小説木幡記:2009/02/01(日)Lost、Lost、Lost
シーズン3を見終わった
週末に米流ドラマ「Lost」のシーズン3、DVD第11巻を見た。すでにシーズン4もレンタル・ビデオ店頭に並んでおるが、余はここで一旦休憩に入ることとした。まず年末から年始にかけてLost三昧が続き、脳内が「島」のミステリに浸食されてまともじゃなくなった。授業や会議や採点中も、ジャック(外科医)やロック(啓示をうけた元・気弱な、現在・サバイバル指南者)やソーヤ(詐欺師、元・悪人)が島のそこここを走り回り「これは、まずいな。Lost世界に入り浸っておる」と、第二の余が黄色警告を発し出したからだ。それにシーズン4は新作DVDなので賃料が高い。よって、初夏までお預けにすることにした。年の功というか、ここ十年はやっと物事に「我慢」することが出来るようになったわい(笑)。
ネタバレ御法度
さてしばらく休憩にはいるので、このシーズン3までについてメモを残しておく。ネタバレは将来の自分自身にとっても不利なので(余は数年間の間隔をおいて再読再鑑賞をすることが多い。その時は記憶真っ白がGoodだ)避けておく。さらにあらすじはネット情報に任せておく。実は、思い出せないからでもあるが。あらすじはどうでもよい作品だとも言えるが。
参考にしたサイトはウィキペディアだが、ドラマ未読の人は読まぬ方がよい。全貌がわかってしまう。で、その記事にジャンルとして「スリラー、サイエンス・フィクション(SF)、アドベンチャー、ミステリー、ドラマ」とあった。本日木幡記はこれについて所信を表明しておく。
ジャンルを見る
このジャンル群のそれぞれを再定義して説明することはできぬ。余自身がジャンル境界の区別を出来ないからである。ただ、このジャンル要素に「宗教・オカルト」を追加してもよいだろう。雰囲気としてひっきりなしに旧約聖書やキリスト教神話が出てくるのと、それが幻視として表現される。となると、サイコミステリーの要素もある。何人かが心の病を持っていて、彼らの深層に入り込んでいき、それが神秘的でスリリングになっているからだ。オカルトとサイコミステリーとなると、Lostのシーズン6(2010年終了予定とのこと)の結末も、なんとなく見えてきた。「総ては、主人公の白昼夢でした」となったなら、怒りもせぬが拍子抜けするだろうな。そうならないことを祈る。
まずスリラー要素。最初は島の「他のもの(others)」や不思議な生命体の正体が不明で、これらに襲撃されてそこから逃げ出したり、危機一髪の場面が毎回あって、スリラーなのだろう。
SF要素。島のそこここに地下施設があって、古いApplePCが勝手に動いていて、また潜水艦が使われ、シリーズ3では海底基地もあるから、海底二万マイルを思わすSFと言って良いだろう。なによりも、島から発せられるオーラというのか電磁波というのか、背景に科学的知識がちりばめられている。
アドベンチャー要素。ゲームとしては常に10人前後の老若男女、それぞれが特技を持ったキャラが島を探検するのだから、RPG(ロールプレイングゲーム)アドベンチャーと言って良い。地下基地巡りをするたびに謎が解けていくところは、アドベンチャーゲームで対話したり発見することで、シーンやセッションが変化するのと同形である。ラストモンスターが出るのかどうかは不明だが、これは登場キャラの怪物的過去や未来が分かる点で、まだ予断を許さない。
ミステリー要素。全編総てが謎と伏線とに絡まれているからミステリーであると言い切れば上記要素は説明不要かも知れない。登場キャラの殆どが過去になんらかの繋がりがあり、それが未来にも影響していく点で、現代風の総合小説・ミステリー色が強い。ただし明示はせぬが、そこここでボロがあったり、開かぬままの伏線があったり、不意の死亡があったり(主にハワイでの長期撮影中の、俳優達の現実生活上でのトラブルによって、脚本が壊れた結果)で、ご愛敬とも言える。それを扮飾するためか、死んだと思わせて、生き返らせる方法もとりだした。これは狡いが、まあよかろう。
