二階建て図書館列車考(8)改造車篇:あたご号2号【HO-サロ124】
承前:二階建て図書館列車考(6)改造車篇:愛宕号(あたご)
承前:二階建て図書館列車考(7)改造車篇:纒向号(まきむく:Nゲージ・会議研究図書館列車)
目次::嵯峨野鉄道図書館ジオラマ
はじめて「二階建てトロッコ図書館列車」愛宕号をモデル化したのは昨年(2008)の5月でした。しかし1/150というNスケールは列車幅が指ほどの大きさで、ここが司書室、ここが書庫と指さすだけでそれ以上に意を尽くすことができませんでした。それからほぼ一年たった現在、1/80と大きめのモデルを入手しましたので、さっそく改造・図書館列車「あたご2号(HO)」を作ってみました。
実車はJR東海のサロ124と呼ばれたダブルデッカー車(二階建て)です。乗ったことが無いので詳細は分かりませんが、東京近辺を走る東海道本線のグリーン車らしいです。湘南電車という愛称があるとのことですが、本論ではその由来詳細が今のところ不要なので言及を避けます。ただし、参考記事(1)によると、実車は当初輸送量の増加を狙って60人→90人にするため、二階建てにしたようです。グリーン車であっても、快適さや遊覧のための設計ではなかったわけです。
↑愛宕号編成(上段HOタイプ、下段Nタイプ) 写真右上が二階建てトロッコ図書館列車:あたご2号(HOタイプ)
このサロ124の最初の模型を手にしたのは昨年のことでした。そこではじめて図書館列車として「二階建て」の有効性を実感したわけです。この間の事情は、二階建て図書館列車考(シリーズ)を参照してください。今回手にしたのはTOMIX社製で、鉄道模型世界では16番とかHOスケールと呼ばれている1/80縮尺で、線路幅は16.5mm(ゲージ)になります。嵯峨野鉄道図書館ジオラマは線路幅が9mmですので、そこで走らせることは出来ませんが、先回の愛宕号(N)と今回の詳細な愛宕号(HO)を比較することで、二階建てトロッコ図書館列車のコンセプトが、より明確になると思いました。
模型長は25センチありましたから80倍すると丁度実車が20mだと分かります。高さはレール上から約54mmありましたから、4m30センチ前後になりますが、どこから計るのかあるいは模型のセッティングなどから考えると確かではありません。
↑あたご2号(HO):実車はJR東海・サロ124
(左から、司書車掌室・レファレンスコーナー、二階・軽読書室、二階・オープンカフェ、一階・書庫、一階・重読書室、右端が調理室)
今回の記事目的は↑この写真を見せることでした。改造・造作の私の不手際には目をつぶってください。
TOMIX社の模型(HO)サロ124は参考(2)で詳細に説明してありますが、随分こった内容です。たとえば、外からは見えない螺旋階段の左右設置や、上下階でシートの色を変えたり、照明設備を三カ所にもうけて自然な雰囲気を出したりして、実車の状況を精密に縮小しています。
これにナイフ・ヤスリを入れるのは躊躇しましたが、もう1セット比較用に揃えましたので、思い切って屋根を切り取り、絨毯を敷き、パーティションやレファレンスカウンターなどを接着していきました。
台車の左右平屋部分をそれぞれ、司書車掌室(レファレンスコーナ)、調理室としました。
一階には書庫(1000冊程度)とオレンジコーナーと名付けたユーティリティーを設け、残りは重読書室としました。以前京阪特急ダブルデッカーの記事でも言及しましたが、地上に近い一階の密室感や静粛性、読書に心地好い軽い拘束感は、重い読書に向いています。
二階には片方(司書室寄り)は軽読書室とし4つの広いコーナーを設けパーティションで囲いました。調理室寄りの二階はオープンカフェとしました。人声や食事の匂いがうつるのを考慮し、二つの区域の中央には仕切を付けました。
詳細は以下の小写真(サムネイル)をクリックしてください。説明を添えてあります。
↑HOスケール(1/80)と、Nスケール(1/150)の比較
(ディーゼル機関車はDE10タイプ。客車はサロ124)
縮尺の違いを上記写真で確認してください。今回名古屋にお住まいの識者のアドバイスもあって1/80(日本のHO)スケールで図書館列車をモデル化しました。この車両を「嵯峨野鉄道図書館ジオラマ」のような60x90センチの小型レール・レイアウトで走らせることは出来ません。しかし以前の1/150(N)スケールの「あたご2号」に比べると、そのコンセプト表現の優位性ははっきりしました。
今後も「未来の図書館」:地域全体・全域的図書館モデルはNスケールで行い、特別な図書館列車はHO以上のスケールでモデル化するのが妥当と分かりました。
↑ダブルデッカー、二階部分の詳細
(軽読書コーナーと、オープンカフェ)
図書館には多種の図書や雑誌、新聞を手にとって見る自由さが必要です。そして利用者がわざわざそこにでかけてくるだけの快適さ、異空間、特別な仕組みが必要です。図書館とは古典的な紳士淑女がスーツカミシモを着けて訪れても、一方でカジュアルな、精神的な解放性がそこにあってもよいわけです。手軽なオープンカフェなどは必須の設備と思いました。図書を借りてすぐに帰る図書館よりも、そこに居座る図書館こそが、今後必要だと考えたわけです。
走りながら読書できる静粛性や安定性と、景色のよい渓谷の支線で停車して読書するだけの開放性を兼ね備えた図書館列車を想定したならば、以上のような愛宕号「二階建てトロッコ図書館列車」が一つのプロトタイプになると考えました。
追記:屋根
二階部分に覆いが無く雨天走行が可能かどうかの問題ですが、これは先回のNスケール愛宕号でも考え込みました。今回は別途透明なキャノピーのようなものも試作しましたが、使いませんでした。
この図書館列車が雨天実走するときは、両側の窓から巻き上げる方式の天井を付けるか、進行方向左右の天井にスライド式天井を架設するなど、いくつか方法があると考えます。
この課題は将来Gスケールというさらに大型の車両を自作する機会があれば、考えてみます。
追記:座席数
有効座席数は、二階の軽読書室が12席、オープンカフェが16席、合計28席。
一階の重読書室が16席、対面レファレンスコーナーが4席、合計20席。
以上から乗車定員は48席となります。
他には司書車掌個室が2席、調理関係座席が2席、合計4席です。
参考
1. (雑誌) ダブルデッカー(のりもの倶楽部、no12, pp4-11)2003年夏号
2. (インターネット)HO情報室(TOMIX社)113系横須賀色、vol4
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