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2009年6月14日 (日)

NHK天地人(24)上杉軍4000と都人達

承前:NHK天地人(23)「義」と「愛」

 今夜は上杉景勝さんの大ピンチとなりました。背後に石田三成→直江兼続→お涼(千利休の娘)という一大支援部隊があったのですが、親衛隊4000を差配するのは日常茶飯事でも、太閤秀吉以下一門、諸大名と毎日毎日会って挨拶回りするのは至難の技というか、重度の勤行だったのでしょう。ついに左こめかみを押さえ、心身を壊してしまいました。

 このドラマの新境地に思えました。
 こういう観点から上杉とか、歴史上の人物をフラッシュバックを使って表現した事例は、あまり知りません。もちろん遠国、田舎から上京した者が京大坂でさんざんな目にあうのは、たとえば木曾殿なんか瞼に浮かびます。しかし、今夜のドラマを観る限り上杉景勝を表だって笑いものにしたり後ろ指さす人達はおりませんでした。ただただ、行くところ行くところで名門上杉、なかんずく謙信公の威令を褒め称えられたのだと思います。当時の上杉、武田両家はそれだけのオーラを全国津々浦々にまでなびかせていたのでしょう。

 しかるに今夜、景勝は「なせねばならぬ、挨拶に行かねばならぬ」と内なる責務に押しつぶされて身体をこわしてしまいます。これ、私はよく分かります。骨の髄までよくわかります(笑)。そしてまた、逆の人達も多数いることも良く分かります。挨拶回りが楽しくて楽しくて仕方ない人もおれば、今夜のように拷問に等しい人もいるのです。上杉景勝とか私()はまさに後者。もちろん、身の回りにも何人かいましたし、友人、職場でも時々います。本当に頭痛がして、青ざめてきて、冷や汗をかくわけですね。こういうことは、挨拶好きな人には未来永劫理解できないことでしょう。

 だからこそ。
 今夜の上杉景勝の気持によく感情移入でき、苦しく、楽しかった一夜でありました。

 エピソードとしては、北の政所が景勝や兼続を前にして、<太閤殿下は苦労して今の地位についた。殿下が「金(きん)」を好むのを、腹におさめてほしい>という場面はよかったですね。銘刀を愛でる目が秀吉になかったとは思いません。茶器にしろ銘刀にしろ、そして一代で作り上げた豪華絢爛な桃山時代を考えれば、秀吉が凡愚な成金だったとは思いません。ただ、意識無意識を問わず無邪気なまでに、太刀をつつむ金の袋に手を出したのは、秀吉の質なのでしょう。

 そういうことを北の政所は知っているから、若く無口であっても血気さかんな景勝や兼続に「処世」を教えたのだと思います。また景勝もそれが分からぬ凡愚でないからこそ、「第一義」の書を眺めて、葛藤し身体を壊したわけです。それは、繊細とか気弱とは別の世界の話です。むしろ激しい心で「処世も国を護る」、他方「第一義とはなにか!」と、両方ともしっかり考え込む理性と誠実があったればこその、今夜の見どころだったと思います。

 ところで千利休の娘さんが突然兼続さんに、ぽろりと「あなたが好きです」と言ってしまいました。そうでしょうね。兼続が(ドラマの中で)女性に好かれるのは、やはり命がけだからでしょう。どんな人でも、熱心に、命がけで動く他人には心をうたれます。だれが見ても、無口ガンコに見える主君上杉を支えるのは、若い兼続と思うわけです。お涼さんは沢山の大名をみてきましたから、ひと味ふた味異なる兼続に誠意を見たのでしょう。主君景勝を支えるのは並大抵ではないと見た上で、それをきっちり支援する家老兼続の「覚悟」に惹かれたのだと思います。

 さて、あっという間に過ぎてしまいました。
 徳川さんや北条さんは、東海道沼津のあたりでこっそり酒宴をして、上杉の上洛をなじっておりました。これもよくわかるし、壮年二人がきりきりする姿も自然でした。もちろん家康は軽くいなした風情ですが、まだまだ戦国の余燼を知っていますから、謙信公だけでなく、相手が若い景勝でも侮っては居ないわけです。自国内乱をしぶとく収拾させて、滅びる武田に援軍を送り、織田勢を何度も押し戻した上杉景勝・直江兼続のコンビは、戦上手の家康だからこそ、「うむむ、困ったなぁ」の心境だったと思います。