宗教・オカルト要素。最初に断っておくと余はヒューゴ君という壮絶な肥満キャラを目にしたとき、その形相が某サリン事件を起こした教団教祖そっくりに見えて、最初からのネタワレかと、がっくりした。しかし、彼は別の個性を付与されていて、シーズン3までくると、忘れられないというか無くてはならない家族の一員とまで思っておる。
宗教要素は徹底的に旧約聖書にしたがってモーゼや絶対神が見え隠れし、ときどき「愛」に関しては新約聖書が使われておる。ベンという「他の者達」の指導者は預言者風に色づけられていて、やることなすこと神話をなぞっておる。それに気がつくまではすべてオカルトに見えた。と、言ってみれば宗教の要素にはオカルトがあって当然なのだから、他教の余が神話のなぞりを知らない限り、すべて怪しいものに感じられる。
余にとっては新約・旧訳聖書の世界はオカルトであり啓示に満ちたSFなのだろう。ただし、ユダヤ教やキリスト教だけではなく、原始仏教系の考えもちりばめられている。たとえばダーマという不思議な団体はダルマ(法理、真理)からの借用で、ナマステという挨拶は当然現代でも使われている深淵な言葉である。
登場人物・キャラ
その他。登場人物が多いので好きな人物と好ましくない人物は、シリーズ3を完鑑賞したいまメモを残す程度に。
最も好きな男性はベン(ベンジャミン)という「他の者達」の指導者。ネズミの様な顔つきに圧倒されるが、徹底的に周りの敵味方総てを、そして自分自身をも偽っている。なにが本当か分からないところが、ロシア人形マトリョーシカのようで面白い。予見だが、総てが解き明かされたなら彼は空虚なのだろう。実体が消えるかも知れない(笑)。
他には、元は気弱は箱製造会社営業マンで、今は孤島サバイバル指南師のロックと、元・イラク拷問官のサイード。
最も好きな女性は変化した。その理由はドラマを観ればわかるだろう。
最初は、アナ・ルシアという元警察官。肌浅黒くやることなすこと激しい女性である。粗暴で凶悪な雰囲気が良く出ていたが、銃器依存症でもある。この系列は昔、エイリアン2に出ていたマッチョな宇宙海兵隊員バスケスを演じた女優と同根であろうか。好みは変わらぬものよ脳(笑)。
次に好ましく思えてきたのは島の不妊治療医師ジュリエットとなった。心変わりかな? 理由を今考えてみたが、これはベンを好きなのと同じ事情だと気付いた。要するに二重、三重スパイを演じ、徹底的な嘘つき女なのだ。それが「まさか」と思うほど迫真の嘘なので、思わずつり込まれてしまう。ただし、別途の主役級男性詐欺師ソーヤとは嘘の種類が異なる。
好ましくないキャラ
で、嫌いなキャラは、それを好むファンも多いだろうから簡単にメモしておく。実は主役級のジャックという外科医。なぜ嫌いかというと常に作戦を誤る正義感。リーダーとしては最悪だと思って見ている。次に主役級の美しいケイト(元・犯罪逃亡者)。美人だから△関係を招いてしまうのだが、やることなすこと鼻についてうざったい。特にジャックとケイトの関係は、好かぬ脳。大抵はケイトやジャックはお互いに助け救出するために、全体を危機に陥れる。こういうキャラを世間は好むようだが、現実にいたなら即絶交人種だな。勝手に滅びよ! と言いたくなる。
生活を破壊するLost
さて次にシーズン4を見るのは初夏になるだろう。出来れば再見を忘れたい。のめり込むと生活が壊れ、余の人生を狂わす。余も瀬戸内海にあるという△地点の孤島に墜落したくなるではないか。困ったことだ。
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