブルーメタリックの7両編成がリニューアルされるとも気付いたが、余はこの「イエロー」が必要だったのだ。

 さて。
 883系のデザインは、ドーンデザイン研究所(水戸岡 鋭治)と知ったのは最近のことだった。昨年図書館の司書さんから薦められた一冊の図書が始まりだった。その時は、そのデザイン本の中身が実は実車としてJR九州で走っているとは知らなかった。狭い車両にみたことも経験したこともない別の異空間が演出されていた。外も中も空想的に見えるほど、目新しかった。
 余はそこに、未来の図書館列車の原型を見た。

 それがJR九州の特急として存在していると分かったのは、このKATO製Nゲージ:883系ソニック・イエローの写真をネットで見かけたからである。どうやら、余はモデルから実世界を眺めるようになっていたのだ。 

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