NHK篤姫(38)嫁姑よりも勝海舟と坂本龍馬
嫁と姑は今でもよくある話ですが、舅と婿の話はそれほどないですね。現代は入り婿形式が少ないからかもしれません。ただ、どちらにしても、そういう細やかな人の心は難しく、私の判断ではなんともいたしかねます。というわけで、いつもの予習は、勝海舟と坂本龍馬のことを調べておきましょう。
~それから数時間後~
ドラマを見終えて30分近くもため息をついておりました。予習と絡めて言いますと、完全な見当違いとなったのです。たしかに、勝海舟と坂本龍馬の対面は興味深く見終えたのですが、このドラマはやはり女性が主人公だけあって、今夜も視点を篤姫と和宮からずらすことが出来ませんでした。小松帯刀さんが20代で薩摩藩国家老になったことも素晴らしい事だったのですが、岩倉具視や桂小五郎やが登場したのも、それなりに気持は湧くのですが、やはり篤姫と和宮の「女性」らしい対立の厳しさには、負けましたね。
篤姫にはこれまで心ひそかに、二心無く声援を送ってきたわけですが、それにしても和宮さんの今夜の表情は冴えていました。
嫉妬。
そう、はげしい嫉妬心を篤姫に、クールなままぶち当てます。こういう技を使うわけですね。虚ろなほど暗い顔で「一人で、お祈りいたします」と、篤姫の「一緒にご無事を祈りましょう」という誘いをにべもなく振り切った激しさには、心が凍えました。義母と妻とが、二人して家茂の武運、じゃなかった、無事の帰還を祈るのは当然なのですが、若い、まだ十代じゃないでしょうか、和宮にはその理屈が通りません。我が背を死地においやったのは、天璋院さん、あんたなんよ、責任とれますのか! その冷え切った目もと。
そりゃ無茶ですよ、和さん。
と、言っても聞く耳もたぬ幼い妻。こればっかりは、端でだれがどう言っても和さんは嫉妬と恐怖と悲しみから抜け出すことが出来ないでしょう。倒幕の嵐が吹き荒れる、長州藩が跋扈する都へ、愛しい上様をたきつけて行かせたのは誰じゃ。憎い!
その憎しみは、そばにいる篤姫へなだれ込みます。和さんは、天璋院篤姫さんしか、憎む相手がいないのです。愛憎表裏とは申しません、憎しみを露骨に出せる相手が、江戸には篤姫しかいないわけです。
こまりました、篤姫。
こういう幼き者の純な憎しみを総身にうけて立つ宮崎さんも、実際は20代初期、役としてはまだ20代半ば過ぎのことじゃないでしょうか。無理ですよ。無理を承知で、篤姫はおそらく悲哀感を持ちながら、大御台所としてけなげに立ち居振る舞うことでしょう。人間は、素晴らしいです。
あと一つ、挿入話。
篤姫と滝山の掛け合いがおもしろいですね。
滝「上様をたきつけたのは、天璋院さまでしょう、正直に言ってください」と、目を使ったセリフ。
篤「と~んでもない。わたしは何もしらない。なんのこと?」と、爆笑死そうな気持をぐっとおさえて真面目顔。
やはり、みなさん役者やなぁ~。
なお、二心無き私は近頃、滝山さんの臈長けた風情がいたく気に入っておりまする。
予習:勝海舟と坂本龍馬
まず勝海舟は御家人とは言っても、生家は貧乏だったようだし、この御家人衆というのも250年間も平和が続いた江戸時代末期・幕末では、相当に存在意義が薄れていたようです。もともとは、徳川軍団の忠誠心あふれる武士団だったわけです。
ちょっと豊かな旗本と同じく、一応徳川家の直臣ではありますが、御家人は将軍と顔を合わせられるわけでもなく、重要な仕事もない、それが御家人というわけです。今で言うと、年収数百万円以下の家臣達で、家督を継げたらましですが、次男坊三男坊になると、不良になるしか生きていけない世界のようです。勝さんの家は石高41石程度でしたから、年収で200万円前後でしょうか? (石高参考:武士は喰わねど)
