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2009年3月 1日 (日)

NHK天地人(09)草食性・妻夫木聡→変身→肉食性・直江兼続

承前:NHK天地人(08)天下取りの系譜:上杉謙信

御館乱
 今夜は上杉家史上「御館の乱(おたてのらん)」と言われる、上杉謙信死後の家督相続にまつわる内乱の発端でした。景勝(北村さん)と景虎(玉山さん)のどちらが謙信の後を継ぐかで越後が戦争状態になりました。乱が起きてから収拾まで天正6年~8年まで(1578~1580)かかっていますから、足かけ三年もの長期戦でした。最初は実家の北条氏政や、そこと同盟を結んでいた武田勝頼の支援があって、景虎が優勢をしめました。しかし三年もかかったのは、これらの外部支援がうまく機能しなくなったからでしょう。結局、兼続の主君「景勝」が上杉家を実効継承するわけですが、それはそれは大変なことだったのでしょう。

 その経験の中で、、、兼続が今週あたりから、それまでの草食性から、いよいよ智将、謀略をあやつる(笑)、肉食性戦国武将になっていく始まりにあたります。愛と義を旨とした武将ですから、屍肉むさぼる他の戦国武将とは異なりますが、やはり黙っていては攻め滅ぼされる弱肉強食時代でしたから、泣き虫の癒し系だけではドラマが成立しません。今夜はこれまでの妻夫木さんから、別の妻夫木・兼続が誕生するわけです。

みどころ
 上杉謙信の姉で景勝の母・仙桃院(高島礼子)は、お船の母・妙椿尼(みょうちんに・萬田久子)の「嘘の遺言」を聞き、自らも「泥をかぶる」と決意し、兼続を呼び寄せました。「家督を景勝にゆずる」話が無かったと知り、兼続はたじろぎます。そこでの、仙桃院の言葉が印象的でした。

<嘘と本当の端境(はざかい)に、まことのまつりごとがある>という言葉でした。

 これまでいささか一本調子の役柄だった兼続が、こういう言葉をどのように消化して生きていくのか、そこが今年のドラマの見どころなのでしょう。愛と義を信条とした生き方の中で、戦国武将として兼続は「まこと」を貫けるのでしょうか。というよりも、まことを貫きながら、生き抜けるのでしょうか。その難しい問題が若い兼続に突然ふりかかります。その上ドラマでは謙信の最後の言葉が兼続にむけてのもので、「兼続の義」と聞こえたようです。

 そのころよりずっと離れた現代の視点からすると、ここには兼続を中心とした謀略説があるようです。もっと激しい内容としては、謙信謀殺説もありました。いろいろですね。

 そのあるなしを検証する力量は持ち合わせませんが、もっと単純に考えるならば、景虎は北条家出身の息子で、その妻は景勝の妹です。そして景勝は、謙信の甥で、その母は謙信の姉です。血族的には景勝が有利です。景虎を押す家臣達は、無口な景勝では家臣をまとめられない、景勝の出身母体上田衆が跋扈するといいますが、逆に景虎は北条家の跡継ぎになってもよいほどの立場ですから、越後の人にとっては異国の王を迎えるようなものです。それこそ北条衆が越後を跋扈する可能性もありました。

 現有勢力として上杉謙信に最も近い者は姉であり、その息子の景勝が後継者になるのは当然のように思われました。これが、景勝ががとんでもない愚鈍な者なら、景虎が引き継ぐ妥当性もありますが、これまでのところ景勝は無口なだけで、謙信の怒りや失望をかったエピソードはありませんでした。

それよりも予告編
 予告編を見る限り、そして今夜の最後を見る限り、すでに内乱は始まりました。その上来週は兼続の父親・惣右衛門が、まだ甘さの残った兼続を、政略・軍略の面で一気に一人前にするために画策するようです。上田衆は領主長尾政景が当時の謙信によって謀殺されたという恨みを持っています。その謀殺が事実かどうかは分かりませんが、政景の息子10歳の景勝が謙信を怨んでいたのは、ドラマで表現されていました。兼続の父親は長尾政景の家臣でしたから、その主人の遺児景勝が越後を継承するかどうかは、理非なく当然のことだったのでしょう。

 このあたりの複雑さは、一昨年の「風林火山」でも諏訪家と武田家の関係、および諏訪家の男子が出家し、後に今川の策略で武田への刺客となった場面、あるいは諏訪家の長女由布姫が武田に嫁いだ関係など錯綜していましたが、今回の上杉家内紛でも一瞬の相似を味わいました。

 なんというか。
 今夜あたりから、ようやくMu流の筆致が上手に流れ出す予感がしました。たしかに、45分間が短く感じられたのです。妻夫木・兼続さん、そろそろ肉食系男子になってください。まわりは草食系の人達男女が多いので(Muもそうです)、せめてドラマくらいは日常から離れて楽しみたいですなぁ。

近未来の参考
 御館乱跡の地図と解説:「上越を歩く

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コメント

Muせんせ~草食系でしたか

 謙信が亡くなる当たりでうたた寝してしまいました。
(ウソと現実の間にまことがある)当たりでしたか。
いつもながらMu大兄の解説でストーリを理解した次第です。

 そうですか、ポリティックスの世界は肉食系じゃないと勤まりませんか。
ならばやはり当方なども草食系なのでありましょう。

 しかしなんですなあ。
戦国時代というのはすさまじい時代だったのですねえ。
弱肉強食そのものですよね。
いつ隣の国から攻めてこられて殺されるか分からない。
国を守る武士、戦闘員たちは夜も刀を離せなかったのでしょうねえ。

 草食系のはずのMuせんせ~、何故か血が騒いできはったようで・・・。

投稿: ふうてん | 2009年3月 2日 (月) 00時24分

 草食性で、農耕定着形土着民タイプのMuがなぜ肉食系ポリティクス世界をドラマや小説で味わうかというと、自分に無い物を端から眺めたいという、単純な好奇心です。

 自分でできることは、他所にはあんまり求めません。

 日常はスタンプライフというか、定番が判子に掘られていて、それを毎朝押すかどうかですからね。押さない、押せないときは、自ら非日常に走っているか、あるいは「みまかった」証となりましょう。

 実際に戦国時代に投げ込まれたら、三日で病気になって、一週間で衰弱死することでしょう。あの時代、いやずっとの時代、タフでなくちゃ生きられない。Muみたいな草食系がぬくぬくと生きていられるのは、いくさのない戦後のこの60数年じゃないでしょうか。

 謙信は49歳、信長も49歳、芭蕉も49歳、漱石は? そのころでしょうね。みんな本当に「人生50年」世界に住んでいたわけです。今は年齢的に7ガケでしょうか。たとえば60歳なら昔の42歳程度かな。

 そういえば近頃の女性も若々しく見える人が多い。もう40代といっても、昔の28歳くらいだから、~。あはは。 

投稿: Mu→ふうてん | 2009年3月 2日 (月) 06時16分

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