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2009年4月 2日 (木)

二階建て図書館列車考(7)改造車篇:纒向号(まきむく:Nゲージ・会議研究図書館列車)

承前:二階建て図書館列車考(6)改造車篇:愛宕号
目次::嵯峨野鉄道図書館ジオラマ

 昨年平成20(2008)年に邪馬台国周遊図書館ジオラマを設計して以来、ジオラマ製作はなかなか進んでいませんが、そこを走る二階建て図書館列車の構想をようやく実現できたので紹介します。纒向号(まきむく)と名付けた「書庫車付きの会議・専門図書館列車」です。原型にはJR東日本の豪華寝台特急・カシオペア(NゲージKATO製)を当てていますので、二階建て図書館列車の分類をしました。

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纒向号(まきむく):会議研究図書館列車

纒向号の編成
 列車名称の由来は、日本史の謎・邪馬台国の祖地を奈良県桜井市の三輪山が見える「纒向遺跡」(参照1)と仮定したことから、この邪馬台国を周遊する図書館列車の1号機として、「纒向」としたわけです。現実にはJR巻向駅や三輪駅が近辺にあり、ここに鉄道図書館列車が周遊する姿は現地に立てば容易にイメージできます。

 列車の目的は「邪馬台国周遊図書館列車」における邪馬台国研究のための専門図書館列車として位置づけ、コンテナ「書庫車」一両に約1万冊の蔵書を収納し、会議・ホテル設備を使いながら邪馬台国問題に関して専門的なディスカッションを長時間・長期間行うことにあります。ツインの部屋が8室ありますから、一両に付き16名の長期滞在が可能です。勿論、食堂車や他の寝台列車を増設することも可能です。今回はコンセプトを明確にするために、書庫車と会議・専門図書館車として説明をします。

 二階建て専門図書館列車としての機能を使えば、テーマが邪馬台国問題だけでなく、鉄道網があるかぎり山間僻地どこへでも行き長期滞在の研究調査・会議のベースとすることができます。たとえば東京の研究者やグループが北海道や九州のフィールドワーク、村落調査などに応用することもできます。書庫車がコンテナ仕様であることから、別途中央図書館で蔵書内容をコンテナごとに変更することもできます。

列車編成
・まきむく1号(黄色):書庫列車
 会議室列車での研究会やグループのために、専門領域(邪馬台国関係資料等)の資料情報を豊富にそろえた書庫車です。コンテナ単位でテーマ内容を容易に変更できます。

・まきむく2号(薄緑):会議・研究図書館車
 会議室を2階にセットし、研究会を長時間行うための読書および宿泊のための専用車両です。1階には書架付個室が6室(ツイン)あり、2階の会議室両端にも2室あります。

利用形態
 例えば奈良県桜井市・JR巻向駅を起点にして周遊しながら、あるいは随時長時間停車し、研究テーマを論議出来ます。牽引車はバッテリータイプを動力とするので環境と静音に優れています。周遊速度は一般鉄道の直進では時速100km程度でも静粛を保てますが、このような特別周遊地では時速40km程度です。すなわち動く研究室、会議室、寝室を有効利用できるわけです。

今後の展開
 他に「埋蔵物博物館車」「地域ジオラマ車」などを増設し列車編成に組み込むことで、生涯学習の一環となる鉄道図書館構想が現実的になると考えます。また、自転車やバイク、軽自動車を積載できる車両の組み込みによって、フィールド調査の基地とし行動範囲を広げることができます。


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まきむく1号:書庫車

纒向号:まきむく1号
 書庫車として「まきむく1号」の詳細を説明します。1書庫車で1万冊の図書雑誌資料を収容し移動できますが、これはコンテナ単位なので、基地図書館でコンテナごとに蔵書を形成し、会議に応じて纒向号に組み込むことができます。レールがある限り全国津々浦々山間僻地にまで移動出来ることから、恒常的な移動図書館といえます。

