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2008年11月 2日 (日)

NHK篤姫(44)大政奉還と小松帯刀

承前:NHK篤姫(43)女達の徳川・男達の薩摩

薩摩藩城代家老小松帯刀
 人間関係が複雑な一夜でした。{小松と坂本龍馬}、{岩倉と西郷、大久保}。前者が穏健派で大政奉還を画策し、土佐藩の後藤象二郎がその内容を徳川慶喜に公開します。小松帯刀は、二条城に集まった各藩代表40数名の中で、ひときわ明確に政権返上を言上します。つまり、返上することで徳川は生き延び、内乱が救えるという策でした。1867年慶応3年10月、いわゆる明治維新は翌年1868年で、その前年のことでした。
 かくして徳川幕府は名目上265年間の政権を朝廷に返したことになります。

 岩倉は、大政奉還の行われた1867年10月15日には、倒幕の詔勅を作っていたと、ドラマで描かれておりました。当時の明治天皇は、いわば岩倉具視の手の内にあったわけでした。
 西郷や、大久保がなんとしても徳川家を滅ぼそうとしたのは、小松帯刀ほどには失う物(伝統)がなかったからだと、私は思いました。上級武家へのルサンチマン(うっ積した復讐心)も濃厚でした。

龍馬の死
 坂本龍馬が暗殺された影には、真に開明的な龍馬の性格が危険視され始めたからとも思いました。龍馬には、下克上の心が少なく、世界を知り尽くすという知識欲の方が強かったのではないでしょうか。西郷や大久保の中には、まだ世界は無く、薩摩下級武士と、江戸中央徳川慶喜との対立、そして戦国時代以来の遺恨があったと思いました。

 それをたきつけたのが、ドラマでは下級公家の岩倉具視でした。
 革命には、常にこうしたルサンチマンがあって、それは下克上であると言えば、実に簡単に見えてきます。
 下克上に乗らなかった龍馬は、危険で邪魔な存在だったのだと思います。何故なら、龍馬の大政奉還案も、船中八策も、当時の西郷や大久保、あるいは多くの武士階級には想像もつかない真の革新だったからだと思うのです。

天璋院篤姫の覚悟
 勝海舟から、同じ年令の龍馬の死と、小松・龍馬の大政奉還の策の真実を聞いた篤姫は、覚悟を決めました。聡明な彼女の脳裏には、炎上する江戸城と、密かに大奥が閉じられていく、二つのイメージが錯綜したと思うのです。
 武家の出なら、政権返上ですべて一件落着とは思わないでしょう。井伊大老の事例を体験した篤姫には、新体制からの徳川家に対する復讐的咎めが想像出来たはずです。慶喜や老中の切腹、江戸城開城、場合によっては戦闘。どう考えても、大奥が生き残ることは出来ません。密かに閉じられていくとは、撤退作戦の意味で私は使いました。

 だから、篤姫が和宮や滝山、あるいは本寿院とスクラム組んで意気投合した今夜は、「大奥を守る」という一点において、存続よりも撤退の覚悟だと私は思ったのです。どのようにして、咎めをかわし、戦乱をかいくぐり、大奥千人の女達を落ちのびさせるのか、そのような覚悟だったと思いました。

 その方法は外交交渉だと思います。
 篤姫には今のところ勝海舟と小松帯刀がいます。和宮は先の天皇の妹であり、そして内親王という身分があります。朝廷の錦旗には和宮、薩摩に対しては篤姫、大奥制御には滝山や本寿院がいます。いずれも、身内となってしまった徳川宗家を守ると言う点で、一致団結したわけです。

 ええ、このドラマがどうなるのかは、実は知りません。原作とは、違いもあるので表現は変わっていくでしょう。

今夜の見どころ
 龍馬の死を聞いた小松の感情表現に感動しました。瑛太という役者さんなんですね、帯刀は。龍馬夫婦を歓待したほどの仲で、政治思想も近く、片方が突然暗殺されるという状況は、断腸の思いがしたことと想像します。

 そして。
 今夜、大奥の天璋院も和宮(静寛院宮)も本寿院も滝山も。
 勝海舟や小松帯刀も坂本龍馬も。
 意外にも、西郷さん、大久保さん、そして岩倉さん。さらに、徳川慶喜さん。
 幕末に智慧を振り絞って、右往左往しながら、駆け抜けた人達が、本当に愛おしく感じられました。こうして、近代日本が出来たわけですね。

 ドラマには最近出てきませんが、このころ欧米列強は、どの国が日本を植民地化するかで、相当に動きがはげしかったようです。内政が混乱すればするほど、外敵はつけいりやすくなるわけです。 
 各国外交官には、個人としてはそれぞれの日本贔屓はいたでしょうが、本国政府の訓令は命と引き替えにしなければ、従うしかなかったわけですから。後世の、アラビアのロレンスも、そうだったのでしょう(話が、すっ飛びましたね)。

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