高台の図書館:鉄道図書館(5)塗装と色粉(パウダー)
承前:高台の図書館:鉄道図書館(4)下塗り(アクリル・クリア)
↑ひとけのない葛野の屯所を借り切って、模型工作の舞台としました。2008年師走も押し迫ったある日の夕方。暖房機が故障していて、室温は13度Cでしたが、厚く着込んでいたので気にならなかったのです。今回は、アクリル塗料(つまり、水溶性樹脂塗料)だけで、高台の図書館を色っぽくする工作でした。
「高台の図書館」は先回記事のようにツヤ消しのクリア塗料で下地を作っています。私の工作体験で、下塗りという丁寧な作業はジオラマ製作が始めてでした。鉄道図書館列車ジオラマを作りだしてからは、主にウェザリング(古風、古色)のために透明塗料を後で上塗りし、ツヤ消しをした経験もつきました。
机上には、あり合わせのアクリル塗料や刷毛やパレット代わりの容器、大量の水が並んでいます。最初は、地色を作るために、ココアブラウン、ライトグリーン、焦げ茶色の三色を用意しました。後で、大階段を白くするジェッソも用意しました。ジエッソは下塗り塗料なのですが、白がなかったので使うことにしたのです。
ジェッソで大騒ぎしたのは、2008年の3月頃だったので、それからさわりもしなかった容器の蓋が絶望的に引っ付いてなかなか開きませんでした。どうしたかというと、丸い容器を横にして、蓋の周りを金槌で何度もたたき、隙間にラジオペンチをねじ込んで、こじり開けました。工作って、時々こういう無理難題を解決するノウハウが必要になるものです。
なおこの写真にある殆どのものは100円ショップと、近所のホームセンターで入手したものです。ただし、ジェッソとチューブ入りのアクリル塗料は、工作不慣れなおりに画材屋(京都河原町と新京極の間のビル)で買いました。一般に塗料はホームセンターの方が安価に思えましたが、家屋用なので繊細さでは落ちるかもしれません。しかし、コンセプト重視の手早い「叩きモデラー」としては、色は、付けばよろしいわけです(笑)。
↑一年前には、ジオラマに色つけするのが億劫でした。小学校以来美術とかデザインというアート関係のセンスに全く自信がなかったし、誉められたこともなかったです。つまり、突然国体とかオリンピックに出場を強いられたようなプレッシャーがありました。生きてきて、理屈っぽいところは多少ありますが、感覚的な面では、センス無しで生きてきた男にとって、ジオラマの色塗りは逃げ出したくなるような難関門だったわけです。
しかし、実際にやってみて、「おもしろい」という感想が残りました。わが「二階建て鉄道図書館列車」は売り物でもないし、美を競うジオラマでもないのです。理屈なのです。理屈を具現化するためにモデルを作っているのです。だから色を塗るとは地面を抽象的に表現するだけだと、自分に思いこませました。すると塗装している途中の感想は、まるで身体中に絵の具を塗りたくって、キャンバスの上を転げ回るような気分でした。我ながら、とてもシュールなジオラマができたと、喜びました。
となると、今回の「高台の図書館」も同じ気分でやればよいという、気楽さがあったのです。
今回はNHKの趣味悠々(Nゲージ模型)などを見ていて、アクリル塗料はべた塗りよりも、水で薄々にして、流すように塗れば良いと思いました。そして地面の色は明るいという言葉が耳朶に残っていて、ライトグリーン色も使いました。モデルの上部からチョコレート色や、ライトグリーン色を、刷毛で無造作に交互に塗っていきました。薄く流せと思いながらも、最初に塗った上部はなんとなくべた塗りになりました。しかし気にしないで進めました。
最後に薄暗い部屋では黒にしか見えない焦げ茶色を、本当に水で薄めて、点描する気分でそこここに流しぬりをしたわけです。
↑地面色の次には、白い大階段と、古墳の周りにある池の水を塗ることにしました。
