小説木幡記:2009/07/02(木)早朝の備忘録:俳諧と列車群
1.俳諧と俳諧
保田與重郎『芭蕉』を読み終えて半月以上一ヶ月ほど経った。その間、テキストを並行して触っているがなかなか進まない。事情は、過酷校務で心身が怒りと疲労とで参っておるからだ。などと、~柄にもない。
考えあぐねているのも事実だ。
無視する方向で行こうとも、なかば思っておる。
つまりは、こうだ。
テキスト中に「俳諧」という用語が頻出する。同一文に複数回出現することもある。以前は、特に20代に読んだ頃はまったく気がつかなかったし、そのご数度読んだときも覚えていない。今回、気になってきた。
俳諧には、おもろい、滑稽、洒落の意味がある。そして同時に、芭蕉などの造った短詩そのものも指す。もともと俳諧・連歌という諧謔味あふれる短詩として生まれたのだから、滑稽さがあって当然。その俳諧を残したまま、如何にして芭蕉が蕉風・正風ともいえる俳諧を確立したのかという、歴史的認識を論じた文章なのだから、俳諧が俳諧となる不思議な文が成立する。
これは、自然言語処理をするには手に余るのう。余の場合はその処理の入り口で、手技が主になる分析手法だからまだ楽だ。とは言っても、難しい。これは言葉の多義性と呼ぶのか。あるいは曖昧なのか、はたまた余情なのか。一口では言い切れない。
文章は、読む年令、受容度、心性傾向によって解釈が異なってくる。それを文章の骨組み段階で解析するのが余のとった方法論である。しかるに、文章の基底で俳諧が俳諧となる用例に直面すると、顔色が変わる。今年の夏は少し気楽と思っておったが、これでは近来にない「重い夏期論文」になりそうだ。
一難去ってまた一難。ふぅ~。
2.気鬱と疲労と、余の「一人怒り」
葛野では前期2科目の演習が終盤にさしかかり、受講生達がなんとはなしに気鬱あるいは殺気だっておる。助勤たちも、顔色にはださないが、いろいろあろう(笑)。初夏の助勤会は日程調整をすませたが、そんな「ご慰労」で終わりとは思っていない。まだ、オープンキャンパスや、お楽しみとは言いながら幹事には気苦労の多い長浜研修旅行、納涼会と行事がある。
そして、肝心の余は。
日々研究室で一人怒りちらしておる。「一人怒り」と名付けておる。なぜ一人で怒り狂うかというと、やはり加齢なのじゃろう。怒りを世間や他人や自分に向けないようにする作法を、少しは心得てきた数十年の流れがある。部屋の空気に向かって怒気を発する。まさしく、怒髪冠を刺し、天井を突き抜けて上階の研究者を刺し貫くほどの一人怒りである。うむうむ。
3.島図書館の3重自動往復運転
さて。
木幡に帰ると真っ先に島図書館を眺める。島図書館全景構造も、機能としての3重自動往復運転も今や完璧な状態である。しかるにモデル(ジオラマ)としては何ヶ月も発泡スチロールが粉を吹いた状態で、海も山も鍾乳洞もただの発泡スチロールに過ぎない。
3重自動往復運転とは、例のTOMIXのユニットをつかったもので、モード番号は5番。一口で言うと、三本フォークのそれぞれの足に図書館列車がおって、柄の先端まで走りまた逆送して元の足に戻る。一見単純じゃが、これを3層構造を持つ島図書館全景にレールをぐるぐる巻き(ループ)しておるから、とても複雑な情景になる。それぞれに図書館駅や本館がある。
さて列車走行動画や写真や、自動運転のウンチクは止しておこう。今夜は、どんな列車編成が60x66センチの小さなモデル(ジオラマ)を走っておるか、メモしておく。
以下Nゲージで、断りがないかぎりTOMIX製車両。
またディーゼル、電気と混在しているが、想念上ではすべてリチウムイオン電池による電池機関車。
3.1 最短の経路:本州連絡用
DD51ディーゼル機関車と「おおぼけトロッコ号(マイクロエース社)」の<キクハ32-501>。
3.2 中距離:(山腹の)駅図書館行き
DD51ディーゼル機関車(☆印のある、JR北海道色)と「瀬戸大橋トロッコ号(マイクロエース社)」の<キクハ32-502>
3.3 長距離:(山頂の)島中央図書館行き
DH500電気機関車と「371系特急あさぎり(マイクロエース社)」の先頭車両「クモハ371-101」
3.4 予備編成
ED79-0電気機関車と、カシオペア車両+サロ124+カシオペア車両(展望車)
国鉄キハ02形レールバス二両連結
3.5 解説
キクハ32形のトロッコ列車を2台も投入しているのは、遊覧目的の為である。誰も彼もが移動形・図書館列車で読書や研究をするとは思えない。鍾乳洞や瀬戸内海を身体全体で味わってもらうためにトロッコ客車を複数用意した。
機関車DD51が公称2000馬力、EH500は3000馬力前後なのに編成が客車1両なのは、試験走行とそして想像以上の急坂急曲なので、安全性を考慮した。
レールバスは、先頃HOタイプの南部縦貫鉄道キハ10形も入手した。小型であること、ローカル色が色濃い車両は、余の鉄道図書館列車によく似合う。
線路幅が9mmのNゲージと、16.5mmのHOゲージの棲み分けについてはようやく気持が定まってきた。前者は景観全体モデル(ジオラマ)を表現するに適し、後者は図書館列車の細部を表現するに適しておる。ただしHOスケールは日本では1/80縮尺だが、最近は16.5mmのレールを走るOn30(1/45縮尺)タイプを何かと集め造りだした。圧倒的に大きなものなので、扱いやすく、しかも廉価なものが多い。
宇治川「おとぎ電車」については文献も読み、いろいろ想を練りだした。宇治には図書館、歴史資料館、植物園、源氏物語ミュージアム、歴史的発電所遺構、宇治天皇陵墓などがあって、これらを周遊するモデルを作っておきたい。ただし葛野研の<邪馬台国周遊図書館列車ジオラマ>も休眠中なので、時間を調整する必要がある。
さても島図書館、機は熟しているのに一向にプラスタークロス(石膏状布)で形を整えず、アクリル絵の具で色つけもせず、樹脂で海を造らず、樹木もパウダーもまかないのは、~。つまり、絶対的時間不足と、木幡に帰還すると眠るだけの日々蛇から。これも一過性。やがて、島図書館は仕上げにはいるじゃろう。
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