他方、坂本龍馬の生家は、それなりに収入はあったのですが、土佐藩での身分としては、完全な武士扱いをされていない、原住民扱いだったようです。つまり、郷士(ごうし)と言って、山内家の家臣団(上士、城下士)とは別扱いだったわけです。簡単にいうと、山内家が入る前から土佐にいた人達で(長宗我部氏の遺臣)、ずっと下級武士だったのでしょう。
(坂本家は、その郷士という身分を何代か前に入手した商人らしいです。一説には、明智光秀の子孫とか、????話もありますが)
勝海舟も坂本龍馬も、幕末の動乱がなければ歴史には顔を出さない人達だったでしょう。特に、いまだに思うのは、もし現代に龍馬が生きていたら、学業も途中放棄、会社務めもまず落伍者になっていたと想像します。家が豊かだから若い頃に江戸で剣術修行(遊学)に励んでいたので、そういう根性はあったと思いますが、なんとなく奇想天外すぎて、世間には受け入れられない人だったと、思います。
その勝海舟を斬りにいったのが今夜の坂本龍馬でした。あっというまに弟子入りしました。ドラマでは、どんな風に描かれるのか楽しみですが、着目点は(笑)、
1.なぜ龍馬は勝を斬ろうとしたのか。
2.なぜ勝は見知らぬ龍馬と対面したのか。
3.勝は龍馬に何を話したのか、
4.龍馬はその、どの部分に感動したのか。
5.龍馬がさっそく弟子入りしたのは、彼がおっちょこちょいなのか、それとも考えあってのことなのか。
そういう着目点に、注目して私は今夜のドラマを楽しみます。もちろん、篤さんと和さんの、家茂さんを間においた心の戦いも、ちょっとだけ見てみましょう(笑)。
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コメント
こんばんは
嫁姑戦争勃発でした。生死を賭けてる訳だから、
嫁とすればかなり殺気だったことでしょう。
篤姫は、嫁の真意など考えてはいなかったのではないでしょうか。むしろ嫁に試練を与える機会にもなるとの思惑も心の隅にあったかも。
坂本龍馬、勝海舟 世に名を残された訳ですが、
恥かしながら勉強不足です。
先日は早速返事有難うございました。
生まれついてこのかた「学」と縁がない私ですが、時々お邪魔させて頂きます。
投稿: てるみ | 2008年9月22日 (月) 23時58分
てるみさん
坂本龍馬、勝海舟がこのドラマでどのくらい動くのかは、私も知りません。
檜舞台は大奥劇場ですから、そこに上れる人は限られてきますね。
龍馬も勝海舟も、挿話的に出演することでしょう。
このお二人は再来年のNHK「龍馬伝」
http://www3.nhk.or.jp/drama/html_news_ryouma.html
まで待つのが得策です。
そうそう、歴史は歴史・研究者でもないかぎり、体系的に学術的に勉強したり覚えたりする必要はないでしょう。
つまりは、イメージの世界、小説の世界、映画の世界ですよ。タイムマシンがあれば、もう少し変わった接触もあるでしょうが、現状では、過去歴史は絶対に再現できないし、事実もどれかひとつにはまとまらないです。
そして、問題はタイムマシンがあっても、わからないことは多いです。現代の素人が江戸城にふわっと舞い降りても、将軍と話しもできないし、まして男の私なら、大奥に入り込んで篤姫や和宮と親しく真意をうかがうなんて、これもまず無理です。
すると、すべて想像世界、ファンタジー。そんな気持で歴史にせっすると、これほどおもしろい物は、そうざらにはありませぬ。
投稿: Mu→てるみ | 2008年9月23日 (火) 12時51分