On30レイアウト:庭園鉄道趣味/森博嗣
小さいレイアウト
森博嗣『庭園鉄道趣味』を眺めていたら、珍しく「小さいレイアウト」(Muはジオラマと呼んでいます)製作がありました。
庭園鉄道は一般的には大きい物で、機関車に人が乗って運転し、客も乗るのが多いです。そしてレールが普通の庭に敷かれるわけです。それに対して、「小さいレイアウト」というのは、人が乗れないちいこい列車が、それらしく造った箱庭のような中を走るのをさします。
私はおおざっぱな考えなので、庭園鉄道は現実の庭で走らせて、人を乗せるものが多い鉄道模型。
レイアウト(ジオラマ)は、手のひらに載るくらいの小さな列車が、箱庭を走る鉄道模型、と考えています。
私がいつも二階建てトロッコ図書館列車を走らせているのは、線路幅が9ミリしかなく、列車一両が1/150に縮尺された手のひらにおさまる世界です。Nゲージ(線路幅9ミリのこと)と呼んでいます。そこにある模型の山や森や鉄橋や風景は、まとめて「レイアウト(ジオラマ)」と呼びます。
森先生のblogやwebサイトを眺めていると時々室内用「レイアウト」の写真が見えます。昔から作られていたようですが、私はしりませんでした。少なくとも、日本で普及しているNゲージや、それ用のレイアウト記事は見あたりません。
だから、(小さな)レイアウト製作のことが比較的詳しく書いてあるこの図書は、珍しく思えたのです。もちろん、私がいつも触っている列車とは、親子ほどの大きさですが(笑)。
森流小レイアウト製作
1.レールとポイント
On30というと、Nゲージしか知らない私には不思議な規格(附録注)ですが、やや幅広(線路幅が16.5ミリ?)のレールとポイント(線路切り替え機)が部屋にあったようです(笑)。
エンドレス(周回)レールと、ポイント一つでレイアウトを作るというのは、これは初歩ではなくて老成したスタイルです。私のような素人ですと、複雑怪奇なレールを配置して、ポイントだけでも8機ほど用意して、引き込み線だらけ、周回の多重化など、実に煩い線路配置を考えるのですが、枯れてくると、「周回レールに引き込み線一本」という、単純極まる設計をなさるわけです。
2.基盤はベニヤ板と発泡スチロール
厚さ5センチで、45x90センチの発泡スチロールがこのレイアウトの基本です。机上に乗りますね。
この発泡スチロールを、同じ大きさのベニヤ板2枚で挟み込む手法をとられました。
上部が3ミリ、下部が9ミリの厚さ。
部材はホームセンターで簡単に入手できますが、こういう手法があるとは知りませんでした。
サンドイッチ状態に接着するのは、木工ボンドと推測します。
3.岸や窪地を作る
カッターナイフでベニヤ板や発泡スチロールを切って、段差を付けます。鉄橋や川を作るイメージですね。
大型カッターナイフで3ミリほどの板なら切れます。
4.山とトンネルは段ボール
これも私は知りませんでした。新聞紙を丸めたりして山の原型を作ることは知っていましたが、段ボールでちゃかちゃかとトンネルや山の稜線を作るのは、新手法(私にとって)ですねぇ。
5.レールを敷いて、もう試運転
レールを接着剤(多分、クリアボンドかな?)で貼り付けて、もう試運転です。
ここがおもしろいのですが、模型機関車は比較的大きな規格で、その車輪の幅はHOゲージと言われる16.5ミリのものです。でっかい車体に小さな車輪幅と想像してください。
ナローな雰囲気ですねぇ~。
そして、救われる記事内容がありました。
45x90センチですから、Oゲージ(線路幅32ミリ)やHOゲージ(線路幅16.5ミリ)にとっては、とても小さな空間ですから、カーブを機関車が曲がりきれないわけです。それを車両の下部を方々削って、台車や車輪が曲がるように調整するわけです。
私の「高台の図書館」ジオラマは、30X60センチですから、Nゲージ(線路幅9ミリ)でもカーブがギリギリなのです。だから、車輪の多い車両は真ん中の台車を外したり、下部にある飾りを方々取り去って削って、急カーブでも車輪が擦れないように調整しています。
それは外道と思っていたのですが、森先生もやっておられるので、あながち外道でもなく常道正道のようで、安心しました(笑)。
6.山と岩
山はわかりました。段ボールの枠組みに、発泡スチロールをちぎって貼り付けるようです。
しかし岩はよく知りませんでした。「コルクの木の皮」というのがあって、それを貼り付けると岩になるようです。
ところがコルクの木の皮は、東急ハンズあたりに行かないと売っていないようです。森先生は、やっとハンズで見付けたので、10年分くらいまとめ買いされたようです。
