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2009年5月 1日 (金)

小説木幡記:2009/05/01(金)もう五月、清々しい夜

 季節は巡る、もう五月。やがて梅雨がきて、初夏がすぎて、晩秋になる~。
 と先読みしてはいけません。永遠の繰り返しであっても、その時その時をじっくり味わうことが大切です。
 と、自戒。

読書:技術系
 概念を明確にするためにモデルを作る。そのモデルはこの場合、二階建てトロッコ図書館列車に代表される「未来の列車図書館」。しかしモデルをきっちり動かすには基本的な技術、手技が必要となる。そこで、最近も数冊関係技術図書を入手した。

 そこで思った。世の中には当たり前のようにまともな図書と、どうにも嘘嘘しい図書があるということ。あまりに両者の違いが大きかったので今夜メモ。

 一つは嘘嘘しい図書。
 ある特殊技術について、紹介記事にも、図書そのものの帯にも、さらに前書きにも、「如何にその特殊技術について深く考察したか」と、麗々しく書いてある。余がその図書を発注したのは紹介記事にもそうあったからだ。手に取って前書きを一読したときも「ああ、これを読めば一歩前に進める」とおもった。

 しかるに、その特殊技術に言及があるのは、全300頁の図書の内、前書きを含めてわずかに20頁分。そして、その内容はメーカーサイトの「宣伝記事」を一歩も出ない。つまり「こういう製品がありますよ」にすぎない。
 余は、驚愕した。こういう遣り方でこの業界(関係図書出版社、著者達)が成り立っている不思議さ。2500円もした。

 一つは、思った以上の良書。
 もしかしたら十年以上座右に置くような図書に出会った。90センチX60センチ(つまり、我が「嵯峨野鉄道図書館ジオラマ」と同じ大きさ)の小さなレイアウトでHOゲージという大きな列車を走らせる「レイアウト製作」図書だった。詳細は省くが、百戦錬磨の書き手が丁寧に本を作った、とそういう雰囲気だった。出版社は「誠文堂新光社」とあって、もしかしたら余が小学生の頃に読んでいた模型関係雑誌図書の発行所と同じかもしれない。

 で、今サイト検索したところ「明治45年創業」そして、……。なんのことはない「子供の科学」を出しているところだった。そりゃ、出版社のメンツにかけて嘘嘘しい図書はだせないだろう。ともかく、このたび手にしたのはたった2000円(TCSセンサー二つ分!)の図書だったが、読み応えがあり、良書だと思った。

 世の中、違いが大きすぎるのう。

短詩系のこと
 現代短歌や俳句を作ったこともないので(つくると、すぐに狂歌とか、川柳じみてくるので)良くはしらないが、それにしても圧倒的な力量に愕然とすることがある。朝食をとっていたとき、木幡研究所所員がある短歌雑誌をひろげて、「読んでみな」というので、目を向けた。十首あったが、箸(スプーンじゃ)が止まった。

 短歌は小説とは違って、瞬時に目から脳、というか心に突き刺さる。その十首がものすごい勢いで余の目から肺腑を突いてきた。衝撃的だった。
 もちろん使われている日本語が、とりわけどろどろしたものでもないし、刺激的な単語など一切なかった。なのに胸を突いた。ジーンとしてきた。<日本語の力はものすごい><こういう短歌を作る人は、やはり天才なんだろう>と独り言をぶつぶつ言って、朝の珈琲を飲み終えた。

 その歌人は現代女流で著名な人らしい。余と年代が同じだから、余は同世代の優れた歌人と同じ世間に住んでいるわけだ。なにも、勅撰和歌集に名を残した古の人ではない、現代人なのだ。

 素晴らしきかな、この平成の御代なり。

というわけで芭蕉
 芭蕉さんより長生きしている余、とは以前にも記した。
 あの方の俳句(正確には俳諧と言った方がよかろう)も、目から鱗が落ちるような印象を与える。
 芸術を芸術として、詮索せずに味わえるのが一般読書人の特権なのだろう。評論家とか、まして現代日本文学研究者は、その意味では芸術を芸術として味わうことが出来ぬ人が多いと昨今思った。
 いや。今読んでいる現代人の芭蕉評論は面白いがな。

 そうなると。
 歴史を歴史と味わえずに、プロパガンダに走ってしまう国々があって、それに呼応した日本のジャーナリズムとか、愚かしい秀才達がいつの世にも、「世の中を動かしている」と傲岸不遜に振る舞うものが多いことだよ。歌一首詠う気持があれば、その馬鹿馬鹿しさに愕然とすることだろうに。いや、秀才故にそれを知っているからこそ、自らを見つめることを退職するまでしないのだと、思った。

 と、愚痴に傾いてきたので、今夜はこれで筆置き。

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