小説木幡記:2009/01/30(金)久しぶりの雨
雨の卒業夕食会
夕食は、2008年助勤4名と伏見鳥せいに行った。宴は一時間で終わり、現地でサイナラした。余の鳥せいでの好物は、鳥刺身の梅肉添えである。ふむふむ。
行きも帰りも雨だった。久しぶりの雨、というかこれまでずっと雨がふっても雪が降っても、雑務をこなすのに気を取られて気がつかなかったわけだ。今日は、鳥せいを出てすぐに雨中を足早に歩きながら、頭のなかに「長い、長い雨だったんだ」と自分の声がこだましていた。
明日と言うより、来週からは二月。2003年の2月1(土)に名古屋の森博嗣先生を呼んで講演会を開き、盛況だった。その時一切合切を仕切ってくれたのが倶楽部初代と二代目達だった。あっという間に時が過ぎた。明日からは2009年次の倶楽部に生まれ変わって、また1年を豊かに過ごせる。なんとなく、毎回の卒業式を余が学生になって卒業し、新しい世界に毎年入学してきた気分だ。
江ノ島電鉄1000形の故障と修理
今この現在は、「二階建てトロッコ図書館列車」を深山幽谷あるいは絶海の孤島に走らせて、点としての移動図書館から、地域という面を覆った領域図書館にするコンセプトで気持が深まっている。
読書の快楽は深い。しかし一定の環境と訓練がないと読書は難しいスキルである。密室読書室が走る、開放軽読書室が走る、二階建て列車の一階部分には数万の蔵書があり、走りながら使える。
難しいスキルを習得するには、それなりの環境が必要なのだ。だからこそ図書館列車に乗って読書という異次元を味わう。
しかし。
重装備の(二階建てトロッコ・温泉付き)図書館列車だけでなく、近未来には町の中を走る本当に気楽な図書館電車も必要になる。問題は騒音と振動にある、……。と詰めるべき細部は山ほどあるが、一方で僻地に近い深山幽谷を走らせ、他方気軽に市内を走る図書館列車が求められる。
そこで。
余は昨年夏にモデルとして静粛きわまりないMODEMOの江ノ電を入手した。まだこの電車に似合ったジオラマを考えてはいない。いずれ、身近な図書館電車ジオラマにも手を染めることだろう。
さて、ここから小見出しの本論に入る(笑)。
MODEMOについては、以前に箱根登山鉄道電車の記事を記した。江ノ電1000形も同じ系列の電車である。ところがある日突然、モーターが動かなくなった。2008年の11月だった。それまでに、何台かの別系列の車両を修理改造してきたので、心配はしなかった。ところが数日間にわたって秘術をつくしたが、うんともすんとも言わなかった。モーターが焼き切れた可能性があった。
近所の模型店に持ち込み、「修理見積もり」を依頼した。11月11日だった。
経緯は抜きにして結果を言うと、先週やっと模型屋から電話があって「直りました」とのことだった。「えっ? 昨年11月は見積もりを頼んだだけですが」「ええ。鉄道模型の修理に良くあることですが、無料です」と。
鉄道模型の業界は全く知らない世界だ。2ヶ月かけて無料で直るという現実は、「難しさ」を感じた。つまり、余はまだ数台の動力車を走らせる程度の初心者だが、実に精密で同時に故障も多く、30センチ下への脱線転覆でも大抵パーツがトンでしまう、要するに、大変難しい世界だと理解してきた。直線や緩やかなカーブを短時間走らせているうちは問題に気がつかない。
二ヶ月かかるというのは、最初は怠けているのかと思った。しかし実情は、故障修理の依頼が多くて、仲介修理業者がパンクしかかっているのじゃないかと想像した。購入者の多くは青少年と高齢者だろう。あまり裕福ではない。お小遣いか年金の一部を使うことになる。走らなくなったからと修理に出すまでは普通の話だ。しかしもしそこで修理部品代1万円とかになると、だんだん客離れが起きると思った。それが分かっているから、模型屋のお兄さんがちょっと含みのあるトーンで「時間かかりますよ。でも、大抵は無料に近いですね」と言った意味が、あとで別の話に見えてきた。無料、とは言えない。しかし、1万円の江ノ電が3ヶ月後に修理したら5000円とか1万円なんて、業者も言えないだろう(笑)。ちなみに、模型屋のお兄さんは「一ヶ月以内なら、現物交換します、……」と、ぼそりとつぶやいた。
補注:自動車の修理、PCの修理。この二件はもう何十年も自分が技師になったつもりでこなしてきた。しかし、鉄道模型の修理(主に動力車)はその何十倍の難しさがあると思った。パーツの揃わない時計修理と考えれば想像がつくだろう。手技と入手しにくいパーツの二重苦がある。
鉄道模型で保証制度はまだ経験していない。
鉄道模型業界は濃い趣味から発生した世界だから、コンシューマ向けのサービスは遅れているのだろう。今のままでもユーザーが離れなければそれでもよいだろう。「オタク」の世界に保証もないよ! と余が店主ならずけずけ言うところだ。しかし、PCの世界は、パーツの一つ一つに店舗が保証する場合が多い。メモリやCPUも、もちろんメーカーとの相談はあるだろうが、メモリの相性なんかまで保証するのだから、これはまた別世界だな。他方、車両を連結するカプラーの相性までは保証なんか出来ない。ところが、余が今一番悩んでいるのは、このカプラー問題なのだ。今までの経験では、KATOのカシオペアを連結するパーツは最良だと思った(一般社会人には、意味不明の寝言です)。
追伸
帰ってきた江ノ電1000標準色は、生き返ったように木幡の深山幽谷じみてきた「島図書館」を周遊しておる。音が聞こえないのが魔法のようだ。超微速走行もやはりMODEMOの特徴なんだろう。素晴らしい。
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