この気持よくわかりますね。無い物は徹底的になくて、もし見付けると買い占めたくなります。
実は、これまで岩がどうしても岩にならなかったのです。コンクリートにしか見えないのです。コルクの木の皮なんですねぇ~。
東急ハンズは京都にはないはず。
私は、森先生にファンレターをだして、このコルクの木の皮を安値で譲っていただこうと密かに思いました。
7.紙粘土と木造足組橋
山の仕上げは紙粘土のようです。
これも私は、昔想像したのは「紙粘土」で、実際にジオラマを作りだしたときは、プラスタークロスという石膏布を水につけて整形する方法でした。このプラスタークロスは一本が千円以上する高価なものです。便利ですが、高いですね。
森先生は、「紙粘土」です。私も宗旨替えして今後は紙粘土を多用しようと思いました。
やはり、最初のイメージは正しいようですね。
ただし、私が最初に想像したのは、新聞紙を切り刻んで鍋にいれて水と糊をいれて、ぐつぐつ煮るという、ものすごいレトロな手法で作る紙粘土でした。今時、そんなことをする人はいませんなぁ。
木造足組橋は、さっき鉄橋と言いましたが、木を組み合わせて作る山奥風の橋です。これは一度は作りたいですね。3ミリ角材で作られたようです。
8.色塗り
色は、多分アクリル絵具だと思います。
繪を書いたり色を塗ったりするのは、「作家森博嗣」のもう一つの得意技ですから、真似は出来ません。上記のような絵を描くのが関の山の私には遠い世界ですが、「1年くらい、ときどき色を足していく、という感じの作業になりそう。限りなく完成に近づくものの、けっして完成はしない、双曲線のグラフみたいなものですね」という文章に感動しました。
レイアウト(ジオラマ)は、一挙にできるものではないようです。「高台の図書館」ジオラマも、いまだに発泡スチロールを整形しています。毎日10分程度ですよ。
9.まとめ
先述のように、私は森先生のいわゆる「レイアウト」は、よく知らないのです。しかしこの記事を読む限り、相当な経験をお持ちのようです。あれだけの庭園鉄道を運用しているのですから、当然とはおもいますが(笑)。
ただし、この「小さいレイアウト」に限って言うならば、一流のシェフが精根こめて料理を作るという雰囲気ではないのです。そこが余計にこの図書に惹かれところです。
そうですね。
手慣れた人が(老若男女をとわず)、冷蔵庫に残ったあり合わせの肉や野菜や卵をつかって、さささっと、絶品の味の夕食を作る、そんな感じでしたね。
庭園鉄道趣味カバー写真
あるいは現実の庭を、映画セットのようにそれらしい山紫水明、あるいは西欧風庭園にすれば、庭園鉄道は「レイアウト(ジオラマ)」と呼んでもよいわけでしょうか?
よく分かりませんが、こういう設問は無意味なのでしょう。
「庭園鉄道」とは、この本を読めば、間違いなく、庭園鉄道だと分かります。
附録:On30という規格
On30という記号の特に「30」の意味を識者に伺ってみました。
その前に、私は「Oゲージの汽車が、HOゲージのレールを走る」と想像しました。つまり大きい汽車が小さい幅のレールを走るわけです。なんとなくアンバランスで、奇妙な可愛らしさがかもし出されます。森先生の著書の写真の列車は、大体そういうタイプのようです。
WikipediAでOn30 を見ると、まだ英語でした。
「On30 is the most common term used to describe the modelling of narrow gauge railways in O scale on HO (16.5mm) gauge track. 」
つまり、Oスケール(日本では1/45縮尺)列車をHOゲージの線路で走らせる、と。
さて、30という記号ですが、識者が教えてくださった内容は、「Oスケールは1/45で、30×25.4÷45=16.9で、ほぼHOゲージの16.5mmになります。」とのこと。翻訳すると、<Oスケールだが元々の線路はナロー(狭軌)30インチ>となるのでしょう。30インチx25.4ミリは、762ミリですから、もともとの実物レール幅が76センチほどの狭いナローな線路を走る列車を、Oスケールで縮尺(1/45)すると、線路幅が16.9ミリになり、これはHOゲージ模型の線路幅(16.5ミリ)なわけです。
それにしても。
私は未だに、スケール(現物をどこまで縮尺するのか)と、ゲージ(鉄道模型の線路幅)とを混同してかんがえるから、迷路に迷い込むようです。
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