 図書館列車ですから走行中の利用に重点をおきますが、引き込み線の利用や移動式仮設引き込み線(参照2)の応用まで考えるなら、書庫車の機能がより発揮されます。

蔵書冊数の根拠
 モデルでは1コンテナを6m級に設定しました。これは外寸で全長6m、高さが2m強、そして幅が2.4mです。
 仮に書架片面の高さを2mとすると1連あたり6段となります。幅90センチの書架なら6連設定できますから片側の壁だけで合計36段になります。これに平均的な1段あたり25冊を収納しますと車両の壁の1面で900~1000冊となります。中央の書架を両面としますと左右壁と合わせて4セットで4000~5000冊の収納が見込まれます。まきむく1号は書庫車として2コンテナありますから、約1万冊収蔵可能となります。この場合、中央の両面書架は、利用時に通路を広げるために移動できる書架がよいでしょう。

改造データ
 JRコンテナ車コキフ50000形(Nゲージ・TOMIX)を原型としました。ただし20mを越える車両なので、中央で切断し圧縮した上で接着し、18m級の車両に変えました。
 後尾車掌室を司書室とし、書庫コンテナは6m長のものを2台を接着しました。モデルの詳細化を計るには、司書室とコンテナ間とに貫通路を設ける必要があります。また今回の仕様は内部に人がいることの確認ですませていますので、固定書架や移動書架も必要になります。


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まきむく2号:会議研究図書館車

纒向号:まきむく2号
 会議・研究図書館車として「まきむく2号」の詳細を説明します。この車両の目的は、研究会やグループの集まりなどで、関係情報を一式搭載した書庫車とともに、長距離の目的地に行き、長期間周遊するための車両です。利用者は長時間にわたり、専門図書館列車の機能を利用しながら、研究会議に参加することができます。

 各地に、地域全体をまとめる図書館列車中央図書館があると想定しますので、各地独自の特別仕様車を増結したり、書庫車の内容をコンテナごとに途中で変更することも可能です。長期間とか長時間使えるという意味は、ホテル機能や会議室機能、書庫機能、その他必要なものを自由に編成し直すことで、大会議などではセッションごとに編成を用意し、移動専門図書館、移動ホテル、移動会議場を兼ねるだけの融通性があるという意味です。

改造データ
 JR東日本の(豪華)寝台特急カシオペアを参考にしました。改造基本車は「E26系カシオペア・スロネE27-201(Nゲージ・KATO)」です。この車両の2階個室の2室を会議室に変更し、大テーブルをそえました。会議の収容定員は10人ですが、これは個室を残すためで、2階だけで20人の会議ができるように変更することも可能です。会議室に転用した残りの個室は、1階4室と2階2室、両端2室、ツインで合計16名の宿泊可能です。車両両端のトイレは現状維持としました。

まとめ
 この構想は比較的長期間継続した研究会のメンバーだった経験から生まれました。一つはNDK(日本文学データベース研究会)と言って「源氏物語」を中心とした古典文学の電子化に関するもので、通算20年は続きました。もう一つは電子図書館研究会といって、これは名称通りのもので通算10年は続きました。あるいは現職司書を中心として「カナーン96」という図書館全般に関する研究会も10年間ありました。いずれも顔見知りの研究者や司書達と同じ目的にそってディスカッションすることの効果を十分に味わいました。また最近では、学生達と愛知県の犬山市・明治村や、奈良県の明日香村へ研修旅行に行きました。夏期休暇などに学生やグループで使う施設として最適なものを考えた結果です。

 特定専門家のためだけでなく、会議や宿泊や書庫機能を持った鉄道図書館列車が、長期間・長距離の旅程を安全に快適に過ごすために設けられるのは、今後の生涯学習時代に益するところ大きいと思います。

参照1:(MuBlog)桜井・茶臼山古墳と纒向遺跡紀行:初期・前方後円墳
参照2:(インターネット)「鉄道駅可動ホーム」 などをヒントとして、引き込み線ユニットを積載した車両を増設する。レール素材は強化プラスチックなどによって軽量化を計る。道路工事ではすでに高架式仮設道路が実用化されているので、既存レールを切断しポイントを組み込むのではなく、一時的に既存レールに高架線をまたがらせ、引き込み線に列車が入ることで仮設を外す方式が現実的であろう。仮設の急勾配対応としてジープで利用される自己巻き上げ型ウインチなども有用である。引き込み線のレール長から考えて、牽引車を込めて3両編成、引き込み線長60m程度が限界だが、停止車を選ぶ事で現実的な対応が可能となる。

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受信: 2009年4月21日 (火) 01時18分

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