この「高台の図書館」は、意図もしないのにシルクロードの廃墟のイメージがわいてきたので、そこから突然奈良県明日香の酒船石遺跡に飛び、石の階段を造り込んだわけです。その石材の色は、こり出せばきりがないわけですが、一応白にしました。てごろな白がなかったので、ジエッソ(洋画の下塗り剤)を使いました。
次に水の色ですが、これは本当は実に難しいことのようです。池の色などを見ていても太陽光で変化しますし、子どもの頃の「水は水色」とはまったく異なる色調です。ですから、いろいろな模型雑誌を眺めていて記憶に残った方法をとることにしました。まず、池の深い所は濃緑がよいと覚えていたので、チューブごと濃緑アクリルをたらたらと絞り出し、刷毛でごにょごにょと塗りました。次に、やはり水だから「水色というコード」の助けを得るために、色鮮やかな青色アクリル塗料を、濃緑との境をボカシながら流し込みました。最後に、ジエッソの白で全体の境界をボカシ塗りしたわけです。
と書くと高度なことをやっているように見えるかも知れませんが、実際は濃緑と青色はべた塗りで、水をたっぷり含んだ刷毛でジエッソを叩き塗りしただけです。そう、歯ブラシ刷毛を使いました。
↑普通のジオラマですと、塗装したあと樹木を植えたり、大量の色粉を地面にまいて自然感を出すわけです。それは以前に嵯峨野鉄道図書館ジオラマ(色粉編)で経験しました。しかし今回は、全体が白亜の大階段様式なので、色粉は前方後円墳公園部分だけに済ませました。
色粉(パウダー)と言えば定着させるためにボンド水溶液を常用します。これは白濁液体ですが、乾燥後は透明になる便利な工法です。小写真は半年か1年前の古いボンドを、長期間屯所で逆さ置きしていたものです。屯所にきた学生達に、この逆さボンドの意味がわかったでしょうか(笑)。
半年以上経過した残り少ないボンドでも、逆さ置きしていたことで、すぐに水霧吹き容器に流すことが出来ました。いやはや、半年1年先まで見通す、ものすごく気の長い遠謀深慮の結果です。
模型屋で入手したパウダーには茶色や緑や黄色のものがあって、半乾きの塗装面に指で振りまきながら、息で吹き飛ばしていきました。それらしくするだけなので、秘伝のノウハウは知りません。半乾きの状態で振りまいたのが妥当かどうかも分かりません。その後に霧吹きでボンド水溶液を振りまきました。
総じて「叩きモデラー」らしく、手荒です。繊細さに欠ける方法ですから、真似はなさらないように。要は「それらしくパウダーをまいておけば、それらしくなる」の心です。
部材箱に小石袋があったので、これも所々にまいておきました。こういうトッピングが後で効果をあらわすこともあり、楽しい工作のひとときです。
↑以上で塗装工事は終わりました。乾燥したものの、古墳があまりにハゲチョロケだったので、濃緑色と明緑色を適当に塗っておきました。
文章で読むと長いですが、乾燥は別にして、準備してから塗装完了、屯所をかたづけるまで約90分、映画一本の作業時間でした。模型自体の大きさが大体30センチX60センチと小規模ですし、楽しむつもりでぺたぺたと刷毛を動かしていたら、あっというまでした。
ただし、準備と片付けに合計40分ほどかけたのも事実です。塗料や刷毛を探したり、終わった後はすぐに刷毛を洗ったりと、こういうノウハウは小学校時代の少年化学者を気取っていたころの体験が役に立っていますね。ちなみに化学実験では、薬品を揃えたり、終わった後に試験管やビーカーを水洗いし、乾かす時間が必要だったのです。まるで、料理と一緒です。
さて、次回は周濠(前方後円墳まわりの池)に水を張る、つまり樹脂かセメダインかを流す作業が残っています。その後で、レールを貼り付けます。
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