 来週がたのしみですね。

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コメント

初めまして  以前より拝読させていただき楽しませてもらっております。
今度の大河、、、、各地で手厳しい批評が相次ぎ、正直私もついていけないエピが何度となくあるのも事実です。
しかしながらいったんそういう流れが出来ると何なんでも叩こうという無意識のイジメ感覚、、そのことでの感情の共有というのも自分としては嫌なのです。  その点、サイト主様は常に長所だけに目を向けておられ好ましいものを感じておりました。
それに今回は、そこそこいい出来だと思ったのですが。
景勝のようなタイプの人間の煩悶、、、これはなかなか、同じタイプでないと、また経験がないと分からないのでしょうね
意外とちまたでの此処の評価が低いのに(というより無視)されているのに驚いております。
なお私の詳しい感想、、、重複するのでここに書いております。  
http://blog.goo.ne.jp/yujinan/e/2223cfd692c1287f87bb78c712dbf7e1
 よろしければお読みください。

投稿: taira | 2009年6月15日 (月) 21時35分

誤解を招きそうな表現だとあとで読んで気づいたので補足します
>意外とちまたでの此処の評価が低いのに(というより無視)されているのに驚いております。
のなかの此処とは この部分・・・つまり景勝のようなタイプの人間の煩悶 それに着眼する、感動を持ちコメントを書く人が少ないという意味です。 誤解を招いたとしたらお許しください

投稿: taira | 2009年6月16日 (火) 00時45分

こんにちは、Tairaさん
 ご紹介をうけた「遊人庵大河塾」に投稿されたTairaさんのコメントを、読みました。あわせて、投稿先の全体もよみました(我ながら、まめまめしいもんです(笑))

 で、Tairaさんのコメントもふくめ、この「大河ドラマ評価委員会」blogの全貌に、頭が下がるというか、感心するというか、腰を抜かした今朝でした。

 その中で、TairaさんとかMuBlogの天地人評価は少数派なのだと、愕然としりました。そこのところを、Tairaさんのコメントに力を得、少し分析メモを残しておきます。

1.風林火山や篤姫とは、別のノリだと気付いたのです。
 要するに天地人は別のジャンルだと思えば、別の味わいを楽しめるわけです。人が水平に投げ飛ばされても、これはマンガの様にじゃなくて、マンガと思えば「あはは」と素直に笑えるわけです。若干、往年の「新選組!!」の前半に似た味わいもあります。

 信長や豊太閤や家康の世界とは、別の視点から当時の天下国家を見た貴重なドラマと、Muは思っています。中にあるお笑いは、50代前後のお歴々(秀吉や前田さんや家康さん)に対しての20~30代の若手感覚と思えば、愚かしさやマンガっぽさはよく映えております(爆)。(注:すみません、Muはそれなりに高齢なので、若い人をみると、「これはマンガ的人類なのだ」と味わう習慣ができているのです)

2.批評と教育
 公開する文章(blog)や、授業では、貶すことをさけてきました。恨みを買うのをおそれてではなくて、どこまで対象を見切れるかという、自己鍛錬ですね
 鑑賞したり(大河を毎週見ると決めた、アプリオリな決定)、授業したり(仕事であると決めた、アプリオリな決定)と、縁をもったかぎり対象の良いところを探し尽くすのが、Muの使命と思っております。

 もともと、性狷介ですから、総ての対象を貶し尽くす傾向があって、それを「人」として一挙にプラスにひっくり返す鍛錬を続けているのです。

 となると、今期の「天地人」、見どころをいくつもいくつも、毎回毎回発見し、本心から味わえるようになりました。

3.天地人の良さ
 演出だと思うのですが、ときどき斬新な工夫が見られます。今回の景勝の偏頭痛強鬱表現なんかはうまく行きました。

 女に支えられる兼続。お船さん、初音さん、お涼さん、そして景勝のお母さんや、北の政所、……。こういう女性たちに支えられる兼続を、現代風にわかりやすく表現するところが、よいですね。(淀君なんか、でてくるのかなぁ?)

 これは別の視点ですが、NHKでは表現しにくい深層も混じってなかなかの見どころです。実は、景勝も三成も幸村も、兼続を支えているわけです~。主人公だから当たり前とは思いません。そういう微妙さを、演出は苦労しながら表現し、俳優達も苦労していますね

 だから。
 ジャンルが別と思えば、今期の天地人、毎週楽しめる作品です。

投稿: Mu→Taira | 2009年6月16日 (火) 04時33分

ご丁寧な返信 ありがとうございます
私とて、今の大河に全面賛成というわけでなく、、、正直 萎えてる部分のほうが多いです。
ただ中には頑張ってるところ、心打たれる場面もあるのに 何か叩かないと非国民みたいな、、戦争中の日本みたいに(笑)
良いところも平等に取り上げることなく、ひたすら叩くというのは何か違うな、、フェアでないと思ったしだいです。
自分には正直でいたいので、腐したくなるときはあえてお邪魔はしませんが、評価したいと思うときなどまた遊びに来させてくださいませ。

