小説:なびるた/浅茅原竹毘古
濃いめの珈琲を三口飲んで、手を止めた。そばの砂糖を0.5グラムいれて、カップをゆらした。もう一口飲んだ。
黒い小さなフライパンにオリーブ・オイルの封をきって、小指の先だけたらし、チーズナイフでボローニアソーセージをスライスしながら、数えた。薄いソーセージが六片落ちたとき、ガスを点火した。煙があがった。換気扇をいれて、しばらくゆらした。卵を割って水を3cc注いだら、蒸発したので蓋をした。火を消した。
椅子に座り直して、珈琲を飲んだ。
電話が鳴った。
ケータイのスイッチを切った。
蓋をあけると卵の黄身が流れた。塩を親指と人差し指で挟んではらりとかけて、皿に移した。
直通電話が鳴った。
受話器をはずして手を離した。しばらくゆれて止まった。
フォークと箸をだして、フォークで卵の白身をたべた。箸でソーセージの薄片を二切れだけまとめて食べた。黄身は舌で舐めた。
ぼくは不意に喉が渇いた。
ソーダーをマグカップに流し込んで、泡立てた。二口多めに喉に流し込んだ。喉が鳴った。聞こえないふりをした。
窓際によって、本を広げた。126ページだった。後ろの行から読み始め先頭にきたので、ページを三枚繰って、見開き真ん中から左右に交代で読み始めた。左のページの最後に来たとき、右のページには戻らなかった。
眠くなったので、もう一度、椅子に座り直した。
空腹も渇きもなくなったので、目を閉じた。ぼくはすぐに夢をみた。
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