小説木幡記:2008/10/22(水)秋夜雨と小林秀雄
今日は早朝に「生涯学習概論」、電気紙芝居を使っているが、比較的長く話して疲れがでた。生涯、自らの意志で学習するのは大切だが、難しいことでもあると、話ながら内奥の心が語りかけてきた。なにか指針を見せないと初心者はとりつくところがなくて、途方にくれてしまう、……。
そのあと、会議にでかけた。懸案のいくつかが、いろいろ機運もあったのか、うまく行きそうだ。
学生の中には、外からは見えにくいハンディを持っている人もいて、急な階段を登り降りするのに苦労している事例があって、それを改良するのにエレベータを有効利用する案がでていた。しかし、なにかをするには資金が必要で、個人宅じゃないから、余が叩き大工になって金槌やノコギリで解消するわけにもいかない。壁をこわしたり、事務机を動かしたり、塗装したり、カウンターを設置したりすれば、うん百万円かかってしまう。「無理かなぁ~」とベテラン達と話したのが先週だったが、とんとんと運びそうだった。
会議の値うちもあるもんだ(笑)。
屯所にもどると、倶楽部隊員が三名も加わっている「情報サービス」のある演習班が、明日の着手発表の話し合いや練習をしていた。なにかしら、胸がつまった。そこかしこで、いろいろな学生たちが、準備しているようだ。発表に投票制をとっていることもあって、多くの班が熱心にプレゼンテーションのリハーサルをしている。もちろん、各一票を持つ助勤たちも先々週にはまるまる一日かけて、発表全班の事前レジュメを精読し、助勤同士で相談しながら、質問を考えていた。これも、胸がキュンとなる風景だった。
部屋で昼食をとってその後すぐに午後会議1が始まった。
議題は難しい内容もあったので、途中でトップの部屋に行って現状や実情を相談した。また帰ってきて、残りの議題をかたづけていった。余はこのころからだるくなって、同僚や主任に「だるい」と言ったら、みなも「同じ」と頷いていた。気温や湿度の変化が激しいのと、同僚たちも余も、それなりに宿題や締切を抱え込んでいて、いわゆるプレッシャが強いので、外界の天候変化だけで、体調が低下するようだ。
その後、別の午後会議2に入った。珍しく1時間を切った。
しかし、またそのあと、同じ場で、多少メンバーが替わって、午後会議3に入った。
このころは、余も椅子からずりおちそうになるくらい、だるくなっていた。稀に発言している余の声が、内奥で、「なんか、ろれつの回らぬことを言うなよ! もう黙っておれ」と聞こえてきたので、マイクを切った(笑)。
ようやく研究室に戻り、屯所を見たら、まだ一人、しこしこと明日の発表の準備をしておった。頑張り屋が、まだまだ葛野にもおるんやなぁ。
余は自分の宿題を思い出して、部屋でかたづけだした。なんだか、意識朦朧としていたが、午後会議1で「今夜中」と言われたので、しかたない。
全部終わったあと、ソファに横臥した。
だるさが全身をのたうっていた。
手を書架にのばすと、何年来、そこにあるだけで再読することもなかった図書があった。
読み出した。
す~っと、頭に入ってきた。やはり、文学はすごいと思った。
小林秀雄の『本居宣長 補記』、だった。最初に読んだのはいつだったか。本編がでて数年後だったはずだ。本編は数十年前に買って読んだが、補記は借りて読んで返したまま、手元にはなかった。数年前に友人が補記を一冊送ってくれた。そのままにしていた。
今夕、補記の半分を読み切れた。大きな活字で、独特の小林秀雄の文章に、知らぬ間に脳だけが楽になっていた。
早めに木幡に帰ってきて、PCの前にすわったら、眼前に『本居宣長/小林秀雄』の本編があった。気付かなかった。またいつか読みだそう。小林にとって、本居宣長は古典化したと余は悟った。
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