小説木幡記:2009/07/07(火)四方山話:Jたちの異世界
最近、ご隠居さんが葛野に来てくれた。
なんの用かはたずねもしなかったが、それは後で分かった()。小一時間にも満たないわずかな間に、余はそばにいるJたちの異世界ぶりをまざまざと知らされた。人間、いくつになっても未知の世界はあるものだ。
そうそう、みやげに「麦代餅(むぎてもち)」とかいう京都の伝統和菓子をいただいた。三つあったので、それぞれで二つ。生ものなので、屯所の連中に下賜せんと思って廊下に出たら、電灯が消えていた。三人もいたから、一つをどうやって分けるのか、分数を知らない世界もあるから、心配したが杞憂じゃった。
ご隠居が帰ったあとで、残りをまたいただいた(笑)。
1.結婚よりも結婚式がしたかった
男達の中で、和風の紋付き・はおり袴か、あるいは燕尾服(古語じゃね)となにかしらヨーロッパ調の衣裳をきて、「結婚式」に出たいと思っている者がおるのだろうか? 居るとしても、数パーセントと思う。花嫁にあわせてお色直しに付き合うのが、たまらないほどしたかった、と思う男がいたら、余はいささか目点。まず、余の知り合いで、そんな男はいなかった。
ところが。
ところがである。相当に知的で世間流行にむざむざと乗る様には見えない倶楽部秀才、某御隠居の中には、好みの男性と結婚するのは二の次、三の次、……。実は「結婚式」をあげたかった、華麗な花嫁姿をしてみたかった、という方がいるという噂を耳にして、「うっそー!」と、余は悲鳴を上げた。
そうなのだ。
やはり男とJとは違った感性でこの世を生きておる。この違いは異文化どころのさわぎじゃない。まず、別世界だねぇ。そういえば。だからこそブライダル産業はかくも華々しくJ達の心をとらえ、にぎわっておるのじゃろう。
あっ!
また別件を思い出した。世の中の奥さん達の中には、ひそかに、「喪服を着て、未亡人姿を若い内にしたかった」、という願望があるともどこかで聞いた。
これもねぇ。男達の中で、喪服着て、喪主になりたいと願望を持つ者はおらぬ蛇老。いるのかなぁ~。
2.腐Jの研究
じつは。腐Jとか腐男子とかの用語の定義がよくわからなかった。
餅を食べながら、
余 「その、腐Jとかちゅうのは、どういう連中なんじゃ?」
御隠居「ええ、それは、まあ、……」と、もじもじ。
余 「恥ずかしがらずともよい。余も知っておきたい、言うてみい!」
御 「先生の年代ならオタクと言えばわかりますよね?」
余 「うむ。なんとなく、くら~い連中のことだね。暗いのは陰影があって好ましいが、不気味なのは困るなぁ」
御 「オタクに近いわけですが、腐Jは単に暗いわけじゃないです」
余 「だから、真っ昼間みたいに明るいのは、興味がわかないよ。腐Jの定義を聞かせてくれ」
御 「定義と言われると、頭がまわりませんが、実例には事欠きませんよ」
余 「ほぉ。サンプルがあるのか?」
御 「ええ、……」
余 「何をためらっておる。言うてみいや」
御 「実は~、今は存じませぬが、この名ある葛野図書倶楽部2001のそうそうたるメンバーの、約30%は強度の腐Jですね。そのうちの数パーセントは真性です」
余 「ぎょえ。し、しかしなあ、腐Jって最近の用語じゃないのか?」
御 「世間が遅れていただけで、そもそも、この倶楽部は腐Jがコアになっておりますねぇ、歴代」
余 「う~っつ。も、もしかしたらその3割に、君も含まれておるのか?」
御 「ええ、世間一般の話としては、私めもかすっていますね。でも真性腐Jとまでは、……」
余 「その3割の中の、さらに中核と言える御隠居とは、一体誰なんじゃ」
御 「ナイショですよ、先生。私めの口から漏れたとなると、お付き合いを破棄されますからね」
余 「おおよ。言わない言わない。聞かせてくれぇ」
御 「ほら、同期のあの子とか、先輩の~、あるいは後輩のあの子とか、最近では、……。まさしく真性ですね」
余 「う~む。う~む。そうだったのかぁ。しかし、30%も居たとはしらんかった。そうか、あの者らが現代腐Jの代表格やったのか。ああ、知らなんだ。気付かなかった。怖いねぇ~君ぃ」
御 「そりゃ、気付かれないようしている子が殆どですから。世間には、腐Jを極端に嫌う人も大勢おりますし。魔女狩りにあいそうなことも、あるわけですよ」
余 「うん?」
御 「腐Jたることを隠すのが、最低限のマナー、慎みですよ。生きる道。就活とか婚渇ではタブーですね」
余 「おお、連中苦労しておるんやなぁ」
御 「……」と、下を向く。「だから倶楽部に居着くのです。御隠居になっても、ここの空気を時々吸わないと窒息しそうになります」
余 「そうか。そういえば、今年はその兆候が見えぬが、昨年などは、その事例にあわせると、60%がそうだったなぁ」
御 「そうでしょうね。葛野blogやTruthを読んでいると、そういう雰囲気でしたよ。年次で濃淡もありますし」
余 「わかるのか?」
御 「ええ。血は血を呼ぶものです。もちろん隠しおおせた年次もありますし」
余 「そうか。心しよう。しかし、顧問の余は極端な偏向偏執もないから、倶楽部も安泰じゃ」
御 「ほほほ」
余 「なぜ笑う」
御 「腐男も腐Jも、人と話すときは、大抵、そうおっしゃるものです」
余 「なんだとぉ?」
御 「この倶楽部はもともと、そういう先生と一緒にあれこれやってきたのですから、それこそ血は血を呼ぶのたとえそのもの。先生、逃げられませんよぉ」
そんな葛野劇場の一幕があった。
しかしながら余はいまだに、腐Jのことが良く分からぬ。少なく見積もっても、御隠居達の半数はなんらかの感染をしておるようじゃが、それが現代Jの確率的属性なのか、倶楽部の属性なのかは、まだ分析がたりぬ。また、暇になったら、考えてみよう。ともあれ、今期はこれまでになくまともな倶楽部じゃ。安心。
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