私も今度の大河、、、よそでも書きましたが実験大河、、、大河史における珍味と認識しています。
実験ドラマが必ずしも悪いわけでなく 古くは中山千夏主演の「お荷物小荷物」、、新しいところでは仲間ちゃんの「トリック」など成功を収めたものもあります。  歌舞伎の世界だってスーパー歌舞伎だとかなんだとか実験を試みています。
ただ私とて昔ながらの大河ファンなので、新しい試みが全て受け入れられるかどうかは そのブレンドの具合かなと思います。
空飛ぶ「お天気眉毛」は、ご愛嬌としても あの上杉家中の幼さ、漫画っぽさは何か違うなとも思ってしまうのです。
一応、、戦国最強らしいし・・・(笑)
やはり昔の大河への郷愁、、正座してみる感じのドラマという気持ちがあり、、、完全にコメディーと割り切れば セクスィー武将のように大いに評価するんですが・・・・(笑)   だからブレンドの具合といったわけです。
戦国武将のしのぎあいを求めてるのに、あんまりドリフ(しかも笑えない)をやられるとリアリティーがないとういうか整合性がなくドラマ自体に乗れなくなってしまいます。

歴史的なことでも史実としてあってる合ってないの問題、、、たとえば史実的に 景勝が初の上洛のとき北政所と会っていないという意見もありますが、突っ込み、指摘としては面白いものです   が、、、だから あの北政所、景勝の会見 無意味かというと私はそうではないと思います。  MUさんと同じく 今度のエピで一番気に入ってる場面です  母親的を想起させる北政所に処世を教えさせるあの演出はうまいなと思いました。           一般の人が、ほとんど知らないような史実を多少変えてアレンジしても、それはOKだと思うのです。
三国志の有名な「桃園の誓い」にしろ、義経の安宅関だとか 牛若丸時代の弁慶との橋の上での決闘、、みな史実かどうかで言えばでたらめだと思います。  ただ、それが何百年も語り継がれ 一般に、そうあるべきと認識されてるから あれはあああるべきなのです。
一時期、石坂浩二が水戸黄門やったとき 「黄門は本当は印籠なんか出さなかった だから僕は出さない」といったのを聞き、ドラマのお約束事を分かってないなと失笑した思い出があります。   史実だろうがなんだろうが、その世界ではお約束事ならそれは史実なのです。

ただいくら変えるのもOKといっても 関ヶ原は本当はなかったとか、一般に認識されてるところを根底から覆すような変更は歴史ものというよりSFの世界になりますし、これは史実という説も強いのですが たとえば龍馬の主犯は実は西郷さんだった!なんていうもの。
確か前の新撰組では、この説で行ってましたっけ? あれも割りと実験大河の部類だと思います。
あの演出も斬新で新味だと思いましたが、どうなんでしょう?  自分の中では評価する面と、大河とは菊人形の実写版、、、つまり こうあるべきと 史実かどうかはともかく ある程度 共通認識されてるものをなぞる世界かなと勝手に思ってるので・・・微妙です(笑)
以上、、長々と失礼しました。

投稿: taira | 2009年6月16日 (火) 20時41分

Tairaさん、相当な大河フェッチ~(笑)
 MuはTairaさんほど熱心じゃないと、逆検証された思いがしました。
 で、いくつかコメント返信をしておきます。

1.好きな大河ドラマ
 古代:足利尊氏(真田さんの尊氏よかった)、伊達政宗(全部)
 中古:新選組(夏くらいから毎週泣いていました)、義経(意外に、頼朝役と義経役、両方とも気に入りました)
 近代:風林火山(やはり勘助と由布姫ですねぇ)、篤姫(主演女優の生き生きしたところがよかった)

2.ドラマの真実、歴史の真実
 よくできた大河ドラマは、歴史の事実よりも「真実」を活かした、ドラマの真実を見せてくれるものでしょうね。

 伊達政宗ですと、おひがし(母親)と伊達政宗(長男)との母子葛藤、母は弟をかわいがりしかも実兄を愛し、実子の政宗を毒殺未遂までしてしまう。なのに、なお政宗は母親を死罪にはせず、許す。この葛藤。いまでも、ひりひりと思い出します。

3.毎週の娯楽
 めったにTVを見ない(ニュース程度)Muにとって、それぞれの大河ドラマを毎週日曜の夜に見るのが、節目というか楽しみです。だから、天地人もおもしろいですよ。

では

投稿: Mu→Taira | 2009年6月17日 (水) 10時52分

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