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2009年4月 5日 (日)

NHK天地人(14)上杉・武田、塩を送り黄金を贈る

承前:NHK天地人(13)武田(高坂弾正)との和議

 黄金と信義の問題。
 金で人の心を釣るのと、金で心を釣られること。
 若い頃に、といっても勤めていた30歳過ぎの頃、学生食堂で医学部の学生同士が普通の声で話していました。

 「親戚のオジサンが、婿に来てくれたら、ベンツを買ってやると、言ってくれている」
 「どうするつもりだ?」
 「そこの娘は、幼馴染みだし、嫌いじゃないから言うとおりにするつもりだ」
 「ベンツか、良いなぁ」
 「ああ、入り婿して、オジサンの病院を引き継ぐことになる」
 「お前もさっさと片づくわけだ、あははは」
 「卒業しなくちゃ」

 側でご飯を食べていた私は胸がつまりました。「ベンツで身売りする?」とつぶやいて、そのころはまるっきりそういう青年がいること自体が信じられなかった。私はまだ子供っぽい人生観をもっていたのか、それとも「物」で人を惹きつけることが悪いことと思っていたのか、……。両方だと思います。

 今はどうだろう?
 こんな風に考えています。世の中にはいろいろな世界観があって、お金を大切に考えている人は、そのお金を人に提供することで自分の誠意を示す人もたまにいる。お金を沢山もっていて、「人は利で動く」と知っている人は、お金を渡すのと引き替えに自分の権勢を示し服従させたがる人もたまにはいる。両方とも、お金がないことにはできないことですから、今の私には無縁の話ですな。せいぜい、仕事を手伝ってくれた学生にチョコ一箱をコンビニで買って、渡す程度のことでしょう()。

 経済制裁という言葉があります。早い話が、交易を無くしお金や物を渡すのを止めることで、相手に制裁懲罰を加えることです。逆に制裁を解くことで、やくざな相手の気持ちを和らげる方法もあるにはあります。古今東西、金で釣った相手は、金の切れ目が縁の切れ目と相場が決まっています。いくら社長、社長とおだてられて、頼りにされても、会社が潰れて無一文になったら、誰も寄ってきません。いろいろな世間の取り巻き連中も、奢ってもらえなくなったり、小遣い銭をもらえなくなったら取り巻かなくなるものです。

 人は小利で動く物です。大きな利、たとえば信義を貫くというような大利には、利を認めないものです。そして、利とは金とか権威・権力としか思い浮かべない人が大半なんでしょう。利は心のありようにあると、今の私は考えています。単純な話です。たとえば茶を美味しくいただく。これは心の安定、心地よさであって、黄金とか権力名声とは縁遠いことです。

 ……。

 今夜の兼続の気持ちは、金であろうが土地であろうが、越後を北条や武田という他国の戦国大名に占領され、蹂躙されるくらいなら、黄金も領土割譲も惜しくはない、ということでしょうか。それがなかなか他の武将には理解できない。すぐに打って出て討ち死に覚悟と叫ぶ。

 和議。
 黄金贈与(金権政治)、領土割譲(不動産転売政治)、武田菊姫と景勝との婚礼(閨閥政治)。今夜のドラマは現代を反映しています。無いのは、ネットでの先物買いくらいでしょうか。
 そして。
 だからこそ、今後の景勝・兼続主従の戦国での生きる様がドラマになるのだと思いました。先読みすると、今夜の黄金贈与や武田の菊姫との婚礼で、越後・景勝は景虎に勝ち、北条は兵を引きます。そのあと、景勝・兼続主従はどのように国を治めていくのでしょう。
 今度は秀吉天下への対応、家康との確執が待っています。謙信公の「義」がその乱世の中で、どのように引き継がれていくのでしょうか。それが見どころです。

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NHK天地人」カテゴリの記事

コメント

こんにちは
越後の国を守るために生き抜かねばならぬ・・と景勝に言わせた兼続は19歳だったということに感動しました。その年齢の頃はとても純真ですね。
社会に身を置いてがんばってる方にはすっとはいってくるのでしょう。私も男だったら良かったです。残念。
女性の立場で、華姫の振る舞いは興味深いです。

先生、御身体どうぞご自愛くださいませ・・

投稿: yuyu | 2009年4月 9日 (木) 17時26分

今晩わYuYuさん

 私は男ですから、おもしろく思う物が多少女性とは異なると気がついています。たとえば科学技術とか模型工作は断然、男性の方が好むようです。たとえば恋愛小説や恋愛映画、そしてお芝居などは圧倒的に女性が好みます。洋菓子もそうでしょうな(笑)。個々人では右から左まで多様ですが、全体を眺めるとそう思います。一般的な文化は女性が造ってきたと思うのです。つまり文化を細やかに楽しむのは女性の世界です。

 男達は勝負ごととか、会社組織運営をゲームのように楽しんで熱中します。うまく行けば良いですが、勝負事と同じで大抵いつかマズクなって腰を抜かします。それが生活に密着しているから、そばにいる女性は文化享受どころか、巻き込まれて泡を吹きます。

 善し悪し別にして、女性がいて男性がいて、この世は楽しく悲しいもんですなぁ~。

投稿: Mu→YuYu | 2009年4月 9日 (木) 21時25分

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受信: 2009年4月12日 (日) 22時22分

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