NHK天地人(03)直江兼続の青春編
今夜の見どころ
青年達のごく普通の甘酸っぱい青春を、ユーモラスに描いていて、いささかこそばゆい気分でした。
最初に、北条家から上杉謙信の養子になった上杉景虎が光をあびます。能を舞っている艶姿にうっとりしたお女中たちの雰囲気が笑えますね。面(おもて)をとった景虎に、お女中の一人が失神する様子なんか、私は現代のコンサートに熱狂する人にも、江戸時代の芝居狂いにも知り合いがいないので、実情はわからないわけですが、多分そうなんだろうなぁという雰囲気が良く出ていました。景虎の家柄(北条氏)、美男ぶり、優雅さに城中の女性達は魂を奪われていた今夜でした。
わが青春のころにも、そういう憎たらしい男子がおりました。名前まで「雅」のつく、たしか医師の息子でした。医師の息子が驚くほど多かった私の青年期ですが、その中でも極めつけの、女子にもてる男子がいましたよ。上杉景虎を、他の青年達は、こんちきしょうと、むしゃくしゃ思っていたことでしょう(笑)。そこが、後日に人間の怖さとして現れてくると、言えばせっかくのユーモラスな今夜がもったいないから、やめましょう。
次に、ピカイチだったのは、兼続の主・上杉景勝君の初恋でした。能を眺めているうちに、お女中に酌を受けていた景勝君、お女中の顔をみて、あわてて杯を取りこぼします。つまり、衝撃的な一目惚れが、これまたけらけらと笑えるようなシーンになっているわけです。そういうことが実際にあるのかどうか、~。多分あるのでしょう。こればっかりは理屈なんかまったく意味を成さない、相手がおもしろいとか優しいとか綺麗な女だとか、賢いとかなんとかとか、それら総ては後智慧、つまり後から付けた屁理屈に過ぎません。
まだ景勝君を演じる北村一輝さんを知らないので確定的には言えないのですが、この人の一目惚れ、恋患いの様子は良かったですね。ご本人の力か演出力なのか、なにも分からない状態ですが(まだ3回目!)、うなだれる様子やお船(常盤貴子)さんを観てうろたえる姿が、オーバーなくらいに恋患いをよくあらわしておりました。昨日読んだ小説には、友情も恋も一方的な片思いというセリフがあったのですが、それを思い出していました。片思い、一方的であればあるほど滑稽に見えますね。みんなそうやって、大きくなっていくのです。
家臣の兼続は、そんな主君・景勝のために恋文まで書いて従姉(いとこ)のお船さんに手渡します。お船さんは結構気丈で積極的だから、一人で居る景勝君のそばにきて、「この恋文を書いたのはあなたですか?」「話があるのですか?」と、どどどぉとたたみ込んで問いかけます。景勝君、そこで「はい、君のことを考えると眠れない」とでも言えばよいのに、うろたえきって、日頃の無口がさらに無口になって、「いや、ない」と言って背を向けます。みているMuには「あほかぁ!」と叫びそうになるシーンでしたが、いやはや、実にそういう雰囲気を景勝君、じわじわと出すものですから、感心しきり。
兼続の洞察
軍議の席で、上杉謙信に「武田の様子がおかしいです。いまこそ上京すべきです」と、景勝に代わって持論を献策した兼続がいました。謙信からは退けられたのですが、能の夕べ、裸踊りで座を保たせた兼続が、終わって一人ぼんやりしていると、謙信公がそっと訪ねてきます。「兼続、なぜ上京せよと言ったのだ?」と。
そこで兼続は言上します。
「私が川中島で見たのは武田信玄の懐刀(ふところがたな)、香坂弾正でした。いつも確実に信玄のそばにいる彼が、今頃は信玄と一緒に上京しているはずなのに、孤軍となって甲斐にもどるのは、信玄に異変があったのでしょう。」(相当な意訳です)
それを聞いて謙信は「信玄は死んだというか」と、ぼそりとつぶやきます。
青春真っ直中の兼続ですが、同時に智将の香りが漂ってきましたね。異変を何に読み取るのか。それは深読み杞憂の危険もあるわけですが、センサーは鋭敏でなければなりません。無口な主君・景勝青年と、はじけるように物を考え行動する兼続の取り合わせが、今後の楽しみです。
春日山城
新潟県上越市の春日山は今夜もいたく気に入りました。せめて地図なりと掲載しておきます。
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