小説木幡記:2009/01/27(火)カーブレールのつぎはぎ
煮込み鍋だった。鍋は寒い冬の夜長を冷えから遠ざけてくれる。白菜やトマトで山盛り一杯の中に他の野菜と、タラと豚を包み込むように入れて、煮詰める。ダシは野菜から自然ににじみ出てくる。トマトのちょっとサワーな味わいが喉越しをよくした。
芥子菜の漬け物はおいしい脳。
デザートは昨夜と同じだが、よくみるとむき身のグレープフルーツがタッパウェアにつまっていて、それを蜂蜜でつけ込み冷蔵庫で冷やしたものだった。あと、一両日はありつける。
カーブ・レール、レール、レール、レール
極早朝に葛野にでかけ9時過ぎまで「邪馬台国周遊図書館ジオラマ」を調整した。目的は山頂中央図書館へ、KATOの近鉄ビスタカーや、お召し列車機関車(予備、という名称)を無事横付けさせるためだ。もともとKATOにとっては不利な話で、レールはすべてTOMIXなのに、そこをKATOの列車が上手に走らないというのはハンディが強すぎる。これにはいろいろ事情があった。
余は、すでに昨年「嵯峨野鉄道図書館ジオラマ」を作り、中央図書館としてKATOの建物(ストラクチャ)警察署を置いた。警察マークさえ外せば古風な図書館として様になっており、実に気に入っている。しかしながら、この嵯峨野ジオラマは、徹底的にTOMIXのミニカーブレールを使っており、一番小さいのは半径14センチのものが主流になっておる。ここを全部走るのは、TOMIX動力車の特定機関車だけである。たとえばEH500金太郎とか、ED790タイプ、DE10(樽見鉄道)、中間代車を外したDFタイプとか、あるいはマイクロエース社の大歩危(おおぼけ)トロッコ号とか、自製の16m級電車とか。他はマイクロエース社の蒸気機関車やKATO製のものは、カシオペアも含めてすべて退屈な外周(半径28センチから35センチ程度)を延々と走るだけである。
そこで、「邪馬台国周遊図書館ジオラマ」は、畳2/3で緩やかなカーブを形成出来るのだが、もし特殊なレイアウト部分(山頂周遊)が必要になったとしても、半径14センチは絶対に使わないと心に誓ったわけだ。ちなみに、すでに公開し始めている「高台の図書館」は半径14センチだし、さらに未公開の「山裾の図書館」は半径10センチの二重ループを使っている。よって邪馬台国では一番小さな半径は18センチ弱のものとして、ほぼ一通り昨年初秋にテストは終わっていたはずだった。ただし、KATOのお召し列車予備は、車輪がムカデのように沢山あったので初めからあきらめていた。そして、KATOのビスタカーは「邪馬台国の頂上図書館付近を近鉄電車が走るわけがない」と無意識に思ったのか、テストしなかった。
ところが先週あたりから屯所が漸く静かになり、3月末までの限られた期間でもせめて石膏塗りまでは果たそうと、天井から作りかけのジオラマをおろしてきたわけだ。そしてなんの心変わりか、この邪馬台国ジオラマにこそ近鉄電車が走って当然であるといつのまにか宗旨替えしていて、走らせた。意識には半径18センチあれば、ムカデ機関車以外は走る! と思いこんでいたわけである。ちなみに3両編成のビスタカーは台車が四つで、車輪は8軸である。つまり車両間に台車が跨っている省力設計。→台車[車体]台車[車体]台車[車体]台車。普通は一両に台車は前後二つつくものだ。
しかし脱線につぐ脱線。漸く場所は山頂付近の急カーブ、半径18センチ・レールの部分と気がついた。そこで急遽今朝極早朝に木幡からレールセット(つまり余った半端なレール)を持ち込んで、暖房も効かない屯所で黙々と再編成をしだした。
カーブ・レールの結末
結論を記す。
半端レールは半端であって完全無欠のレールレイアウトは無理だった。半径25とか29センチ程度が各一本、あとは数本の半径35センチの物ばかりだった(要するに、島図書館も最低カーブが18センチだから、35センチもある半径は使わなかった証)。しかしこれを書いているのは成功の印。簡単過ぎる秘術を見付けた。互い違いに半径を変えるとうまく行った。
脱線の連続: 半径(18+18+18+18)センチ
正常な走行: 半径(18+25+18+28)センチ、……
もちろん、このことで少し輪が大きくなって、山頂をはみ出しかけたが、全体を前後左右に動かして、さらに言葉にならない秘術をつくしてようやく正常なレイアウトに変わった。成功の要因は、機関車一両につき前後二つの台車(動輪)が、片方は必ず緩やかなカーブに在るから、脱線しない。(使ったカーブレールはいずれも円弧の角度が15度程度で長さが短い)
そして。
ビスタカーも、ムカデのような長尺お召し列車も、さらに新幹線Max(TOMIX)も、頂上の邪馬台国中央図書館まで一息でたどり着いた。この間、修正に約1時間、午前九時に珈琲を飲んでほっとした。窓の下を見ると、遅刻しかけの学生達が小走りに、教室に向かっていた。
情報図書館学的メモ
夢は大切だ。近未来の、地域全体を図書館化した領域図書館を、今までにないスマートな図書館列車が走るのはよいことだ。しかし、二階建て図書館列車のコンセプトが明確になってくると、現実的な経済性を考えるようになった。まだ早いと思いながらも、近未来に予算や維持費で動かない図書館列車は悲しい。
以前にTVで眺めた東南アジアの鉄道状況を思い出した。
なにか凸凹していた。うすら覚えだが主に日本から安く払い下げられたありとあらゆる客車や機関車を、つなげるだけつなげて、運行しているようだ。極端に言うなら、ブルートレインの後ろにカシオペアが繋がり、それを引くのは蒸気機関車、あるいは新幹線が大歩危トロッコ号を引っ張っている(それはあり得ないが)。要するに、スマートにこなす前に、豊かな特徴のある古式列車がそれなりに走行すればよい。
スピードは問わない。
となると、わが「二階建てトロッコ図書館列車も」ビスタカーやEH500や、サロ124二階建てグリーン車が混在していても、払い下げならそれで経費が浮くと考えてみた。たとえば現実の嵯峨野トロッコ鉄道は、貨物の無蓋車に屋根と木の椅子を造り込んで人気を博している(笑)。機関車は小型のディーゼルDE10である。
ただ、いくらスロースピードと言っても騒音だけはなんとかしたい。だからこそ、ビスタカーや京阪特急ダブルデッカーが余の過去事例研究に頻出するわけだ。
とは言っても、山頂の中央図書館に、近鉄ビスタカーや京阪ダブルデッカーや、国鉄お召し列車が到着し、食堂車改良閲覧室列車とか、カシオペア号改良雑誌ブラウジング展望車と説明するのは、なにかしら面はゆい。温泉列車などは相当に根気強く説明しないと、冗談に取られてしまう脳。困ったことだ。頭が痛くなる。
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